「税・その他は範囲が広くて手がつけられない」——そう感じて後回しにする受験者が多い科目です。しかし実際には、出題されるジャンルと論点はほぼ固定されており、パターンを押さえれば5問は確実に狙えます。全体8問の中から業法・法令で取りこぼした分を補う科目として機能させるのが合格設計の鍵です。
この記事で分かること
- 税・その他8問の現実的な目標得点(5問)と各ジャンルの内訳
- 不動産取得税・固定資産税・印紙税・登録免許税の頻出数値と覚え方
- 5問免除科目(統計・地価公示・景表法等)の直前対策タイミング
- 景品表示法・住宅金融支援機構の典型パターン
- 残り時間別の優先順位
独学の本命テキスト
宅地建物取引士対策の土台になる、解説と演習のバランスがよい定番テキストがこちらです。
※価格・評価は変動します。改訂年(2024年以降推奨)を商品ページで確認してください。上記は Amazon アソシエイトのリンクです。
税・その他8問の目標は「5問」
宅建試験の得点設計の基本は、業法20問で17〜19問、法令8問で5〜6問、税・その他8問で5〜6問を確保し、権利関係14問の取りこぼしを補う形です。税・その他で5問取れれば合格ライン(33〜38点前後)への貢献として十分です。
8問の内訳は例年おおむね以下の通りです:
| ジャンル | 出題数の目安 | 目標得点 |
|---|---|---|
| 税法(国税・地方税) | 2問 | 2問 |
| 統計 | 1問 | 1問 |
| その他(地価公示・景表法・住宅金融支援機構・土地建物) | 約5問 | 2問 |
税法:数値を暗記すれば2問確保できる
税法は毎年国税・地方税から各1問が出題されます。問われる税目は複数ありますが、頻出の組み合わせは固定されています。
固定資産税(地方税)
固定資産税は最頻出の税目の一つです。
- 課税基準日: 毎年1月1日現在の登記簿上の所有者(売買後でも1月1日時点の所有者が納税)
- 住宅用地の軽減: 小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は課税標準が6分の1に軽減
- 一般住宅用地(200㎡超の部分)は課税標準が3分の1に軽減
- 新築住宅の減額: 居住用120㎡相当分の税額が2分の1(一定期間)
試験では「いつの所有者が納税するか」「軽減割合は何分の何か」を問う選択肢が多いです。
不動産取得税(地方税)
- 課税タイミング: 不動産を取得したとき(登記不要、無償取得も課税対象)
- 住宅用家屋の軽減: 床面積が50㎡以上240㎡以下の新築住宅は課税標準から一定額が控除される
- 宅地の特例: 取得した宅地の課税標準は固定資産税評価額の2分の1(令和9年3月31日まで)
課税標準の特例 — 新築と既存で控除額の決まり方が違う
控除額そのものが問われます。新築は一律、既存は新築時期に応じた額という違いが軸です。
| 取得する住宅 | 床面積要件 | 控除額 | 自己居住用限定か |
|---|---|---|---|
| 新築住宅 | 50㎡(戸建以外の貸家住宅は40㎡)以上240㎡以下 | 1,200万円(1戸につき) | 限定なし(貸家用も可) |
| 認定長期優良住宅(新築) | 同上 | 1,300万円 | 限定なし |
| 既存(中古)住宅 | — | 新築された時期に応じた額(新しいほど大きい) | 自己居住用に限る |
税額は「(固定資産税評価額 − 控除額)× 3%」で計算します。
🔴 新築住宅の特例は自己居住用に限定されません。貸家用の新築住宅も、床面積40㎡以上240㎡以下を満たせば適用されます。一方既存住宅の特例は自己の居住の用に供する場合に限られ、賃貸用には適用されません。この非対称が設問になります。
🔴 既存住宅の控除額を「一律1,200万円」とする選択肢は誤りです。新耐震基準に対応する時期以降に新築されたものほど控除額が大きくなる仕組みです。認定長期優良住宅は一般の新築住宅より100万円上乗せの1,300万円、と覚えると取り違えません。
印紙税(国税)
- 課税文書: 売買契約書・請負契約書・金銭消費貸借契約書などが対象(賃貸借契約書は原則非課税)
- 契約金額別の税額(主な区分):
- 1万円未満: 非課税
- 100万円超500万円以下: 2,000円
- 500万円超1,000万円以下: 1万円
- 1,000万円超5,000万円以下: 2万円
- 5,000万円超1億円以下: 6万円
- 金額の記載がない場合: 一律200円
- 同一内容の契約書を2通作成した場合、両方とも課税される(売主・買主が原本を1通ずつ持つケースで各通に貼付が必要)
記載金額の判定 — 税率表より「いくらと書いてあることになるか」が問われる
印紙税の出題は税額表の暗記よりも、その文書の記載金額をいくらとみなすかに集中します。判定は次の表でほぼ尽きます。
| 文書 | 記載金額 |
|---|---|
| 土地の贈与契約書 | 記載金額なし(200円)。価額が書いてあっても対価ではない |
