結論: 精算表は「仕訳→転記→集計→検算」の4工程で解く
簿記3級の第3問は 35点 の配点があり、第1問の仕訳 (45点) と合わせて 80点を占める得点の柱です。その第3問で最も出題される形式が 8桁精算表 で、解く流れは次の4工程に固定できます。
| 工程 | やること | つまずきポイント |
|---|---|---|
| 1. 仕訳 | 決算整理事項をすべて仕訳に書き出す | 精算表に直接書いて転記ミスを追えなくなる |
| 2. 転記 | 仕訳を修正記入欄 (借方・貸方) へ移す | 新規勘定科目を下の空行に書き忘れる |
| 3. 集計 | 行ごとに加減し損益計算書欄・貸借対照表欄へ | 資産/費用と負債/収益の振り分けを誤る |
| 4. 検算 | 当期純利益を貸借差額で出し左右一致を確認 | 当期純利益の借方/貸方を取り違える |
編集部の見立てでは、第3問で 10点台に沈む人の大半は「決算整理仕訳が固まっていない」ことが原因です。精算表は表の埋め方を覚える前に、決算整理仕訳を仕訳として正確に書けることが先決です。逆に言えば、仕訳さえ固まれば精算表は機械的な転記作業に変わります。
第3問を含む試験全体の配点構成は、別記事の簿記3級とはを参照してください
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精算表 (8桁) の構造を理解する
8桁精算表は、横に4つの欄 (合計8列) が並ぶ表です。左から右へ「試算表 → 修正記入 → 損益計算書 → 貸借対照表」と流れ、決算の計算過程を1枚で見渡せるようにしたものです。
| 欄 (各2列) | 中身 | どこから来るか |
|---|---|---|
| 試算表 | 決算整理前の残高 | 問題に最初から印字されている |
| 修正記入 | 決算整理仕訳の金額 | 自分で決算整理仕訳を転記する |
| 損益計算書 | 収益・費用の金額 | 試算表±修正記入を振り分け |
| 貸借対照表 | 資産・負債・純資産の金額 | 試算表±修正記入を振り分け |
各行 (勘定科目) で「試算表の金額に修正記入を足し引きし、その勘定が損益計算書側か貸借対照表側かに応じて右の欄へ移す」のが基本動作です。勘定科目が5要素 (資産・負債・純資産・収益・費用) のどれに属するかが分かれば、移す先の欄も決まります。
| 5要素 | 移す欄 | 例 |
|---|---|---|
| 資産 | 貸借対照表 (借方) | 現金・売掛金・繰越商品・備品 |
| 負債 | 貸借対照表 (貸方) | 買掛金・借入金・未払費用 |
| 純資産 | 貸借対照表 (貸方) | 資本金・繰越利益剰余金 |
| 収益 | 損益計算書 (貸方) | 売上・受取利息 |
| 費用 | 損益計算書 (借方) | 仕入・給料・減価償却費 |
決算整理仕訳の頻出論点を表で整理する
精算表の修正記入欄に書く中身は、決算整理仕訳です。簿記3級で繰り返し出る論点は次の8つに集約されます。まずは全体像を1枚で押さえてください。
| 論点 | 典型仕訳の向き | ねらい |
|---|---|---|
| 売上原価の算定 | 仕入/繰越商品 と 繰越商品/仕入 | 売れた分だけを費用にする |
| 貸倒引当金 (差額補充法) | 貸倒引当金繰入/貸倒引当金 | 回収不能の見積りを費用計上 |
| 減価償却 (定額法・間接法) | 減価償却費/減価償却累計額 | 固定資産の価値減少を費用化 |
| 前払費用 (経過勘定) | 前払費用/支払家賃 等 | 翌期分の費用を当期から除く |
| 未払費用 (経過勘定) | 支払利息/未払費用 等 | 当期分の未払い費用を計上 |
| 前受収益 (経過勘定) | 受取家賃/前受収益 等 | 翌期分の収益を当期から除く |
| 未収収益 (経過勘定) | 未収収益/受取利息 等 | 当期分の未収の収益を計上 |
| 現金過不足・当座借越 等 | 雑損/現金過不足、当座預金/当座借越 | 期中の仮勘定を本来の科目へ整理 |
以下、特につまずきやすい論点を順に分解します。
売上原価の算定 (しーくりくりしー)
