語呂を作る前に、覚えなくていい数値を捨てる
5類の数値は、覚える量そのものは多くありません。それでも落とすのは、関係で導ける数値まで語呂にしてしまい、語呂どうしが混ざるからです。
先に手を付けるべきなのは条文の中にある数値どうしの関係です。実際に並べてみると、避難はしごの強度試験に出てくる4つの荷重は全部が500Nの倍数で、腐食試験の1サイクルはちょうど24時間、縦棒1本のはしごの寸法は2本式のちょうど半分になっています。関係で導ける数値は覚える必要がありません。残った本当にバラバラな数値だけを語呂で固定する、という順番にすると暗記量が半分以下になります。
以下の数値は消防法施行令第25条・第37条、消防法施行規則第26条・第27条、金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令、緩降機の技術上の規格を定める省令の条文から取っています。語呂は入口であって根拠ではないので、必ず条文に戻って確認してください。
5類の数値は3か所に分かれて住んでいる
最初に、探す範囲を絞ります。避難器具のうち検定対象になっているのは金属製避難はしごと緩降機の2つだけです。消防法施行令第37条は検定対象機械器具等を第1号から第12号まで挙げていて、第11号が金属製避難はしご、第12号が緩降機。救助袋はこの12号のどこにも入っていません。
同じ2つが、もう1か所でまったく同じように除かれます。消防法施行規則第27条第1項第11号は「避難器具(金属製避難はしご及び緩降機を除く。)は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること」と書いています。
甲種5類が扱う3つの設備は、数値の住所がここで2種類に分かれます。
| 設備 | 検定対象(令第37条) | 数値が書いてある文書 |
|---|---|---|
| 金属製避難はしご | ○(第11号) | 金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令 |
| 緩降機 | ○(第12号) | 緩降機の技術上の規格を定める省令 |
| 救助袋 | ×(挙がっていない) | 消防庁長官が定める基準(告示) |
除かれている2つと、検定対象の2つが完全に一致します。片方を覚えればもう片方が出るので、ここは1つのこととして扱って構いません。
そしてこの2本の規格省令は、合わせて29条しかありません(避難はしごが12条、緩降機が17条)。数値の量に圧倒される前に、探す範囲がこれだけだと知っておくと手が動きます。
縦棒1本のはしごの寸法は、2本式のちょうど半分
金属製避難はしごの規格省令第3条は、縦棒の本数で場合分けをしています。
- 縦棒が1本(第3項第2号)… 横桟の長さは、縦棒から横桟の先端までの内法寸法で 15cm以上25cm以下
- 縦棒が2本以上(第4項)… 縦棒の間隔は、内法寸法で 30cm以上50cm以下
15×2 = 30、25×2 = 50。上限も下限もきれいに2倍です。
これは偶然ではありません。縦棒1本のものは「縦棒が当該はしごの中心軸となるように横桟を取り付け」る構造(第3項第1号)なので、片側の長さが2本式の間隔の半分になるのは構造上の必然です。理屈で出るので忘れても復元できます。
覚えるのは 30〜50 の1組だけ。1本式は半分、で足ります。
縦棒1本のものには、あと2つ数値が付きます。横滑りを防止する突子を5cm以上、縦棒の軸と平行に横桟の先端に設けること(第3項第1号)。縦棒の幅は横桟の軸方向について10cm以下(同項第2号)。
「10」は4か所に出るが、3つは「以上」で1つだけ「以下」
10という数字は5類でいちばん多く出ます。ここは向きを取り違えると全部落とすので、意味で覚えます。
| どこの10か | 向き | 根拠 |
|---|---|---|
| 縦棒の幅(縦棒1本のもの) | 10cm以下 | 規格省令第3条第3項第2号 |
| つり下げはしごの突子が確保する距離 | 10cm以上 | 規格省令第6条第1号 |
| 固定はしごの横さんと防火対象物の距離 | 10cm以上 | 規則第27条第1項第4号ハ |
| つり下げはしごの横さんと防火対象物の距離 | 10cm以上 | 規則第27条第1項第5号ハ |
防火対象物との距離は10cm以上、部材そのものの幅は10cm以下。壁との隙間は足が入る必要があるので「以上」、握ってまたぐ部材は太すぎると使えないので「以下」。向きに理由があるので、語呂よりこちらのほうが速いです。
強度試験の荷重は、全部が500Nの倍数
避難はしごの強度試験(規格省令第8条第1項)は、表の形で出ていて覚えにくく見えますが、数値は1つしかありません。
