条文は3か所に散っているが、分岐は1つしかない
潜水業務の体制と装備は、高気圧作業安全衛生規則の第29条・第34条・第36条・第37条に分かれて書かれています。バラバラに覚えると混ざりますが、4つとも同じ一点で場合分けをしています。
潜水作業者に携行させたボンベからの給気か、そうでないか。
いわゆるスクーバのように自分でボンベを背負っている場合と、船の上から送気を受ける場合とで、必要なものが変わります。分岐がこの1つだと分かると、覚える表は1枚で済みます。
| 送気式・送気を受けるボンベ式 | 携行させたボンベ(スクーバ) | |
|---|---|---|
| 連絡員(第36条) | 必要。潜水業務従事者2人以下ごとに1人 | 不要。代わりに異常がないかを監視する者(第29条第2号) |
| 潜降直前(第29条第1号) | 規定なし | 使用するボンベの現に有する給気能力を知らせる |
| 携行物(第37条) | 信号索・水中時計・水深計・鋭利な刃物 | 水中時計・水深計・鋭利な刃物 + 救命胴衣または浮力調整具 |
| 潜水前の点検(第34条第1項) | 潜水器・送気管・信号索・さがり綱・圧力調整器の5点 | 潜水器・圧力調整器の2点 |
携行式になると、船とつながっている前提の道具(送気管・信号索・さがり綱)が3つとも落ちます。そのぶん、自力で浮くための救命胴衣または浮力調整具が足されます。落ちる3つと足される1つは、どちらも「船とつながっているか」から出ています。
携行式にだけ足される決まりがもう1つあります。第29条第1号は、潜降直前に、そのボンベが現に有する給気能力を潜水作業者に知らせることを求めています。送気式では船側が送気を続けるので、残量という概念で管理する必要がありません。残量を自分で持つ方式だから、潜る前に残量を伝える、という対応です。
例外なく必要なのは「鋭利な刃物」だけ
第37条には、もう1つ場合分けがあります。
ただし、潜水作業者と連絡員とが通話装置により通話することができることとしたときは、潜水作業者に信号索、水中時計及び水深計を携行させないことができる。
通話装置があれば、信号索・水中時計・水深計の3つを省けます。省けない残りが鋭利な刃物です。
整理すると、鋭利な刃物はどの方式でも、通話装置があっても、必ず携行させる唯一の品目になります。設問で「携行させなくてよいものはどれか」と問われたとき、刃物を選ぶ選択肢は常に誤りです。
▶ 信号索・水中時計・水深計は「連絡と位置確認の道具」なので、通話装置で代替できる。刃物は絡まりを切るための道具なので代替物がない、と役割で押さえると条文を思い出さずに判断できます。
「送気員」は法令用語ではない
検索でよく見る「送気員」という言葉は、高気圧作業安全衛生規則には1度も出てきません。条文が使うのは次の言い方です。
潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコツクを操作する業務(第11条第1項第4号)
この業務は特別の教育が必要な6つの業務のうちの1つです。教育すべき事項は、潜水業務に関する知識・送気に関すること・高気圧障害の知識・関係法令・送気の調節の実技の5つです。
連絡員のほうは第36条で名前が付いた役割で、この人がバルブを操作するわけではありません。第36条第2号は、連絡員の仕事を「送気の調節を行うバルブ又はコックを操作する業務に従事する作業従事者と連絡して、潜水業務従事者に必要な量の空気を送気させること」と書いています。
▶ 連絡員は「伝える人」、バルブを操作するのは別の人。同一人物が兼ねてはいけないとは書かれていませんが、条文上は別の役割として並んでいます。
連絡員の仕事は4つで、最後の1つだけ条件つき
第36条は連絡員に行わせる事項を4号に分けています。
- 潜水業務従事者と連絡して、潜降及び浮上を適正に行わせること
- 送気の調節を行う者と連絡して、必要な量の空気を送気させること
- 送気設備の故障その他の事故により危険等のおそれがあるときは、速やかに連絡すること