3分法では、期中の仕入をすべて「仕入」勘定に計上しています。しかし費用にしてよいのは 売れた分 (売上原価) だけ なので、決算で在庫を調整します。語呂は「しーくりくりしー」です。
| 行 | 仕訳 | 意味 |
|---|---|---|
| し→くり | (借) 仕入 ×× / (貸) 繰越商品 ×× | 期首在庫を仕入に足す |
| くり→し | (借) 繰越商品 ×× / (貸) 仕入 ×× | 期末在庫を仕入から商品へ戻す |
オリジナル例題で確認します。期首商品 10,000円、当期仕入 80,000円、期末商品 15,000円のとき、仕入勘定は次のように動きます。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 期首商品 (仕入へ加算) | +10,000 |
| 当期仕入 (すでに計上済み) | 80,000 |
| 期末商品 (仕入から控除) | −15,000 |
| 売上原価 (仕入の行の最終額) | 75,000 |
なお問題が「売上原価は売上原価勘定で計算する」と指示する場合は、振替先を仕入でなく 売上原価 勘定にします。仕入の行で計算するか売上原価の行で計算するかは問題文の指示で変わるため、解き始める前に必ず確認します。
貸倒引当金 (差額補充法)
売掛金や受取手形のうち、将来回収できないと見積もる金額を費用として前もって計上します。3級では 差額補充法 が基本で、「見積額 − 既存の引当金残高」だけを繰り入れます。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 売掛金期末残高 | 200,000円 |
| 貸倒設定率 | 2% |
| 見積額 (200,000×2%) | 4,000円 |
| 既存の貸倒引当金残高 | 1,500円 |
| 繰入額 (差額) | 2,500円 |
仕訳は (借) 貸倒引当金繰入 2,500 / (貸) 貸倒引当金 2,500 です。見積額そのもの (4,000円) を計上しないのが差額補充法の要点です。
減価償却 (定額法・間接法)
建物や備品などの固定資産は、使用とともに価値が下がるため、毎期その分を費用にします。3級は 定額法 が中心で、間接法 (累計額勘定を使う) で記帳します。
| 計算式 | (取得原価 − 残存価額) ÷ 耐用年数 |
|---|---|
| 取得原価 | 300,000円 |
| 残存価額 | 0円 |
| 耐用年数 | 5年 |
| 1年分の減価償却費 | 60,000円 |
仕訳は (借) 減価償却費 60,000 / (貸) 減価償却累計額 60,000 です。期中に取得した資産は 月割計算 (使った月数 ÷ 12) になる点に注意します。
経過勘定 (前払・未払・前受・未収)
家賃や利息など、支払い・受け取りの時期と費用・収益の発生時期がずれるものを、当期分と翌期分に切り分けます。4種類の向きを表で固定します。
| 種類 | 内容 | 仕訳の例 |
|---|---|---|
| 前払費用 | 翌期分の費用を当期から除く | (借) 前払家賃 / (貸) 支払家賃 |
| 未払費用 | 当期分の未払い費用を足す | (借) 支払利息 / (貸) 未払利息 |
| 前受収益 | 翌期分の収益を当期から除く | (借) 受取家賃 / (貸) 前受家賃 |
| 未収収益 | 当期分の未収の収益を足す | (借) 未収利息 / (貸) 受取利息 |
「前 (まえ) = 先に受け払い済みなので減らす」「未 (み) = まだなので足す」と覚えると向きを間違えにくくなります。
現金過不足・当座借越・消耗品など
期中に使った仮の勘定を、決算で本来の科目へ整理する論点もあります。
| 論点 | 決算での処理 |
|---|---|
| 現金過不足 (原因不明) | 借方残なら雑損、貸方残なら雑益へ振り替える |
| 当座借越 | 当座預金の貸方残高を当座借越 (負債) へ振り替える |
| 消耗品 (購入時費用処理) | 未使用分を消耗品 (資産) へ振り替える場合がある |
| 貯蔵品 | 未使用の切手・収入印紙を貯蔵品 (資産) へ振り替える |
これらは出題頻度が論点により異なりますが、現金過不足と当座借越は精算表でも問われやすいため、向きを押さえておくと取りこぼしを防げます。