| 部品 | 静荷重 | 500Nとの関係 |
|---|---|---|
| 縦棒(ふつうのもの) | 500N | 1倍 |
| 縦棒(ワイヤロープ・チェーンを用いるもの) | 750N | 1.5倍 |
| 縦棒(3本以上のものの内側の1本/1本のもの) | 1,000N | 2倍 |
| 横桟(1本につき中央7cmの部分に等分布) | 1,000N | 2倍 |
| つり下げ金具(第9条第2項) | 1,500N | 3倍 |
縦棒の荷重は「2メートル又はその端数ごとに縦棒1本につき」という単位で加わります。この「2メートルごと」はつり下げ金具(第9条第2項)でも、立てかけはしごの試験(第8条第4項)でも共通です。
判定の基準も2段階になっています。
- 1倍の静荷重 … 永久歪みを生じないこと(第8条第1項)
- 2倍の静荷重 … 亀裂・破損等を生じないこと(同条第2項)
ここまでで500・750・1,000・1,500と「2メートル」が1つの数字に畳めます。残る単発の値は次の4つだけです。
- 立てかけはしごの試験 … 中央部と左右2mごとに 650N(第8条第4項)
- 収納式の固定はしご … 横桟を水平に取り出した状態で 220N(同条第3項)
- つり下げはしごの突子 … 150N の圧縮荷重(第9条第3項)
- 横桟のトルク試験 … 23N・m(同条第4項)
- 展開・収納の繰り返し … 100回(同条第1項)
腐食試験の1サイクルは、ちょうど1日
避難はしご(規格省令第10条)と緩降機(規格省令第15条)の腐食試験は、数字が完全に一致します。
- 塩水を 8時間噴霧 → 16時間放置。これを 5回繰り返す → 24時間自然乾燥
そして 8+16=24。1サイクルがちょうど1日です。つまり覚えるのは「1日を5回、最後にもう1日」だけで、8・16・5・24という4つの数字は出てきます。噴霧が3分の1、放置が3分の2という配分も同時に思い出せます。
ただし避難はしごだけ、5回のあとに「水洗いをして」から24時間自然乾燥と書かれています。緩降機の第15条に水洗いの記載はありません。数字が同じで手順が1つだけ違うので、比較で問われたらここが答えになります。
表示事項もどちらも9項目で数がそろいます。中身は違うので、比較は鑑別対策のほうで扱っています。
緩降機は、最大使用荷重ひとつから全部が出る
緩降機の規格省令は第5条の1行が起点になっています。
緩降機の最大使用荷重は、最大使用者数に千ニュートンを乗じた値以上でなければならない。
1人あたり1,000N。ここが決まると、試験の荷重が全部そこから出ます。
| 何を試すか | 荷重 | 保持時間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 緩降機全体の強度 | 最大使用荷重 × 3.9 | 5分間 | 第8条 |
| ベルト単体の引張 | (最大使用荷重÷最大使用者数)× 6.5 | 5分間 | 第4条第4項第9号 |
係数は 3.9 と 6.5 の2つだけで、どちらも5分間保持。最大使用者数が2以上のときは全体の試験も1人ぶんに割ってから3.9倍するので、1人あたりで比べると 3.9 対 6.5 になります。
ベルトのほうが厳しいのには理由があります。ベルトは1人ぶんの体重を1本で受け持つ部品なので、機構全体より高い安全率を要求されます。どちらが大きいか迷ったら「細い部品ほど倍率が高い」で戻せます。
降下速度は第9条です。
- 250N、650N×最大使用者数、最大使用荷重 の3つを左右交互に1回ずつ → いずれも 16cm/s以上150cm/s以下(第1号)
- 650N×最大使用者数 を左右交互に10回ずつ(計20回)→ いずれも 20回の平均降下速度の80%以上120%以下(第2号)
そのあとに続く試験は、名前こそ違いますが全部が最後に第9条第1号の速度に戻ってくる形をしています。含水降下(第10条)、低温試験および高温試験(第11条)、繰返し(第12条)、落下衝撃降下(第13条)、落下(第14条)、腐食(第15条)。試験ごとに別の合格値があるわけではありません。
覚えるのは 16〜150 と 80〜120% の2組。あとは「その速度に戻れるか」を条件を変えて見ているだけ、と読めます。
温度もまとめて置いておきます。試験は周囲温度10度以上30度以下で行うのが原則(第7条)で、低温高温試験だけが零下20度と50度に24時間放置します(第11条)。ふだんは10〜30、いじめるときは−20と50、という対比です。
