「計算問題は捨てる」と最初から決めている乙4受験者は多いです。でも乙4の計算で問われる形はほぼ決まっていて、数字が変わるだけ。だから一度「途中式ごと」覚えてしまえば、本番でも手が勝手に動きます。この記事は解き方の理屈をくどくど語るのではなく、実際の例題を数字を入れて1問ずつ解いていく「例題集」です。
乙4は法令15問・物理化学10問・性質消火10問の計35問で、各科目60%以上が合格ライン(合格率は近年30〜40%台)。物理化学は10問中6問取れば足切りを越えます。計算を全部捨てると残りの知識問題で1問も落とせなくなり、かえって苦しくなる。逆に、ここに並べた例題と同じ形を2〜3問拾えるだけで、6問のハードルはぐっと下がります。
なお「どんな手順で計算対策を進めるか」という勉強法そのものは 危険物乙4 計算問題対策 3ステップ でまとめています。この記事は、その先で「もっと問題数をこなしたい」人向けの問題バンクだと思ってください。
この記事で分かること
- 乙4で出る計算の4タイプ(倍数・比熱と熱量・濃度・燃焼)それぞれの解き方
- 各タイプを数字を入れて1問ずつ解いた途中式
- 「複数品目の倍数」「単位換算」など、ミスが集中する箇所の避け方
- 残り時間が少ないときに、どのタイプから手をつけるか
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出る計算は4タイプ・難易度に差がある
例題に入る前に、地図だけ示します。乙4の計算はこの4タイプに集約され、難易度と「捨てていいか」がはっきり分かれます。
| タイプ | 何を聞かれるか | 科目 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 指定数量の倍数 | 貯蔵量が指定数量の何倍か | 法令 | 最優先(確実に取る) |
| 比熱と熱量 | 物質を温める熱量 Q | 物化 | 余裕があれば |
| 質量パーセント濃度 | 溶液中の溶質の割合 | 物化 | 余裕があれば |
| 燃焼反応式 | 反応式の係数合わせ | 物化 | 最後に回す |
指定数量の倍数だけは別格です。法令で毎回のように問われ、覚える数字さえあれば四則演算で解ける。計算が苦手な人ほど、まずこの1タイプを完璧にしてください。
タイプ1: 指定数量の倍数(まずここを完璧に)
第4類の代表的な指定数量は、特殊引火物50L、ガソリン(第一石油類・非水溶性)200L、アルコール類400L、灯油・軽油(第二石油類・非水溶性)1,000L、重油(第三石油類・非水溶性)2,000L、動植物油類10,000Lです。倍数は「貯蔵量 ÷ 指定数量」を品目ごとに出して足すだけ。数値の覚え方は 指定数量の覚え方 でまとめています。
例題1-1: ガソリン600Lを貯蔵している。指定数量の倍数は?
- ガソリンの指定数量は200L
- 600 ÷ 200 = 3.0倍
例題1-2: ガソリン400L、灯油3,000L、重油2,000Lを同じ場所で貯蔵。倍数の合計は?
- ガソリン → 400 ÷ 200 = 2.0倍
- 灯油 → 3,000 ÷ 1,000 = 3.0倍
- 重油 → 2,000 ÷ 2,000 = 1.0倍
- 合計 → 2.0 + 3.0 + 1.0 = 6.0倍
ここが最大のひっかけどころ。品目ごとに倍数を出してから足すのが鉄則で、「貯蔵量を全部足して(400+3,000+2,000)から何かで割る」とやると必ず間違えます。指定数量は品目で違うので、合算するのは「量」ではなく「倍数」です。
例題1-3: アルコール類200Lと特殊引火物25Lを貯蔵。倍数の合計は?
- アルコール類 → 200 ÷ 400 = 0.5倍
- 特殊引火物 → 25 ÷ 50 = 0.5倍
- 合計 → 0.5 + 0.5 = 1.0倍
倍数が1.0倍ちょうど、つまり指定数量以上になるので、この施設は許可が必要な「製造所等」の扱いになります。倍数の計算結果が、規制の境目(1倍未満は市町村条例、1倍以上は消防法)に直結する点まで押さえると、法令の文章問題にも効いてきます。
タイプ2: 比熱と熱量
熱量の公式は Q = m × c × Δt。Qは熱量、mは質量、cは比熱、Δt(デルタt)は温度変化です。文字で覚えるより、単位ごと覚えると間違えません。
例題2-1: 質量2kgの水(比熱4.2kJ/(kg・K))を20℃から60℃まで温める熱量は?
- 温度変化 Δt = 60 − 20 = 40K
- 代入 → Q = 2 × 4.2 × 40
- 計算 → Q = 336kJ
例題2-2: 質量5kgのある液体を10℃から30℃に上げるのに、比熱が2.0kJ/(kg・K)だった。必要な熱量は?