決算整理仕訳を含む独学の進め方は、別記事の独学記事を参照してください
精算表を解く手順 (ステップ実演)
ここまでの論点を踏まえ、精算表を埋める手順を1枚の流れにまとめます。
| ステップ | 操作 | チェック |
|---|---|---|
| Step 1 | 決算整理事項をメモにすべて仕訳化 | 事項の数だけ仕訳があるか |
| Step 2 | 修正記入欄へ転記 (新規科目は下の空行に追加) | 借方合計=貸方合計か |
| Step 3 | 各行で試算表±修正記入を計算 | 加減の符号を間違えていないか |
| Step 4 | 資産・負債・純資産→貸借対照表、収益・費用→損益計算書へ記入 | 5要素の振り分けは正しいか |
| Step 5 | 損益計算書欄の貸借差額=当期純利益を借方に記入 | 利益なら借方・損失なら貸方 |
| Step 6 | 貸借対照表欄の貸借差額を貸方に同額記入 | Step 5と同額か |
| Step 7 | 左右の縦合計で検算 | 借方合計=貸方合計か |
ポイントは Step 1 で仕訳を全部書き切ることです。精算表へ直接書き込もうとすると、後で貸借が合わなかったときに原因を追えません。仕訳というワンクッションを挟むことで、転記ミスと計算ミスを分けて発見できます。
第3問対策を時系列に組み込んだ12週ロードマップは、別記事の初心者ロードマップを参照してください
検算のしくみ: なぜ左右が一致するのか
精算表の検算は「損益計算書欄の貸借差額」と「貸借対照表欄の貸借差額」が 同額になる ことを利用します。これは当期純利益が、収益と費用の差 (損益計算書側) であると同時に、純資産の増加 (貸借対照表側) でもあるためです。
| 欄 | 当期純利益の位置 | 理由 |
|---|---|---|
| 損益計算書欄 | 借方 | 費用側に足して収益と釣り合わせる |
| 貸借対照表欄 | 貸方 | 純資産の増加分として表す |
両欄の差額が一致しないときは、次の順で見直すと効率的です。
| 確認順 | 見る場所 | よくある誤り |
|---|---|---|
| 1 | 修正記入欄の借方・貸方合計 | 決算整理仕訳の転記漏れ |
| 2 | 各行の加減 | 試算表±修正記入の符号ミス |
| 3 | 5要素の振り分け | 費用を貸借対照表側へ書いた |
| 4 | 当期純利益の位置 | 借方/貸方の取り違え |
精算表で貸借が合わないのは、表の使い方ではなく 決算整理仕訳の精度 が原因であることがほとんどです。合わない問題に出会ったら、表をにらむより仕訳に戻るのが近道です。
逆から読む — 埋めるだけでなく「読み取る」問題が出る
ここまでは資料から精算表を埋める向きでした。本番ではこれを逆に走らせる問題が出ます。「修正記入欄にこう書いてある。何をした結果か」「試算表欄と損益計算書欄がこうなっている。修正記入欄には何が入るか」という形です。
やることは新しくありません。修正記入欄に書かれているのは決算整理仕訳そのものなので、そこを読めば仕訳の復元ができます。
修正記入欄から仕訳を復元する
| 修正記入欄の記入 | 復元される仕訳 | 何をしたか |
|---|---|---|
| 貯蔵品 (借) 4,000 / 通信費 (貸) 4,000 | (借) 貯蔵品 4,000 / (貸) 通信費 4,000 | 未使用の切手を費用から資産へ振替 |
| 旅費交通費 (借) 8,000 / 仮払金 (貸) 8,000 | (借) 旅費交通費 8,000 / (貸) 仮払金 8,000 | 概算払いの仮払金が旅費と判明して精算 |
| 受取地代 (借) 30,000 / 前受地代 (貸) 30,000 | (借) 受取地代 30,000 / (貸) 前受地代 30,000 | 次期分の地代を繰り延べ |
よくある誤答が「切手を購入した」「出張前に概算額を渡した」を選んでしまう形です。それらは期中の取引で、修正記入欄には載りません。修正記入欄にあるのは決算日にやったことだけです。
見越しか繰延べかは「損益計算書欄で増えたか減ったか」で決まる
経過勘定の4種類は、精算表の上では次の2×2に収まります。増減の向きだけ見れば、相手科目まで自動的に決まります。
