消防設備士4類を受けようと思って最初につまずくのが「甲種と乙種、どっちを申し込めばいいのか」です。受験料も日程も別、申込み方法も違うので、ここを間違えると遠回りになります。違いは細かく数えればいくつもありますが、選択に効くのは結局「何ができるか(業務範囲)」「受けられるか(受験資格)」「どこまで難しいか(試験内容)」の3つだけです。
結論から言うと、自動火災報知設備などの工事を自分の名前で請けたいなら甲4、点検・整備の現場で働ければ十分なら乙4で始めて問題ありません。以下で、その判断を自分の状況に当てはめられるところまで掘り下げます。
この記事で分かること
- 甲4と乙4で「できる仕事」がどう変わるか(工事ができるかどうか)
- 甲種にだけある受験資格と、乙種が誰でも受けられる理由
- 甲種の実技に加わる「製図」が何で、なぜ合否を分けるのか
- 甲4と乙4で年収・資格手当がどう違うか
- 仕事・将来別に、甲4から始めるか乙4から始めるかの判断基準
- 申込み前にやりがちな失敗とその回避策
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いちばん大きい差は「工事ができるか」
甲種と乙種を分ける核心は、消防用設備の工事に着手できるかどうかです。
| 甲種4類 | 乙種4類 | |
|---|---|---|
| 工事 | できる | できない |
| 整備 | できる | できる |
| 点検 | できる | できる |
| 着工届の提出 | できる | できない |
ここでいう「工事」は、自動火災報知設備や非常警報設備などを新しく設置したり、設備の大きな改修をしたりする作業を指します。工事に着手する前に消防長へ提出する着工届を出せるのは甲種だけで、これは乙種では代われない独占業務です。
実務でこの差が効くのは、たとえば設備工事会社・電気工事会社で「自分が責任者として現場の工事を進める」立場になるときです。逆に、ビルメンテナンスや点検会社で既設設備の点検・整備が中心なら、乙種でも仕事は回ります。「将来工事側に回る可能性があるか」を先に考えると、甲乙の選択はほぼ決まります。
甲種にだけ受験資格がある
2つ目の差は申込みの段階で出ます。乙種は受験資格がなく誰でも申し込めますが、甲種は受験資格を満たし、それを証明する書類を添えないと受け付けてもらえません。
甲種の受験資格にはいくつかルートがありますが、代表的なのは次のようなものです。
- 第二種電気工事士などの国家資格を持っている
- 大学・高専・専門学校などで指定の学科を修めて卒業している
- 乙種消防設備士として一定の実務経験を積んでいる
特に多いのが「電工2種を取ってから甲4を受ける」ルートで、これは受験資格になるだけでなく電気に関する一部科目の免除にもつながります。自分がどのルートで受けられるかは 消防設備士甲4 受験資格3ルート で確認しておくと、申込みでつまずきません。
「資格がまだ何もない」状態なら、乙4を先に取って実務経験で甲種に進む、あるいは電工2種を先に取る、という選択肢になります。ただし乙種消防設備士の実務経験ルートで甲種を受けるには2年以上の実務経験が必要です。乙4取得後すぐには甲4の受験資格が得られない場合があるため、時間軸を確認して計画を立ててください。
甲種の試験には「製図」が加わる
3つ目は試験そのものの差です。甲種4類の試験は筆記45問+実技(鑑別等5問+製図2問)で構成され、製図は甲種だけにある科目です。乙種は筆記の問題数が少なく、実技も鑑別等のみで製図はありません。
合格基準は甲種・乙種とも共通の考え方で、筆記は各科目40%以上かつ全体60%以上、実技は60%以上。どこか1科目でも40%を割ると、他がよくても不合格になる足切り方式です。甲4で必要な正答数を 1 問単位で確認したい人は 消防甲4 合格基準の読み方 を、受験資格の判定手順は 消防甲4 受験資格の3ルート を参照してください。
製図は、感知器や受信機、配線を図面上に正しく配置・結線する問題で、暗記だけでは点が伸びにくい分野です。自動火災報知設備の感知器の種別ごとの設置ルールや配線方式を理解していないと手が止まります。だからこそ甲種では製図対策が合否を分けると言われます。具体的な進め方は 消防設備士甲4 製図対策 を参照してください。
まとめると、甲4と乙4はこう違う
| 観点 | 甲種4類 | 乙種4類 |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 工事+整備+点検 | 整備+点検のみ |
| 着工届 | 提出できる | 提出できない |
| 受験資格 | 必要(電工2種・指定学科・実務 等) | 不要(誰でも受験可) |
| 実技の製図 | あり(2問) | なし |
| 受験料(令和6年5月改定) | 6,600円 | 4,400円 |
受験料は甲種6,600円・乙種4,400円(令和6年5月1日改定。改定前は甲種5,700円・乙種3,800円)。最新の受験料は消防試験研究センター公式サイトで確認してください。受験料の差は製図と工事権限ぶんの価値と考えると分かりやすいです。
年収・手当はどう違う?