- 温度変化 Δt = 30 − 10 = 20K
- 代入 → Q = 5 × 2.0 × 20 = 200kJ
ここで効くのが「単位を一緒に書く」習慣です。kg × kJ/(kg・K) × K と並べると、kgとKが約分されてkJだけが残る。答えの単位がkJになると確認できれば、式の組み立て自体が合っている証拠になります。温度の刻みは℃でもKでも幅は同じ(40℃の差=40Kの差)なので、Δtはどちらで計算してもかまいません。
タイプ3: 質量パーセント濃度
濃度は 溶質の質量 ÷ 溶液全体の質量 × 100。溶液全体は「溶質+溶媒」だという一点だけ外さなければ大丈夫です。
例題3-1: 水180gに溶質20gを溶かした水溶液の質量パーセント濃度は?
- 溶液全体 = 180 + 20 = 200g
- 濃度 = 20 ÷ 200 × 100 = 10%
例題3-2: 質量パーセント濃度20%の水溶液500gに含まれる溶質は何g?
- 溶質 = 500 × 0.20 = 100g(溶媒の水は400g)
よくある間違いは、分母を溶媒(水)の180gにしてしまうこと。分母は必ず「全体」です。例題3-2のように「濃度から溶質量を逆算する」形も出るので、×0.20で求められると気づけるようにしておきましょう。
タイプ4: 燃焼反応式(最後に回してよい)
完全燃焼の化学反応式は、両辺で原子の数をそろえる(係数を決める)問題です。配点は限られるので、上の3タイプを固めてから手をつければ十分です。
例題4-1: メタン CH₄ が完全燃焼するときの反応式を完成させよ。
- 骨組み: CH₄ + O₂ → CO₂ + H₂O
- Cを合わせる: 左1個 → 右はCO₂が1個でOK
- Hを合わせる: 左4個 → 右はH₂Oを2個にして4個
- Oを合わせる: 右はCO₂(2個)+H₂O×2(2個)=4個 → 左はO₂を2個
- 完成 → CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O
例題4-2: エタノール C₂H₅OH が完全燃焼するときの反応式を完成させよ。
- 骨組み: C₂H₅OH + O₂ → CO₂ + H₂O
- Cを合わせる: 左2個 → 右はCO₂を2個
- Hを合わせる: 左6個(H₅ + OH) → 右はH₂Oを3個にして6個
- Oを合わせる: 右はCO₂×2(4個)+H₂O×3(3個)=7個 → 左はO₂を3個 + C₂H₅OH内の1個 = 左O₂が3個
- 完成 → C₂H₅OH + 3O₂ → 2CO₂ + 3H₂O
順番は「C → H → 最後にO」が鉄則。酸素は両辺の他の原子が決まってから最後に数えると、一発でそろいます。乙4ではガソリン(オクタン C₈H₁₈)もたまに出ますが、まずメタンとエタノールで係数合わせの手順を習得してください。
残り時間が少ないときの優先順位
全部に手を広げる必要はありません。時間がないなら、配点と得点しやすさで割り切ります。
| 状況 | やること |
|---|---|
| 残り2週間以上 | 倍数を完璧にし、比熱・濃度も例題を反復 |
| 残り1週間 | 倍数の合算(例題1-2型)を集中反復、比熱は公式だけ確認 |
| 前日 | 倍数の計算手順だけ最終確認、燃焼反応式は深追いしない |
迷ったら 指定数量の倍数だけでも完璧に。法令で確実に出て、最も取りやすい1問です。比熱・濃度・燃焼は余力で上積みする位置づけで構いません。
まとめ: 倍数の合算1問を「手が動く」まで
乙4の計算は、倍数・比熱と熱量・濃度・燃焼反応式の4タイプ。途中式ごと覚えれば、数字が変わっても同じ手順で解けます。とくに指定数量の倍数は、品目ごとに倍数を出して足すという1ルールさえ守れば確実に取れる得点源です。
次の一手は、この記事の 例題1-2(複数品目の合算)と同じ形を、数字を変えて3問 解くこと。手が勝手に動くまで反復すれば本番でも迷いません。危険物乙4のオリジナル予想問題160問には物化の計算も含まれているので、まず倍数の問題だけ抜き出して練習してみてください。対策の進め方は 計算問題対策 3ステップ、時短の解き方は 解き方テクニック もあわせてどうぞ。
出典:
- 一般財団法人 消防試験研究センター 危険物取扱者試験 — 試験概要・出題範囲
- 消防法 (昭和 23 年法律第 186 号)

























































































