| 損益計算書欄で増える = 見越し | 損益計算書欄で減る = 繰延べ | |
|---|---|---|
| 費用 | 費用の見越し。修正記入は費用の借方 → 相手は未払◯◯ (負債) | 費用の繰延べ。修正記入は費用の貸方 → 相手は前払◯◯ (資産) |
| 収益 | 収益の見越し。修正記入は収益の貸方 → 相手は未収◯◯ (資産) | 収益の繰延べ。修正記入は収益の借方 → 相手は前受◯◯ (負債) |
試算表欄と損益計算書欄の差額がそのまま修正記入額です。数字を拾って向きを見るだけで答えが出ます。
- 保険料が試算表欄 96,000 (借) → 損益計算書欄 72,000。減ったので繰延べ。差額 24,000 が保険料の貸方に入り、相手は前払保険料 24,000 (貸借対照表欄の借方へ)
- 受取利息が試算表欄 36,000 (貸) → 損益計算書欄 30,000。減ったので繰延べ。差額 6,000 が受取利息の借方に入り、相手は前受利息 6,000 (貸借対照表欄の貸方へ)
- 支払家賃の試算表欄 132,000 が11か月分なら、月額は 132,000 ÷ 11 = 12,000。1か月分を見越すので損益計算書欄は 144,000、未払家賃 12,000 が貸借対照表欄の貸方へ
🔴 「11か月分」のような但し書きを読み飛ばすと、132,000 ÷ 12 = 11,000 と割ってしまいます。割る数は月数であって12ではありません。
売上原価も同じ逆算で解けます。仕入の試算表欄 1,800,000・繰越商品 200,000 で損益計算書欄の仕入が 1,760,000 なら、期末商品棚卸高を X として 200,000 + 1,800,000 − X = 1,760,000。X = 240,000 が貸借対照表欄の繰越商品になります。
試算表の貸借不一致は、差額の「形」で原因が絞れる
決算整理の前段階、試算表そのものが合わないケースも問われます。貸借不一致の原因推定も当てずっぽうではなく、差額の形と方向の2つで絞り込めます。
| 差額の形 | 疑う誤り |
|---|---|
| 差額 = 心当たりのある金額そのもの | 片側の転記漏れ、または片側の二重転記 |
| 差額 = 心当たりの金額の2倍 (差額が偶数) | 貸借を逆に転記した (逆転記は両側を同時に動かすので2倍になる) |
方向は素直に読みます。
- 借方合計が少ない → 借方の転記漏れ、または貸方の二重転記
- 貸方合計が多い → 貸方の二重転記、または借方の転記漏れ
たとえば借方が 9,000 少ないなら「借方に転記すべき 9,000 を転記しなかった」。借方が 16,000 多いなら、その半分の「貸方に転記すべき 8,000 を誤って借方に転記した」を疑います。貸方に 8,000 入らず借方に 8,000 余分に入るので、差は 16,000 になります。
複数の誤りがあっても足し算で確認できます。借方の転記漏れ 35,000 と貸方の二重転記 15,000 があるなら、修正後は借方に 35,000 を足し貸方から 15,000 を引いて一致します。もとの不一致額 50,000 = 35,000 + 15,000 になることが検算になります。
🔴 試算表は「片側だけの誤り」しか見つけられません。 仕訳を借方・貸方とも転記し忘れた場合は両側が同額ずつ減るので、貸借は一致したまま通過します。科目そのものを間違えた場合も同じです。「試算表が合った=仕訳が正しい」ではない、という点は理論問題でも問われます。
なお試算表には、各勘定の借方合計・貸方合計を並べる合計試算表と、その差額である残高を金額の大きい側に書く残高試算表があります。現金勘定の借方合計 850,000・貸方合計 620,000 なら、合計試算表には 850,000 と 620,000 の両方が、残高試算表には差額の 230,000 が借方に載ります。
部分点の取り方と時間配分
第3問は空欄ごとに採点される 部分点方式 が一般的です。最後の当期純利益まで完璧に合わせられなくても、各行の金額が正しければそこに点が入ります。満点狙いで時間を溶かすより、取れる空欄を確実に埋める方が得点期待値は高くなります。
| 優先度 | 埋める対象 | 理由 |