- ヘルメット式潜水器を用いる場合は、潜降直前にヘルメットがかぶと台に結合されているかを確認すること
第4号だけがヘルメット式に限った仕事です。1号から3号は方式を問いません。「連絡員の職務でないものはどれか」という形式では、ヘルメット式以外の潜水でかぶと台の確認を挙げる選択肢が誤りになります。
送気量の60と40は、交換条件になっている
数値は第28条にまとまっています。
| 条件 | 送気量 | 送気圧 |
|---|---|---|
| 空気圧縮機・手押ポンプで送気する(原則) | その水深の圧力下で毎分60リットル以上 | 規定なし |
| 圧力調整器を使用させる場合 | その水深の圧力下で毎分40リットル以上送気できる空気圧縮機 | その水深の圧力に0.7MPaを加えた値以上 |
60が40に下がるのは、圧力調整器を使わせるときだけです。そして下がる代わりに、原則には無かった送気圧の下限が付きます。
▶ 量が緩む代わりに圧力の条件が付く、という交換関係で覚えると、40だけ・0.7MPaだけを単独で思い出す必要がなくなります。片方を思い出せばもう片方が付いてきます。
圧力調整器そのものにも条件があります。圧力1MPa以上の気体を充填したボンベから給気を受けさせるときは、二段以上の減圧方式の圧力調整器を使わせなければなりません(第30条)。1MPaが境目で、二段以上です。
さがり綱は3メートルごとに水深を表示する木札または布等を取り付けます(第33条第2項)。
定期点検の周期は1週・1月・3月・6月の4段階
第34条第2項の定期点検は、方式ごとに表になっています。数値が多く見えますが、周期は4種類しかありません。
| 設備 | 送気式 | ボンベから給気 |
|---|---|---|
| 空気圧縮機・手押ポンプ | 1週 | ― |
| 空気を清浄にするための装置 | 1月 | ― |
| 水深計 | 1月 | 1月 |
| 水中時計 | 3月 | 3月 |
| 流量計 | 6月 | ― |
| ボンベ | ― | 6月 |
水深計1月・水中時計3月は、どちらの方式でも同じです。方式で変わるのは、送気式にしかない機械(空気圧縮機1週・清浄装置1月・流量計6月)と、ボンベ式にしかないボンベ(6月)だけです。
一番短いのが空気圧縮機の1週で、これは送気そのものを作る機械だから、と理由で押さえられます。
点検や修理を行ったときは、そのつど概要を記録して3年間保存します(第34条第3項)。
覚える順番
条文の番号順に覚えると散らかるので、次の順で組み立てると1枚の表に落ちます。
- 「携行させたボンベか」で2列に割る(第29条・第34条第1項・第36条・第37条が全部これ)
- 携行式は3つ落ちて1つ足される(送気管・信号索・さがり綱が落ち、救命胴衣または浮力調整具が足される)
- 通話装置があれば3つ省ける。刃物だけ残る(第37条ただし書)
- 数値は交換条件で持つ(60↔40と0.7MPa、1MPa↔二段以上)
- 周期は1週・1月・3月・6月の4段階。水深計1月と水中時計3月は共通
表を作ったら、選択肢で試す
この種の分岐は、表を書き写した直後は完璧に見えて、選択肢の形にされると崩れます。「携行させたボンベ」と「ボンベからの給気」を入れ替えただけの選択肢が作れてしまうためです。
潜水士の練習問題は全160問を無料で公開しています。ここで扱った条文は関係法令と送気、潜降及び浮上に入っていて、連絡員・信号索・圧力調整器の設問はそれぞれ複数用意してあるので、分岐を取り違えていればその場で分かります。装備の分岐そのものは潜水業務です。
計算問題のほうは潜水士の計算問題、配点をどう守るかという全体の作戦は予想問題160問の使い方で扱っています。
出典
- 高気圧作業安全衛生規則(昭和47年労働省令第40号)第11条・第28条・第29条・第30条・第33条・第34条・第36条・第37条
条文はe-Gov法令検索で全文を確認できます。数値は改正で動くので、直前期には原文に戻ってください。










