計算を捨てると、足切りは越えられるが合計点で落ちる
「計算問題は捨てていいですか」という質問には、配点の表を先に置くと答えが出ます。
| 科目 | 出題数 | 1問の配点 | 満点 | 40%の足切り | 足切りに要る正解数 |
|---|---|---|---|---|---|
| エックス線の管理に関する知識 | 10問 | 3点 | 30点 | 12点 | 4問 |
| 関係法令 | 10問 | 2点 | 20点 | 8点 | 4問 |
| エックス線の測定に関する知識 | 10問 | 2.5点 | 25点 | 10点 | 4問 |
| エックス線の生体に与える影響に関する知識 | 10問 | 2.5点 | 25点 | 10点 | 4問 |
| 合計 | 40問 | ― | 100点 | ― | ― |
合格の条件は科目ごとに40%以上、かつ合計60%以上の二重基準です。
ここから2つのことが分かります。
足切りは、各科目4問取れば越えます。計算を全部落としても、非計算の問題が各科目に6問残っているので、足切りだけなら計算なしでも越えられます。
しかし合計60点は越えられません。4問ずつ正解して足切りをちょうど越えた状態は、12+8+10+10=40点です。60点には20点足りません。合計60点に届くには、配点の重みを均すとおよそ24問前後の正解が要ります。40問中24問は6割です。
▶ 足切りの「4問」と、合格に要る「6割」は別の話です。計算を捨てる判断は足切りの話では成立しても、合計点の話では成立しません。
しかも計算は、配点が一番高い2科目に出る
計算が出るのは、遮蔽と距離を扱う「管理」と、単位と線量当量を扱う「測定」です。上の表を見ると、この2つは1問3点と1問2.5点で、4科目の中で1位と2位です。
管理の1問は、法令の1.5問分の重さがあります(3点対2点)。つまり計算問題は、この試験で捨てるコストが最も高い場所に置かれていることになります。「1問だけだから」で切り捨てると、法令の1問半を余分に取り返す必要が出ます。
逆に言えば、計算を取れるようにする効果も同じだけ大きいということです。そして出題される計算は3型しかありません。
出る計算は3型だけ
| 型 | 中身 | 主に出る科目 |
|---|---|---|
| ① 距離 | 点線源からの距離と線量率 | 管理 |
| ② 遮蔽 | 半価層・1/10価層による減弱 | 管理 |
| ③ 単位 | μSvとmSvの換算、線量率×時間 | 測定 |
③は公式ではなく算数なので、覚える公式は①と②の2つだけです。
①と②は、指数の付き方が正反対
2つの公式を並べると、混ざりにくくなります。
- 距離 … 線量率は距離の2乗に反比例する。距離が n 倍なら線量率は n²分の1
- 遮蔽 … 半価層を1枚通るごとに2分の1になる。n 枚なら 2ⁿ分の1
距離は「2」が指数の位置に固定されていて、変わるのは底(距離の倍率)。遮蔽は「2分の1」が底に固定されていて、変わるのは指数(枚数)。どちらも累乗ですが、固定されている側が逆です。
具体的な数字で確かめると差がはっきりします。
| 変化 | 距離の場合 | 遮蔽の場合 |
|---|---|---|
| 「2」倍・「2」枚 | 距離2倍 → 4分の1 | 半価層2枚 → 4分の1 |
| 「3」倍・「3」枚 | 距離3倍 → 9分の1 | 半価層3枚 → 8分の1 |
| 「4」倍・「4」枚 | 距離4倍 → 16分の1 | 半価層4枚 → 16分の1 |
2と4のときは偶然一致し、3のときだけ9と8に割れます。この一致があるせいで、片方の理屈でもう片方を解いても2回に1回は当たってしまい、間違いに気づけません。3倍・3枚のケースで自分を試すのが、どちらの公式を使っているかを確かめる一番早い方法です。
距離の問題で落とすのは「比をそのまま使う」形
距離1mで400μSv/hの点線源から2m離れたときの線量率を問われて、200μSv/hと答えてしまうのが典型です。距離が2倍だから2分の1、という読み方をしています。正しくは2の2乗で4分の1なので100μSv/hです。
近づく側でも同じことが起きます。3mで20μSv/hの線源に1mまで近づくと、3倍ではなく9倍の180μSv/hです。近づくときの危険は、距離の比が示すより大きいというのが、この式の実務上の意味になります。
逆向きの問い方もあります。「線量率を9分の1にするには距離を何倍にするか」に対する答えは9倍ではなく、9の平方根の3倍です。線量率の倍率を聞かれたら2乗、距離の倍率を聞かれたら平方根、と向きで押さえます。
遮蔽の問題は「回数」を数える
半価層は線量率が2分の1になる遮蔽体の厚さです。減っているのは光子の数であって、エックス線1本あたりのエネルギーが半分になるわけではありません。