|---|---|---|
| 高 | 単独で解ける決算整理 (減価償却・貸倒引当金・経過勘定) | 他の計算に依存せず確実に得点 |
| 高 | 試算表の金額がそのまま移る行 | 修正がなければ転記だけで正解 |
| 中 | 売上原価まわり (仕入・繰越商品) | しーくりくりしーで機械的に処理 |
| 低 | 当期純利益の最終確定 | 全体が揃わないと出ないため最後 |
60分の時間配分は、第1問の仕訳 (45点) を 15分前後で固め、第3問に 30分前後 を確保するのが目安です。第2問は配点20点なので、第1問・第3問で 80点中の取りやすい部分を先に押さえる順番が安定します。
| 順番 | 問 | 時間目安 |
|---|---|---|
| 1 | 第1問 (仕訳15問・45点) | 15分 |
| 2 | 第3問 (精算表/財務諸表・35点) | 30分 |
| 3 | 第2問 (補助簿/勘定/伝票・20点) | 15分 |
60分の時間配分とCBT画面での操作は、別記事のネット試験 (CBT) 対策を参照してください
精算表問題と財務諸表作成問題の違い
第3問では、精算表ではなく 損益計算書 (P/L) と貸借対照表 (B/S) を直接作る 形式 (財務諸表作成問題) が出ることもあります。土台の決算整理仕訳は共通ですが、出力の形式と表示名が変わります。
| 比較項目 | 精算表問題 | 財務諸表作成問題 |
|---|---|---|
| 出力形式 | 8桁の表に金額を振り分け | P/L と B/S を別々に作成 |
| 繰越商品の表示 | 繰越商品のまま | 「商品」と表示 |
| 売上の表示 | 売上のまま | 「売上高」と表示 |
| 仕入の表示 | 仕入のまま | 「売上原価」と表示 |
| 貸倒引当金・減価償却累計額 | 貸方に並べる | 資産から控除する形式で表示 |
| 利益の名称 | 当期純利益 | 当期純利益 (P/L の末尾) |
表示名と控除形式が変わるだけで、計算の中身は同じです。決算整理仕訳を固めておけば、どちらの形式が来ても対応できます。直前期に両形式を1〜2題ずつ解いておくと、本番で形式の違いに戸惑わずに済みます。
精算表の外側 — 決算の流れは「勘定を2種類に分ける」だけ
精算表が解けるようになると、次に詰まるのが精算表の前後で何をしているのかです。ここは論点が多く見えますが、勘定を2種類に分けるという原則ひとつで整理できます。
| 勘定の種類 | 締め方 | 名前 |
|---|---|---|
| 資産・負債・資本 (純資産) | 残高と反対側に「次期繰越」と記入して締める | 繰越記入 |
| 収益・費用 | 残高を損益勘定へ振り替えて締める | 決算振替仕訳 |
この分け方が英米式決算法です。資産は借方残高なので貸方に「次期繰越」、負債は貸方残高なので借方に「次期繰越」と、必ず残高の反対側に書きます。
🔴 収益・費用の勘定に「次期繰越」は書きません。損益勘定へ振り替えて締めるからです。ここが入れ替えられた選択肢が定番です。
決算振替仕訳は「残高をゼロにする向き」で決まる
売上勘定が貸方残高 800,000 円なら、これをゼロにするには借方に売上を立てるしかありません。
(借) 売上 800,000 / (貸) 損益 800,000
逆に仕入や給料などの費用は借方残高なので、貸方に費用を立てて借方を損益にします。
(借) 損益 ××× / (貸) 仕入 ×××
「残高と反対側に自分を書き、相手は損益」と覚えれば、どちらの向きも迷いません。
残高試算表は「決算整理の前か後か」で別物
- 決算整理前残高試算表 … 決算整理仕訳をする前の残高一覧
- 決算整理後残高試算表 … 売上原価の算定・減価償却・貸倒引当金の設定・費用収益の前払前受未払未収を反映させた後の残高一覧
決算整理後の残高試算表から、収益・費用は損益計算書へ、資産・負債・純資産は貸借対照表へ流れます。つまり財務諸表作成の直接の基礎になるのは「後」のほうです。
再振替仕訳は「期首に前期の経過勘定を戻す」
決算で計上した前払・前受・未払・未収は、翌期首に逆仕訳で戻します。これが再振替仕訳です。
この処理を知らないと、決算整理前の残高が読めなくなります。典型例を 1 つ。