可搬式の緩降機だけに付く数値は2つです。調速器の質量は10kg以下(第3条第3項第1号)、落下試験は床上1.5mから5回(第14条)。落下衝撃降下試験でロープを引き出す長さは25cmで、こちらも5回繰り返します(第13条)。
令第25条は「避難の難しい順」に数字が並ぶ
設置基準側も、丸暗記する前に並びを見ます。
| 号 | 主な用途 | 対象の階 | 設置が要る収容人員 | 個数の分母 |
|---|---|---|---|---|
| 第1号 | (六)項 福祉施設・病院 | 2階以上・地階 | 20人(下階に特定用途があれば10人) | 100人 |
| 第2号 | (五)項 旅館・共同住宅 | 2階以上・地階 | 30人(同じく10人) | 100人 |
| 第3号 | (一)〜(四)項・(七)〜(十一)項 | 2階以上・地階(特定主要構造部を耐火構造とした建築物の2階は除く) | 50人 | 200人 |
| 第4号 | (十二)項・(十五)項 工場・事務所 | 3階以上・地階 | 無窓階と地階は100人、その他は150人 | 300人 |
| 第5号 | 直通階段が2以上ない階 | 3階以上((二)(三)項等は2階) | 10人 | 100人 |
しきい値は 20 → 30 → 50 → 100/150 と上がり、個数の分母も 100 → 100 → 200 → 300 と上がります。自力で逃げにくい人がいる用途ほど、少ない人数で設置が要り、しかも器具を多く要求されるという一方向の並びです。2つの列が同じ向きに動くので、片方を思い出せばもう片方の順序も出ます。
用途で決まる第1号から第4号のうち、対象が3階以上から始まるのは第4号だけです。これも同じ理屈で、工場・事務所は在館者が自力で避難できる前提が置かれています。
第5号の10人だけが例外に見えますが、この号は用途ではなく「直通する階段が2以上ない」ことを理由にしている号です。用途の列とは別軸なので、並びの外に置いて構いません。
減免(消防法施行規則第26条第1項)は読み替えの形をしています。「百人」を「二百人」に、「二百人」を「四百人」に、「三百人」を「六百人」に。3つともきっちり2倍です。条件は次の2つがそろうこと。
- 特定主要構造部を耐火構造としたものであること
- 直通階段を避難階段または特別避難階段としたものが2以上設けられていること
「耐火+2階段で分母が倍」の一言で足ります。3つの数字を別々に覚える必要はありません。
減算のほうも数字は「2」に寄っています。避難階段・特別避難階段はその数だけ引けます(第2項)が、渡り廊下は数×2(第3項)、屋上広場に設けた避難橋も数×2(第4項)。引いた数が1に満たなければ設置しないことができます。
算定の手順そのものは製図対策で扱っているので、ここでは数値の並びだけにとどめます。
ここからが語呂の出番
関係で導けなかった数値だけを、最後に語呂で固定します。数が少ないので、無理に全部を語呂にしないほうが混ざりません。
| 数値 | 語呂 |
|---|---|
| 横桟の直径 14mm以上35mm以下/横桟の間隔 25cm以上35cm以下 | 上限がどちらも35。「太さも間隔も、上はサンゴ(35)でそろう」。下限だけ「イイヨ(14)ミリ・ニコ(25)センチ」 |
| 緩降機の降下速度 16〜150cm/s | 「イロ(16)いろ試して、イコー(150)」 |
| 緩降機の係数 3.9/6.5 | 「サンキュー(3.9)は全体、ロクゴ(6.5)はベルト」。細い部品ほど倍率が高い |
| 立てかけはしごの上部支持点 先端から 60cm以内 | 「立てかけの肩は60」(第5条第1号) |
| 収納式の固定はしごは 2動作以内で使用可能に | 保安装置に至る動作は数えない(第4条第2号) |
横桟の間隔は「縦棒に同一間隔に取り付けられたもの」であることが前提です(第3条第6項)。間隔が一定であること自体が要件なので、数値だけでなくこちらも一緒に出せるようにしておきます。
語呂で埋めた穴は、演習でしか見つからない
語呂は思い出す速度を上げますが、思い出した数値が正しいかどうかは語呂では確かめられません。取り違えは問題を解いたときにしか表面化しないので、覚えたつもりになった直後に手を動かすのがいちばん早いです。
消防設備士甲種5類の練習問題は全126問を無料で公開しています。ここで扱った規格省令の数値は構造・機能・工事・整備に、寸法や部品名を答える形式は実技(鑑別・製図)にまとまっています。設置基準の数値は消防関係法令・基礎知識です。
工事に関わらない乙種第5類を受ける場合も、規格省令と令第25条の数値はそのまま共通です。違うのは製図が出ないことと、扱えるのが整備・点検までという範囲のほうなので、この記事の数値は同じように使えます。