「8分の1にするには半価層何枚分か」は、2を何回掛けたら8になるかという問いに置き換わります。2×2×2=8なので3枚です。16分の1なら4枚、100分の1なら1/10価層が2枚です。8分の1だから8枚と答えてしまうのが最も多い落とし方で、枚数と倍率を取り違えています。
半価層が2mmと与えられていれば、8分の1に必要な厚さは2mm×3枚=6mmです。厚さの計算は最後に掛けるだけなので、先に枚数を出してから厚さに直します。
1/10価層は半価層の約3.3倍です。2を3回掛けると8、4回掛けると16なので、10分の1にするのに要る回数は3回と4回の間、実際には約3.32回になります。10÷2から5倍と考えるのは、掛け算の回数を割り算で求めようとした形です。
距離と遮蔽は、足さずに掛ける
両方を同時に使ったときは、それぞれの倍率を掛け合わせます。
距離を2倍にして(4分の1)、さらに半価層2枚分の遮蔽を置く(4分の1)と、16分の1です。4分の1と4分の1を足して2分の1にはなりません。外部被ばく低減の三原則のうち「距離」と「遮蔽」は独立に効くので、組み合わせると効果が急に大きくなります。
「時間」も同じで、線量は線量率と時間の積です。線量率を16分の1にしたうえで作業時間を半分にすれば、受ける線量は32分の1になります。
単位の落とし方は、いつも同じ1か所
③の単位は、公式ではなく桁を合わせる手順の問題です。落とすのはほぼ1か所に集中しています。
線量率がμSv/hで与えられ、限度がmSvで与えられたときに、そろえずに割る。
「1cm線量当量率が20μSv/hの場所で、累積1mSvに達するまでの時間」であれば、1mSvを1000μSvに直してから20で割って50時間です。1÷20として0.05時間と答えると、桁が3つずれます。
- ミリ → マイクロ は1000倍(0.5mSv/h=500μSv/h)
- マイクロ → ミリ は1000分の1(2500μSv=2.5mSv)
大きい単位から小さい単位へ直すと数値は大きくなる、と向きで確認すれば、掛けるか割るかで迷いません。
時間の扱いも同じ型です。「100μSv/hの場所で20μSv以内に収める作業時間」は20÷100=0.2時間ですが、ここで止めると0.2を20分と読み違えます。0.2時間×60=12分まで機械的に進めます。
法令の数値と計算がつながる場所
計算が法令と地続きになるのが、管理区域の基準です。電離放射線障害防止規則第3条第1項第1号は、管理区域を外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域としています。同条第2項により、この実効線量の算定は1センチメートル線量当量で行います。
これを時間あたりに直すと、1週40時間・13週で520時間ですから、1300μSv÷520時間=約2.5μSv/hになります。管理区域を設定するかどうかの目安として実務で使われる値です。
被ばく限度のほうも、そのままでは計算になりません。同規則第4条第1項は5年間につき100ミリシーベルトを超えず、かつ1年間につき50ミリシーベルトを超えないことを求めています。2つの条件を同時に満たす必要があるので、最初の4年で80mSvを受けていれば、5年目に受けられるのは1年の枠の50mSvではなく、5年の枠の残りである20mSvです。厳しいほうが実際の上限になります。
なお、同規則第5条第1項の眼の水晶体の等価線量限度も5年間につき100mSv、1年間につき50mSvで、第4条の実効線量限度と同じ数字です。皮膚だけが1年間につき500mSvと1桁違います。数字を3組覚えるのではなく、「水晶体は実効線量と同じ、皮膚だけ10倍」と差分で持つほうが崩れません。
手を動かさないと、公式を持っているかは分からない
公式は2つしかありませんが、2と4のときに距離と遮蔽の答えが一致してしまうので、読んだだけでは自分がどちらの理屈で解いているか判別できません。
エックス線作業主任者の練習問題は全180問を無料で公開しています。ここで扱った3型はエックス線の管理に関する知識とエックス線の測定に関する知識に入れてあり、距離を3倍にする問題と半価層3枚の問題を別々に置いてあるので、取り違えていればその場で分かります。法令側の数値は関係法令です。
配点をどう守るかという全体の作戦は予想問題180問の使い方、第一種放射線取扱主任者などによる科目免除は科目免除の条件で扱っています。
出典
- 電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号)第3条・第4条・第5条
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会 免許試験の科目・配点および合格基準
法令の数値は改正で動きます。直前期にはe-Gov法令検索で条文そのものを確認してください。