決算日 3/31 の会社が、毎年 8/1 に向こう 1 年分の保険料を支払っている。決算整理前残高試算表の保険料が 480,000 円。
期首 4/1 の再振替で前期末の前払保険料 4 か月分(4〜7 月)が保険料に戻り、さらに 8/1 に12 か月分を支払っています。つまり 480,000 円は 4 + 12 = 16 か月分。
- 1 か月あたり … 480,000 ÷ 16 = 30,000 円
- 当期の費用 … 4 月〜翌 3 月の 12 か月分 = 30,000 × 12 = 360,000 円
🔴 「12 か月分だと思って 480,000 をそのまま使う」のが最大の失点です。支払日が期首と一致しないときは必ず 16 か月を疑う、と覚えておいてください。
貸倒引当金は「評価勘定」なので負債ではない
貸倒引当金は残高が貸方に生じますが、将来の支払義務ではなく資産のマイナスを表す評価勘定です。
貸借対照表では資産の部で、売掛金や受取手形の下に控除する形式で表示します。「負債の部に独立の科目として表示する」は誤りです。
貯蔵品への振替と訂正仕訳
決算日に未使用の郵便切手・収入印紙が残っていたら、費用から資産へ振り替えます。
(借) 貯蔵品 ××× / (貸) 通信費 ×××・租税公課 ×××
郵便切手は購入時に通信費、収入印紙は租税公課で処理されているので、戻す先もその 2 つです。貯蔵品を立てるだけで費用を減らし忘れる誤答が定番なので、必ず両側を動かすと覚えてください。
訂正仕訳も同じ発想です。誤って「(借) 仕入 / (貸) 現金」としたが正しくは「(借) 前払金 / (貸) 現金」だった場合、現金は誤りの仕訳でも正しく計上されているので動かしません。
(借) 前払金 30,000 / (貸) 仕入 30,000
合っている側は触らず、間違っている科目だけを振り替える——これが訂正仕訳の原則です。
この流れを一度通しておくと、簿記3級の予想問題の第3問だけでなく第2問の勘定記入も同じ枠で読めるようになります。
精算表でよくあるミスと対策
最後に、精算表で失点しやすいパターンと対策をまとめます。
| ミス | 起きる理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 売上原価の在庫の向きを逆にする | しーくりくりしーの語呂が曖昧 | 「し→くり」「くり→し」の順を固定 |
| 貸倒引当金で見積額を全額計上 | 差額補充法を忘れる | 「見積額−残高」を計算する癖をつける |
| 減価償却を年額で計上 (期中取得なのに) | 月割を見落とす | 取得日を問題文で先に確認 |
| 経過勘定の前/未の向きを誤る | 4種類が混ざる | 「前=減らす・未=足す」で判定 |
| 当期純利益を貸借逆に書く | 損益計算書側と貸借対照表側で位置が逆 | P/Lは借方・B/Sは貸方と暗記 |
| 新規勘定科目を書く行がない | 修正記入で初出の科目を見落とす | 精算表下部の空行を使う |
これらは知識不足というより「向きの取り違え」が中心です。論点ごとに向きを固定して反復すれば、精算表は得点源に変わります。
難易度と合格率の幅、回ごとのばらつきは、別記事の合格率・難易度を参照してください
精算表対策のチェックリスト
第3問に挑む前に、以下を確認してください。
- 8桁精算表の4欄 (試算表→修正記入→損益計算書→貸借対照表) の流れを説明できる
- 決算整理事項を精算表に書く前に、すべて仕訳化する手順が身についている
- 売上原価 (しーくりくりしー) を仕入の行・売上原価の行の両方で処理できる
- 貸倒引当金を差額補充法で計算できる
- 減価償却を定額法・間接法・月割で計算できる
- 経過勘定4種類 (前払・未払・前受・未収) の向きを判定できる
- 当期純利益を貸借差額で求め、左右の縦合計で検算できる
- 第3問に30分前後を確保する時間配分と、部分点の取り方を決めている
8項目すべてに自信が持てれば、第3問35点は得点の柱になります。精算表は表の埋め方を覚える試験ではなく、決算整理仕訳を正確に書けるかを問う試験です。仕訳を土台に、転記・集計・検算を機械的にこなせる状態を目指してください。
出典:











