「給水及び排水の管理」は配管や水槽の専門用語が多く、現場経験がないと用語の段階でつまずきがちです。トラップ・通気・受水槽・残留塩素……どれも似て見えて、何を覚えれば点になるのか分かりにくい。けれどこの科目は35問と空気環境に次ぐ第2配点で、全体65%の合格ラインを支える要。しかも出題は「水質の数値」「給水方式の比較」「排水の構造」に偏っていて、数値暗記と構造理解を分けて攻めれば十分得点源になります。
試験の基本スペック
まず試験全体の概要を確認しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験時間 | 午前3時間+午後3時間の計6時間 |
| 受験料 | 17,900円(非課税・令和7年度に13,900円から改定) |
| 合格率 | 30.6%(令和7年度・第55回)。それ以前は17〜23%台で年度差が大きい |
| 全体合格基準 | 7科目合計で65%以上かつ各科目40%以上 |
| 給水排水の出題数 | 35問(7科目中第2配点) |
| 足切りライン | 14問以上(40%) |
| 目標ライン | 23問以上(65%水準) |
給水排水の35問は足切り回避だけでは全体合格に届かないため、23問以上を目標に設定するのが現実的です。
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この記事で分かること
- 35問が偏る各分野と、数値で取る・構造で取るの役割分担
- レジオネラ・残留塩素・水道水質基準など、暗記が直接点になる数値
- 簡易専用水道(10m³超)と定期検査義務の関係
- 給水方式の長所短所を比較で覚えるコツ
- 排水トラップの封水深・二重トラップ禁止・阻集器の頻出構造
水質管理は「数値暗記」で取りにいく
水道法・建築物衛生法にもとづく水質まわりの数値は、覚えればそのまま得点になります。理屈より暗記が優先される分野です。
| 論点 | 覚える数値 | 注意点 |
|---|---|---|
| 遊離残留塩素 | 給水栓で0.1mg/L以上を保持 | 結合残留塩素なら0.4mg/L以上 |
| レジオネラ対策(給湯) | 貯湯60℃以上・末端55℃以上 | 「給湯60・末端55」をセットで |
| pH値 | 5.8〜8.6 | 中性付近。上下限の取り違えに注意 |
| 一般細菌 | 1mLの検水で100集落以下 | 大腸菌は「検出されないこと」 |
| 受水槽の清掃 | 1年以内ごとに1回 | 水質検査の頻度と混同しない |
レジオネラ属菌は給湯温度が下がると繁殖しやすく、循環式浴槽でも問われる定番論点です。「給湯は60℃以上、配管末端でも55℃以上」をワンセットで暗記してください。残留塩素は「遊離0.1・結合0.4」、pHは「5.8〜8.6」と、数字と単位をそのまま頭に入れるのが得点への近道です。
簡易専用水道の扱いは頻出
貯水槽水道のうち有効容量が10m³超のものは「簡易専用水道」に該当し、水道法上の管理義務が課せられます。具体的には年1回以上の検査(地方公共団体の機関または指定検査機関による)が義務。この「10m³超」という基準値は選択肢でよく問われるので、確実に覚えてください。
残留塩素は「微生物の再増殖を抑えるために蛇口まで一定濃度を残す」という目的とセットで覚えると、数値だけの暗記より忘れにくくなります。
給水設備は「方式の比較」で覚える
給水設備は、水道本管から各蛇口へどう水を届けるかの方式が中心。それぞれの長所短所を比較表で押さえると、正誤判定が速くなります。
| 給水方式 | 受水槽 | 特徴 |
|---|---|---|
| 直結直圧方式 | なし | 水道本管の圧力で直接給水。小規模向きで衛生的 |
| 直結増圧方式 | なし | 増圧ポンプで中層建物まで。受水槽不要 |
| 高置水槽方式 | あり(+高置タンク) | 重力で安定供給。水質管理と更新が課題 |
| 圧力タンク方式 | あり | 圧力変動が出やすい |
| ポンプ直送(加圧給水)方式 | あり | ポンプで直送。停電時の対策が要る |
