特定毒物は10品目しかない
毒物劇物取扱者試験で覚える物質の数は多いのですが、特定毒物だけは有限で、しかも10個です。毒物及び劇物指定令第3条が、その全部を挙げています。
- オクタメチルピロホスホルアミドを含有する製剤
- 四アルキル鉛を含有する製剤
- ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイトを含有する製剤
- ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイトを含有する製剤
- ジメチル―(ジエチルアミド―一―クロルクロトニル)―ホスフエイトを含有する製剤
- ジメチルパラニトロフエニルチオホスフエイトを含有する製剤
- テトラエチルピロホスフエイトを含有する製剤
- モノフルオール酢酸塩類及びこれを含有する製剤
- モノフルオール酢酸アミドを含有する製剤
- 燐化アルミニウムとその分解促進剤とを含有する製剤
名前が長いので絶望的に見えますが、化学の知識を一切使わず、名前の見た目だけで3つの塊に割れます。
名前に「ホスフエイト」か「ホスホルアミド」があるものが6つ
上の10個を、語尾だけで仕分けます。
| 塊 | 見分け方 | 該当 | 数 |
|---|---|---|---|
| リン系 | 名前に ホスフエイト か ホスホルアミド が入っている | 1・3・4・5・6・7 | 6 |
| フッ素系 | 名前が モノフルオール酢酸 で始まる | 8・9 | 2 |
| 残り | 上のどちらでもない | 2(四アルキル鉛)・10(燐化アルミニウム) | 2 |
6・2・2で10。これは化学的な分類というより、条文に書かれている文字列の形だけで決まるので、化学が苦手でも同じ結果になります。
そして残りの2つは「鉛」と「アルミニウム」で、どちらも金属の名前がそのまま入っています。リンでもフッ素でもなければ金属、という順に消していけば10個が埋まります。
6つのリン系は、さらに2つずつの組になる
リン系6つの中を見ると、同じ言葉が2回ずつ出てきます。
| 組 | 共通する言葉 | 品目 | 法令が書いている別名 |
|---|---|---|---|
| ピロの組 | ピロ | オクタメチルピロホスホルアミド | シユラーダン |
| テトラエチルピロホスフエイト | TEPP | ||
| パラニトロの組 | パラニトロフエニル | ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト | パラチオン |
| ジメチルパラニトロフエニルチオホスフエイト | メチルパラチオン | ||
| 残り | ― | ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイト | メチルジメトン |
| ジメチル―(ジエチルアミド―一―クロルクロトニル)―ホスフエイト | (別名の記載なし) |
ピロが2つ、パラニトロが2つ、残りが2つ。ここでも2つずつです。
別名は覚えやすくするために誰かが付けたものではなく、毒物及び劇物指定令の条文そのものに「(別名パラチオン)」の形で書かれています。6品目のうち5つに別名があり、無いのは第5号の1つだけです。正式名で出題されても別名で出題されても、同じものだと分かります。
ジエチルのほうがパラチオン、ジメチルのほうがメチルパラチオン。ここは逆に見えるので取り違えやすい場所です。正式名が「ジメチル」のほうに別名の「メチル」が付く、と向きで覚えます。
法別表第三と指定令第3条は、同じ順で並んでいる
特定毒物は2か所に書かれています。毒物及び劇物取締法第2条第3項が「毒物であつて、別表第三に掲げるもの」と定義し、その別表第三の第10号が政令に委任していて、受けているのが指定令第3条です。
この2つは第1号から第9号まで、同じ順・同じ物質で並んでいます。
| 号 | 法別表第三 | 指定令第3条 |
|---|---|---|
| 一〜七、九 | 物質名そのもの | 同じ物質の「を含有する製剤」 |
| 八 | モノフルオール酢酸 | モノフルオール酢酸塩類及びこれを含有する製剤 |
| 十 | 「政令で定めるもの」という委任の条文 | 燐化アルミニウムとその分解促進剤とを含有する製剤 |
つまり覚えるのは9つの物質名と、政令にしか出てこない燐化アルミニウムの1つです。順番まで一致しているので、片方を思い出せばもう片方が出ます。
差が出るのは第8号と第10号の2か所だけです。第8号は法が「モノフルオール酢酸」という酸そのものを挙げ、指定令が「モノフルオール酢酸塩類」を挙げているので、酸も塩類もどちらも特定毒物になります。第10号は、法の側が委任の文章、指定令の側が実際の品目です。
特定毒物には、濃度の但書きが1つも無い
毒物と劇物の指定は、「ただし、○○%以下を含有するものを除く」という形の但書きだらけです。実際に数えると、指定令第1条(毒物)に29か所、第2条(劇物)に189か所あります。劇物側は値の種類も60通りに散らばっていて、丸暗記の対象になりません。
