危険物乙種の法令は、類が変わっても中身が変わらない
危険物取扱者乙種の試験は 3 科目ですが、類によって変わるのは「性質・火災予防・消火の方法」だけです。法令と基礎的な物理学及び化学は全類共通です。
つまり乙4 を持っている人が乙1 や乙6 を受けるとき、法令はもう一度覚え直す必要がありません。逆に言えば、最初に固めておくと以降の類でずっと使える科目でもあります。
この記事では、類を問わず問われる法令の論点を、覚え方ごと 1 枚にまとめます。類別の性質や消火法は危険物乙種 全6類の性質・消火 早見表にあります。
まず「製造所等」の地図を持つ — ここから全部がぶら下がる
手続きも距離も基準も、主語はすべて「製造所等」です。先に施設の地図を持つと、後の論点が全部その上に乗るので、ここから始めます。
製造所等は 3 系統に分かれます。
| 系統 | 何をする場所か | 区分 |
|---|---|---|
| 製造所 | 危険物を製造する | 1 |
| 貯蔵所 | 危険物を貯蔵する(政令第2条) | 7 種類 |
| 取扱所 | 危険物を取り扱う(政令第3条) | 給油取扱所・販売取扱所・移送取扱所・一般取扱所 |
貯蔵所 7 種類は「どこに置くか」で名前が決まります。
| 貯蔵所 | 置き方 |
|---|---|
| 屋内貯蔵所 | 屋内 |
| 屋外貯蔵所 | 屋外(容器のまま) |
| 屋内タンク貯蔵所 | 屋内のタンク |
| 屋外タンク貯蔵所 | 屋外のタンク |
| 地下タンク貯蔵所 | 地盤面下に埋没したタンク |
| 簡易タンク貯蔵所 | 簡易タンク |
| 移動タンク貯蔵所 | 車両に固定したタンク=タンクローリー |
🔴 給油取扱所・販売取扱所・移送取扱所・一般取扱所は「取扱所」であって貯蔵所ではありません。 7 種類の中に混ぜた選択肢が定番です。「タンクローリーは動くけれど貯蔵所」「ガソリンスタンドは取扱所」と 2 つ覚えておけば線が引けます。
🔴 屋外貯蔵所に置けるものは限られます。 政令第2条第7号により、第2類のうち硫黄等の一部と、第4類のうち引火点が0℃以上のもの等に限られ、第1類(酸化性固体)は置けません。「屋外だから何でも置ける」と考えると外します。
設置と変更は「あらかじめ市町村長等の許可」(法第11条)
上の製造所等を作るとき・変えるときは、消防法第11条第1項によりあらかじめ市町村長等の許可が必要です。
🔴 許可権者は市町村長等。所轄消防署長にも都道府県公安委員会にも設置許可の権限はありません(総務大臣が許可権者になるのは移送取扱所の一部など限られた場合だけ)。 🔴 工事に着手した後の届出では足りません。 「あらかじめ」が条文の言葉です。
保安距離と保有空地は別物 — 「外向き」と「内向き」
名前が似ていて必ず混ぜられますが、測る向きが逆です。
| 何のための距離か | 向き | |
|---|---|---|
| 保安距離 | 周囲の保安対象物を守る | 施設から外の対象物まで |
| 保有空地 | 消火活動と延焼防止 | 施設の周囲に確保する空地 |
保安距離は保安対象物の種類ごとに変わります。
| 保安対象物 | 距離 |
|---|---|
| 一般住宅 | 10m 以上 |
| 高圧ガス施設等 | 20m 以上 |
| 学校・病院・劇場など多数の者が集合する施設 | 30m 以上 |
| 重要文化財・史跡等 | 50m 以上 |
10 → 20 → 30 → 50 と、守るべき人や価値が大きいほど遠ざける順です。「一律10m」とする選択肢は誤りです。
保有空地のほうは幅が施設の種類と指定数量の倍数で変わるので一律ではなく、確保した空地にはいかなる物品も置けません(消火活動に支障が無くても不可)。🔴 地下タンク貯蔵所には保有空地の義務がありません — 地面の下にあるので周囲に空地を取る意味がないからです。
貯蔵・取扱いの共通基準は「火気」と「整理清掃」(政令第24条)
施設の種類を問わずかかる基準です。出るのは 2 つに絞れます。
- みだりに火気を使用しない。 消火設備が整っていても、換気していても、有資格者が立ち会っても例外にはなりません
- 整理及び清掃を行う。 これは努力目標ではなく技術上の基準で、危険物のくずやかすを放置することも認められません
どちらも「設備でカバーできるから省略できる」という形の選択肢で外させにきます。共通基準に設備を理由とする例外は無いと覚えてください。
運搬と移送は別の規制 — 分かれ目は「移動タンク貯蔵所かどうか」
言葉が似ているうえ、両方とも「車で危険物を運ぶ」ので混同されます。容器で運ぶのが運搬、移動タンク貯蔵所で運ぶのが移送です。
| 運搬 | 移送 | |
|---|---|---|
| 何で運ぶか | 容器に収納して車両に積載 | 移動タンク貯蔵所(タンクローリー) |
| 危険物取扱者の乗車 | 不要 | 必要(法第16条の2) |
| 免状の携帯 | 不要 | 必要 |
| 混載の制限 | あり | 運搬の混載基準はそのままは適用されない |
🔴 免状の携帯義務がかかるのは移送だけです。 運搬は指定数量未満でも基準がかかりますが、危険物取扱者が同乗する必要はありません。「移送も運搬と同じで乗車不要」「運搬でも免状携帯が必要」はどちらも誤りです。