受水槽を持つ方式は断水時にも水を確保できる一方、槽内で水が滞留すると水質が悪化します。受水槽の清掃は1年以内ごとに1回、点検口・オーバーフロー管・防虫網の管理が問われます。「受水槽あり=安定供給だが衛生管理が課題」「受水槽なし=衛生的だが断水に弱い」という対比で整理すると、引っかけに強くなります。
クロスコネクション(飲料水と非飲料水の配管が誤接続されること)の禁止、給水管への逆流を防ぐ吐水口空間やバキュームブレーカも給水設備の定番論点です。「上水を汚染させない」という視点で、受水槽の清掃・防虫網・逆流防止をひとまとめに押さえると、給水分野は安定して取れます。
逆流防止は「なぜ逆流するか」で2つに割れる
逆流防止の装置が覚えられないのは、原因が2種類あることを分けていないからです。ここを割ると、どの装置がどこに付くかが自動的に決まります。
| 逆流の原因 | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 逆サイホン作用 | 配管内が負圧になり、水受け側の水が吸い上げられる | 吐水口空間(最も確実)・バキュームブレーカー |
| 逆圧 | 下流側の圧力が給水側を上回って押し戻される | 逆止弁・減圧式逆流防止器 |
吐水口空間は、給水栓の吐水口端と水受け容器のあふれ縁との垂直距離です。🔴 水平距離ではありません。配管が負圧になっても物理的に縁が切れているため、逆サイホン作用を防ぐ最も確実な方法とされます。なお「あふれ縁」とは、水受け容器から水があふれ出る縁の上端の高さを指します。
バキュームブレーカーは、配管内に生じた負圧を大気に開放して逆サイホン作用を防ぐ装置です。🔴 正圧のときに作動するのではありません。設置場所で2種類に分かれます。
| 種類 | 設置する場所 |
|---|---|
| 大気圧式 | 常時圧力がかからない箇所(給水栓の下流側など) |
| 圧力式 | 常時圧力がかかる配管 |
取付け高さも問われます。水受け容器のあふれ縁より150mm以上高い位置に設置します。同じ高さでは意味がありません。
減圧式逆流防止器は、2つの逆止弁と中間の逃し弁を組み合わせた構造で逆流防止性能が高く、逆流によって人の健康を著しく害するおそれが大きい高危険度の箇所に用います。
クロスコネクションは、飲料水配管と飲料水以外の系統(井戸水・工業用水・雑用水・消火用水・排水管など)を直接連結することで、水質汚染を招く重大な違反です。🔴 仕切弁や逆止弁を介して接続すれば認められる、ということはありません。弁の故障・閉め忘れ・操作ミスで非飲料水が流入しうるためです。中水と上水を併設する場合は、管の色分け・表示で誤接続を防ぎます。
弁類は「全開/全閉か、流量調整か」で分かれる
| 弁 | 構造 | 用途と特徴 |
|---|---|---|
| 仕切弁(ゲート弁) | 弁体を上下させる | 全開・全閉用。全開時は弁体が流路から退くので抵抗が小さい。中間開度での細かな流量調整には向かない |
| 玉形弁(グローブ弁) | S字状の流路 | 全開時の抵抗は大きいが、弁体の位置で流量調整に適する |
| 逆止弁(チェッキ弁) | — | 水を一方向にのみ通し逆流を防ぐ。両方向には通さない |
| バタフライ弁 | 円板を回転 | 小型・軽量で開閉が速い |
🔴 仕切弁と玉形弁は「抵抗が小さいほうが流量調整に向く」と思いたくなりますが逆です。抵抗が小さい仕切弁は全開・全閉向き、抵抗の大きい玉形弁が流量調整向きです。
給湯設備は「60℃以上」と膨張タンク
給湯でレジオネラ対策として問われるのが温度です。🔴 貯湯槽は60℃以上の維持が推奨され、45〜55℃はレジオネラが増殖しやすい温度域です。「45℃で十分」は誤りです。銅管の銅イオンには若干の抑制効果があるとされますが、温度管理の代替にはなりません。
開放型膨張タンクは、給湯配管内の湯が加熱されて膨張したときの体積増加分を吸収し、配管・設備への過圧を防ぐために設けます。循環ポンプや熱交換器の点検は、一般に年1回以上の定期点検が適切です。
排水設備は「構造の理解」で取る