| 負担付贈与契約書 | 負担の価額 |
| 交換契約書(双方の価額を記載) | 高い方の金額(交換差金のみの記載ならその差金額) |
| 契約金額を増額する変更契約書 | 増加額 |
| 契約金額を減額する変更契約書 | 記載金額なし(200円)。変更後の総額ではない |
| 土地の賃貸借契約書 | 後日返還されないことが明らかな金額(権利金など)。賃料や返還予定の敷金・保証金は含まない |
🔴 課税されるのは「紙の文書の作成」に対してです。電磁的記録(電子契約)で締結した場合は課税文書の作成がないため、印紙税は課されません。
🔴 課税文書かどうかは文書の名称ではなく記載内容の実質で判定します。「仮契約書」「予約契約書」「念書」でも、契約の成立等を証明する目的で作られていれば課税対象です。
なお賃貸借契約書は原則非課税ですが、土地の賃貸借契約書は第1号の2文書として課税対象です(建物の賃貸借契約書は非課税)。「賃貸借は全部非課税」と覚えると外します。
登録免許税(国税)
- 課税タイミング: 不動産の登記を行うとき
- 住宅用家屋の軽減: 所有権移転登記(売買)は税率軽減特例あり(床面積要件・取得後1年以内の登記が条件)
譲渡所得(所得税)— 起点は「譲渡した年の1月1日」
土地建物等を売った利益は他の所得と切り離して課税されます(分離課税)。長期か短期かは、譲渡した年の1月1日時点の所有期間で判定します。売った日から数えるのではありません。
| 区分 | 所有期間(譲渡した年の1月1日時点) | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 所得税15%(+復興特別所得税)+ 住民税5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 所得税30% + 住民税9% |
短期の方が税率は高く設定されています(投機的な売買を抑える趣旨)。また土地建物等の譲渡損失は、原則として他の所得と損益通算できません(居住用財産の特例がある場合を除く)。
計算で問われるのは次の 2 点です。
- 概算取得費: 取得費が不明な場合(実際の取得費が収入金額の5%を下回る場合も同様)は、譲渡収入金額の5%を取得費にできます。10%ではありません
- 譲渡費用: 仲介手数料・売買契約書の印紙税・土地を売るための建物取壊し費用などが含まれます。「仲介手数料は含まれない」は誤りです
居住用財産の特例 — 併用できる組合せが問われる
自宅を売ったときの特例は 3 つ押さえます。所有期間の要件がそれぞれ違う点が出題の中心です。
| 特例 | 所有期間の要件 | 内容 |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除(措法35条) | 問わない(短期でも可) | 譲渡所得から3,000万円を控除 |
| 10年超の軽減税率(措法31条の3) | 10年超 | 課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は所得税10%(住民税4%)、超える部分は15%(住民税5%) |
| 買換え特例(措法36条の2) | — | 課税を将来へ繰り延べる |
🔴 併用の可否がそのまま設問になります。
- 3,000万円特別控除と10年超の軽減税率は併用できます(控除後の金額に軽減税率を適用)
- 買換え特例は選択適用で、3,000万円特別控除とも軽減税率とも重ねられません
3,000万円特別控除には、次の制限もあります。
- 配偶者・直系血族・生計を一にする親族・同族会社等への譲渡は対象外(特殊関係者への譲渡)
- 前年・前々年にこの特例または居住用買換特例を受けている場合は適用できない(3年に1回)
- 所有期間10年超の軽減税率は「6,000万円を超える部分まで一律10%」ではない(超えた部分は15%)
なお、その年に複数の特別控除に該当しても、特別控除額の合計は年5,000万円が限度です(措法36条)。収用交換等の5,000万円控除・居住用財産の3,000万円控除・特定土地区画整理事業等の2,000万円控除などを足し上げても、上限は5,000万円です。
譲渡損失についても例外があります。所有期間5年超の居住用財産を売り、償還期間10年以上の住宅ローンで一定の買換資産(家屋の床面積50㎡以上)を取得して居住した場合等は、譲渡損失を他の所得と損益通算でき、控除しきれない分は翌年以後3年間繰り越せます(措法41条の5)。5年間ではありません。
学習のコツ: 税法は税目ごとに「いつ・誰に・いくら」の3点を整理する表を自作すると比較しやすくなります。数値を混同する受験者が多いため、軽減割合(6分の1・3分の1・2分の1)の対応関係を正確に区別することが得点の分かれ目です。
統計:直前(9〜10月)に増減方向だけ確認する
統計は毎年1問出題されますが、問われる数値は毎年変わります。住宅着工件数・地価変動率・不動産取引件数などが対象です。