理由から引くと間違えません。移動タンク貯蔵所はそれ自体が製造所等(貯蔵所)で、動きながら危険物を保持しているので、扱える資格者が張り付く必要があります。容器に密封して積んだだけの運搬とは risk が違う、というのが条文の立て付けです。
手続きは「誰に」「いつ」で 3 つに分かれる
法令でいちばん問われるのが手続きです。許可・承認・届出のどれかを判別できれば、ほとんどの問題が切れます。
| 場面 | 手続き | 相手 | タイミング |
|---|---|---|---|
| 製造所等の設置 | 許可 | 市町村長等 | あらかじめ |
| 位置・構造・設備の変更 | 許可 | 市町村長等 | あらかじめ |
| 指定数量以上の仮貯蔵・仮取扱 | 承認 | 所轄消防長または消防署長 | 事前。10 日以内の期間に限る |
| 譲渡・引渡し | 届出 | 市町村長等 | 遅滞なく(事後) |
覚え方は 2 段です。
- 施設そのものを作る・変えるなら「許可」で、相手は市町村長等
- 一時的な扱い(仮貯蔵)だけが「承認」で、相手は消防長等
🔴 変更許可は規模の大小を問いません。「小さな変更なら不要」「工事完了後の届出でよい」という選択肢は誤りです。
譲渡・引渡しが届出で済むのは、施設の位置・構造・設備そのものが変わらないからです。理由から引けば、許可と届出を取り違えません。
指定数量の倍数は「品名ごとに出して足す」
指定数量の倍数 = 貯蔵し、又は取り扱う数量 ÷ 指定数量
たとえば指定数量 300kg の第二種酸化性固体を 1,500kg 貯蔵するなら、1,500 ÷ 300 = 5.0 倍です。
複数の品名を同じ場所で扱う場合が本番です。
塩素酸塩類(指定数量 50kg)を 100kg → 100 ÷ 50 = 2 硝酸塩類(指定数量 1,000kg)を 2,000kg → 2,000 ÷ 1,000 = 2 合計 4.0 倍
🔴 必ず品名ごとに倍数を出してから合計します。選択肢には決まって次の 2 つの誤答が混ざります。
- 貯蔵量の合計(2,100kg)を一方の指定数量だけで割る
- 品名ごとの倍数を掛け合わせる(2 × 2 = 4 と偶然一致することもあるので注意)
「倍数は足し算」と一言で覚えてください。
免状は「都道府県知事」と「10 日以内」
免状の再交付は都道府県知事に申請します。
- 亡失・滅失・汚損・破損を理由に申請できる
- 亡失して手元に無くても申請できる
- 汚損・破損が理由なら、その免状を添えて提出する
- 再交付後に亡失していた免状を発見したら、発見の日から 10 日以内に都道府県知事へ提出する
🔴 最後の期限を「30 日以内」に書き換えた選択肢が定番です。10 日以内です。
ここで 10 日以内が 2 か所出てくることに気づくと、記憶が固まります。仮貯蔵の期間と発見した免状の提出期限——どちらも「10 日」です。
運搬は「指定数量の 10 分の 1 超」が入口
運搬の混載制限は、指定数量の 10 分の 1 を超える数量を運搬する場合に適用されます。10 分の 1 以下なら混載制限そのものが適用されません。
🔴 この前提条件を読み飛ばすと、正しい選択肢が誤りに見えます。まず数量の条件を確認してください。
混載の組み合わせで頻出なのが第 6 類です。
第 6 類は第 1 類とのみ混載できる。第 2 類・第 3 類・第 4 類・第 5 類とは混載禁止。
運搬容器の表示は「性質から出る」
容器の外部に表示する注意事項は、収納する危険物の性質で決まります。第 2 類が分かりやすい例です。
| 対象 | 表示 |
|---|---|
| 鉄粉・金属粉・マグネシウム(およびこれらを含有するもの) | 「火気注意」+「禁水」 |
| 引火性固体 | 「火気厳禁」 |
| それ以外の第 2 類 | 「火気注意」 |
鉄粉等だけ「禁水」が付くのは、水と接触すると発熱または可燃性ガスを発生するおそれがあるからです。引火性固体が「火気厳禁」なのは、そもそも引火しやすいからです。性質から表示が出るので、丸暗記の必要はありません。
まとめ: 法令は一度固めれば全類で使える
- まず 製造所等の地図(製造所1/貯蔵所7/取扱所)を持つ。手続きも距離も基準もこの上に乗る
- 設置・変更は あらかじめ市町村長等の許可(法第11条)
- 保安距離は外向き(10/20/30/50m)、保有空地は内向き。地下タンク貯蔵所に保有空地は不要
- 共通基準は 火気と整理清掃(政令第24条)。設備を理由とする例外は無い
- 免状の携帯が要るのは移送だけ(移動タンク貯蔵所・法第16条の2)。容器で運ぶ運搬は不要
- 手続きは 設置・変更=許可(市町村長等・あらかじめ)/仮貯蔵=承認(消防長等・10 日以内)/譲渡=届出(市町村長等・遅滞なく)
- 指定数量の倍数は 品名ごとに出して足す
- 免状の再交付は都道府県知事。発見したら 10 日以内に提出
- 運搬の混載制限は 指定数量の 10 分の 1 超が入口。第 6 類は第 1 類とのみ
- 容器の表示は性質から出る
法令は全類共通なので、ここを固めると 2 類目以降の負担が一気に下がります。実際に切れるかどうかは、受験する類の演習ページで確認してください。
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