排水・通気は、暗記より仕組みの理解が効きます。要は「臭気と害虫を室内に入れない」ための構造です。
- 排水トラップ:封水(水の溜まり)で下水からの臭気・害虫を遮断する。封水深は50〜100mmが標準。浅すぎると蒸発で切れ、深すぎると自浄作用が落ちる。
- 二重トラップの禁止:1つの排水経路に2つのトラップを設けると、間の空気が逃げ場を失い排水不良になるため禁止。
- 封水の破られ方:自己サイホン作用・誘導サイホン作用・毛管現象・蒸発などで封水が失われる。通気管はこれを防ぐ。
- 通気管:排水時の気圧変動を逃がして封水を保護する。各個通気・ループ通気・伸頂通気などの方式がある。
- 阻集器(グリストラップ等):油脂・砂・毛髪・プラスターなどを排水から分離して配管詰まりを防ぐ。グリストラップ(油脂)、サンドトラップ(砂)、ヘアキャッチャー(毛髪)と処理対象によって種類が異なる。
封水がなぜ・どう破られ、通気管がそれをどう防ぐか——この因果がつながると、排水分野の選択肢はほぼ消去法で解けるようになります。
グリーストラップは「沈殿」ではなく「浮上分離」
阻集器の中でも出題が多いのがグリーストラップ(油脂分離阻集器)です。厨房排水の油脂が下水道へ流出するのを防ぐ装置で、原理は比重差による浮上分離です。🔴 油は水より軽いので浮きます。「土砂として沈殿槽で取り除く」は誤りです(土砂などの固形物は別の仕組みで沈降分離されます)。
清掃を怠ると油脂が腐敗して悪臭が発生するため、臭気管理が重要な業務になります。清掃周期は下水道法で定められているわけではなく、事業者が適切な頻度(一般に週1回〜月1回程度)で実施します。分離した廃油・廃脂は産業廃棄物(廃油)として適正処理が必要で、一般廃棄物として捨てることはできません。
廃棄物は「産業廃棄物」と「特別管理産業廃棄物」の線引き
ビル管理業務で出る廃棄物の分類も、線の引き方が問われます。
| 分類 | 例 |
|---|---|
| 産業廃棄物 | 廃油・廃プラスチック類・建設廃材 など |
| 特別管理産業廃棄物 | 引火性廃油・廃石綿(飛散防止措置のうえ処分)・感染性廃棄物 など |
🔴 感染性廃棄物は「医療機関から排出されるものに限る」わけではありません。血液や病原微生物を含むことが要件なので、建物内に医務室・診療室がある場合の廃棄物や血液付着廃棄物も該当しうる、という形で問われます。
やりがちな失敗と回避策
- 35問を全分野まんべんなくやろうとする:まず数値(水質)と頻出構造(トラップ・通気)から固めるのが効率的。配管材料などの細部は後回しでも合格点は届きます。
- レジオネラの給湯温度をあいまいに覚える:「給湯60℃以上・末端55℃以上」を数字で正確に。曖昧だと頻出論点を1問落とします。
- 封水まわりを丸暗記で済ませる:封水深50〜100mm・二重トラップ禁止・通気管の役割を「なぜそうなのか」で理解すると、初見の出題にも対応できます。
- 簡易専用水道の基準(10m³超)を見落とす:この数値は選択肢で直接問われる頻出論点です。
まとめ:今日やる一手は「水質の数値カード化」
給水及び排水の管理35問は、水質(数値暗記)・給水(方式の比較)・排水(構造理解)に分ければ、第2配点を得点源にできます。専門用語の壁は、覚える順番を「点になる数値→比較→構造」と決めるだけで一気に低くなります。
今すぐ始めるなら、水質分野の数値(遊離残留塩素0.1・給湯60/末端55・pH5.8〜8.6・受水槽清掃1年以内・簡易専用水道10m³超)を暗記カードにすること。ここが固まったら給水方式の比較表、最後に排水の構造へ。関連科目は 行政概論対策 と 空気環境の調整対策 もあわせて確認してください。
ビル管理士 オリジナル予想問題で合格ラインとの距離を測る →
出典:
- 公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター — 建築物環境衛生管理技術者試験 受験案内(受験料・試験時間・合格基準)
- 建築物衛生法・水道法 — 給水・排水の管理基準、簡易専用水道の定義