対して指定令第3条(特定毒物)には、「ただし」も「%」も1つも出てきません。
ここから使える判定が1つできます。濃度で除外される話が出てきたら、その物質は特定毒物ではありません。特定毒物は含有量に関係なく特定毒物です。
劇物側で多い値は 10%(22品目)、5%(19品目)、2%(18品目)、1%(16品目)、3%(13品目)で、この5つで189か所のうち88か所を占めます。上位5つを押さえても半分弱なので、濃度は語呂で網羅しにいく場所ではありません。個別に出会ったものを積む場所です。
5つの行為を、1つの表にまとめる
特定毒物の扱いは、毒物及び劇物取締法第3条の2に集まっています。条文は11項ありますが、問われるのは「誰が何をできるか」だけです。
| 行為 | できる者 | 根拠 |
|---|---|---|
| 製造 | 毒物劇物の製造業者/特定毒物研究者 | 第1項 |
| 輸入 | 毒物劇物の輸入業者/特定毒物研究者 | 第2項 |
| 使用 | 特定毒物研究者/特定毒物使用者(製造業者が製造のために使う場合を除く) | 第3項 |
| 譲渡・譲受 | 毒物劇物営業者/特定毒物研究者/特定毒物使用者 | 第6項・第7項 |
| 所持 | 毒物劇物営業者/特定毒物研究者/特定毒物使用者 | 第10項 |
特定毒物研究者は5つの行にすべて出てきます。逆に言えば、研究者が出てくること自体は手がかりになりません。差が付くのは他の3者のほうです。
- 製造の行に出るのは製造業者、輸入の行に出るのは輸入業者。販売業者はどちらにも出てきません
- 譲渡・譲受と所持だけ「毒物劇物営業者」でまとめられている。毒物劇物営業者は製造業者・輸入業者・販売業者の3つを指す言葉なので(第3条第3項)、ここで初めて販売業者が入ってきます
- 使用の行だけ「特定毒物使用者」が出てくる
▶ 販売業者は、特定毒物を作れず輸入もできないが、持つことと渡すことはできる。この一文で3行ぶんが片づきます。
使用者だけが「品目ごと」に縛られる
研究者と使用者は名前が似ていますが、縛られ方が違います。
| 特定毒物研究者 | 特定毒物使用者 | |
|---|---|---|
| 資格の得かた | 都道府県知事(指定都市は市長)の許可 | 品目ごとに政令で指定される |
| 用途の制限 | 学術研究以外に使ってはならない(第4項) | 品目ごとに政令で定める用途以外に使ってはならない(第5項) |
| 扱える品目 | 制限の条文なし | 使用できる特定毒物以外は譲受も所持もできない(第11項) |
使用者側には、渡す相手の側にも制限がかかります。毒物劇物営業者と特定毒物研究者は、使用者が使えない特定毒物を使用者に譲り渡してはいけません(第8項)。
▶ 研究者は「用途」だけ縛られ、使用者は「用途」と「品目」の両方で縛られる。使用者のほうが二重に狭い、と覚えると第8項と第11項が同時に出ます。
語呂の出番はここだけ
上までで、10品目の分類も、法と政令の対応も、行為ごとの主体も、理屈と形で出ます。語呂を使う価値があるのは、順番そのものを問われたときだけです。
指定令第3条の並びは、リン系とフッ素系と金属が混ざっているので意味では追えません。頭文字を拾うと オ・四・ジエ・ジメエ・ジメジ・ジメパ・テ・モ塩・モア・燐 となり、ジで始まるものが4つ連続します(第3号から第6号)。
- ジは4つ続く(ジエチル → ジメチルエチル → ジメチルジエチルアミド → ジメチルパラニトロ)
- その前後を「オクタ・四アルキル鉛」と「テトラ」が挟む
- 最後がモノフルオール酢酸の2つと燐化アルミニウム
数詞が入っている名前も手がかりになります。オクタ(8)・四アルキル鉛(4)・テトラ(4)の3つで、うちオクタとテトラがそのまま「ピロの組」の2つです。ピロを思い出せないときは、数詞で始まる名前を探すと同じ2つに着きます。
ここまで細かい順番が問われることはあまりないので、まずは6・2・2の分類と別名5つを確実にして、順番は演習で出会ったときに足すので足ります。
覚えた分類は、演習でしか検算できない
分類は思い出す速度を上げますが、思い出した中身が正しいかどうかは分類では確かめられません。取り違えは問題を解いたときにしか表面化します。
毒物劇物取扱者試験(一般)の練習問題は全180問を無料で公開しています。ここで扱った条文は毒物及び劇物に関する法規の100問にまとまっていて、物質の性状や貯蔵方法は性質及び貯蔵その他取扱い方法、化学の基礎は基礎化学です。
責任者を置かなければならない場所と、試験を受けずに責任者になれるルートは毒物劇物取扱責任者が必要な場所で、県ごとに違う実地試験の形は実地試験の中身で扱っています。
出典
- 毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)第2条・第3条・第3条の2、別表第三
- 毒物及び劇物指定令(昭和40年政令第2号)第1条・第2条・第3条
いずれもe-Gov法令検索で全文を確認できます。数値と品目は改正で動くので、直前期には条文そのものに戻ってください。