どちらを取るか考えるとき、収入面の差も気になるところです。消防設備士全体の年収相場は約400万〜500万円が目安で、工事まで担える甲種のほうが、点検・整備が中心の乙種より年収・手当ともに高くなる傾向があります。工事権限ぶんだけ任される仕事の幅が広がるためです。
資格手当の相場は、甲種で月5,000円前後、乙種で月1,000〜3,000円程度が一般的です(勤務先の規定により異なります)。月5,000円の手当が付けば年6万円の上乗せになり、甲種の受験料6,600円は1年かからず回収できる計算です。
ただし手当や年収は資格の種類だけで決まるわけではなく、勤務先・地域・実務経験で大きく変わります。上記は一般的な目安としてとらえ、具体的な金額は応募先の求人票や就業規則で確認してください。職種ごとの活かし方は消防甲4 仕事・転職での活かし方で整理しています。工事に関われる甲種は手当・年収でも有利になりやすく、これも「将来工事側に回る可能性があるなら甲4」という判断を後押しする材料になります。
結局どちらを選ぶか
- 工事会社・電気工事会社で工事に関わる(関わりたい) → 迷わず甲4。乙4を経由する時間がもったいない
- 点検・整備が中心のビルメン/点検会社 → 乙4で十分。必要になってから甲4を足せばよい
- 資格が何もなく、まず受かる経験がほしい → 受験資格不要の乙4から。実務経験を積んで甲4へ
- すでに電工2種を持っている → 受験資格と科目免除を活かして甲4に直行するのが効率的
申込み前にやりがちな失敗
- 「甲種も誰でも受けられる」と思い込み、申込みで弾かれる — 甲種は受験資格と証明書類が必須。まず自分のルートを確定させてから申し込む
- 「とりあえず乙4」で受けたが、就職先で工事を任され甲4が必要になった — 工事に関わる可能性が少しでもあるなら、最初から甲4を視野に入れる
- 甲種を受けるのに製図を後回しにする — 製図は筆記の知識が土台。学習開始から1か月後を目安に筆記と並行して図面を描く練習を始める。直前1か月からでは製図の反復量が確保できない
まとめ
甲4と乙4の違いは、「工事ができるか」「受験資格が要るか」「製図があるか」の3点に集約されます。工事に関わるなら甲4、点検・整備中心なら乙4、という軸で選べば大きく外しません。
次の一手は、自分が甲4を受けられるかどうかの確認です。電工2種や指定学科に当てはまるなら甲4に直行できます。受けられる前提なら、まずは自分の今の実力を測ってみてください。
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出典:
- 一般財団法人 消防試験研究センター — 消防設備士試験 受験案内
- 消防法第17条の5 — 消防設備士の区分 (甲種・乙種)

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