対策タイミング: 通年の学習は不要です。試験直前(9〜10月)に各種統計の最新値を確認し、前年比での増減方向だけ把握します。「増えているか・減っているか」を選ぶ選択肢形式が多く、数値の絶対値を暗記する必要はほとんどありません。
注意: 直前対策をしていないと確実に落とす1問です。直前期の数週間で最新の国土交通省・不動産適正取引推進機構の公表データを確認する時間を確保してください。
その他:典型パターンを押さえれば拾える
5問免除科目(登録講習修了者が免除される問題46〜50番)と重複するジャンルが多く、免除なし受験者にとっては差をつけるチャンスです。
地価公示法
- 公示主体: 国土交通省(土地鑑定委員会が評価)
- 公示内容: 毎年1月1日時点の標準地の正常な価格
- 活用目的: 一般の土地取引の指標、公共用地取得の基準
- 都市計画区域外でも対象になることに注意
不動産鑑定評価基準 — 3手法で試算し、調整して1つの評価額にする
地価公示法とセットで問われます。骨格は「3つの手法 → 3つの試算価格 → 調整して鑑定評価額」という一本道です。手法と試算価格の名前の対応が最も問われます。
| 手法 | 何から求めるか | 試算価格の名前 |
|---|---|---|
| 原価法 | 再調達原価に減価修正を加える | 積算価格 |
| 取引事例比較法 | 取引事例に事情補正・時点修正を行い、地域要因・個別的要因を比較 | 比準価格 |
| 収益還元法 | 将来生み出す純収益の現在価値の総和 | 収益価格 |
🔴 「収益還元法で求めた価格は積算価格」は誤りです。積算価格は原価法のものです。
原則として3手法を併用し、それぞれの試算価格を調整して鑑定評価額を決定します。この試算価格の調整は、各試算価格の再吟味と、説得力の違いに応じた重み付けを行う作業です。🔴 単なる算術平均ではありません。最も高い価格や最初に計算した価格を機械的に採用するものでもありません。
収益還元法には、一期間の純収益を還元利回りで還元する直接還元法と、複数期間の純収益および復帰価格を現在価値に割り引いて合計するDCF法があります。🔴 収益還元法は賃貸用不動産だけのものではなく、自用の不動産にも適用できます(賃貸を想定した純収益で試算する)。
価格の種類は 4 つで、市場性の有無で分かれます。
| 価格 | 対象 |
|---|---|
| 正常価格 | 市場性を有する不動産の、合理的な市場で形成されるであろう市場価値 |
| 限定価格 | 市場性を有するが市場が相対的に限定される場合(隣接不動産の併合、借地権者による底地の取得など) |
| 特定価格 | 法令等による社会的要請を背景とする場合(証券化対象不動産の投資採算価値など) |
| 特殊価格 | 市場性を有しない不動産(文化財の建造物、宗教建築物など) |
そして価格判定の基本が最有効使用の原則です。最有効使用とは、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法をいいます。🔴 所有者個人の主観的な希望ではありません。また現実の使用方法が最有効使用とは限らない(不合理な使用や個人的事情により、十分な効用を発揮していないことがある)点も問われます。
税・その他 65問で、取得・保有・譲渡の3タイミングを通しで確かめる →
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
宅建業者の広告に関する規制として出題されます。
- 不当表示の禁止: 優良誤認表示・有利誤認表示が禁止される
- 公正競争規約: 不動産の表示に関する公正競争規約(徒歩分数の計算・写真の取扱いなど)が頻出
- 徒歩1分=80m換算が基準(端数は切り上げ)
住宅金融支援機構
- 主な業務: 民間金融機関が貸し付けた住宅ローンの債権を買い取って証券化する(フラット35の仕組み)
- 直接融資は原則として行わず、証券化支援業務が主体
- 団体信用生命保険: 機構が窓口となる保険で、借入者が死亡・高度障害になった場合にローン残高が弁済される
土地・建物に関する知識
宅地の造成・土地の形状・建物構造に関する問題です。専門知識というより「常識的な理解」で解ける問題が多く、深追いせず基本的な特徴だけ押さえます。
5問免除の受験者はどう考えるか
登録講習修了者(5問免除)は45問を解きます。試験問題では問46〜50番が免除対象となり、統計・地価公示・景表法・住宅金融支援機構・土地建物のジャンルが含まれます。
免除なし受験者との比較では、この5問分の学習コストが余分にかかります。免除を受けている人向けの得点設計は次の通りです。
| 得点源 | 目標得点 | 対策の優先度 |
|---|---|---|
| 税法(不動産取得税・固定資産税・印紙税・登録免許税) | 2問 | 高(数値暗記で2問確実) |
| 免除対象の「その他」から非免除問題が残る場合 | 1〜2問 | 中(景表法・地価公示の典型) |
| 合計目標 | 3〜4問 | — |
免除を受けている受験者は、税法2問を確実に取り、残りの「その他」問題から1〜2問を拾うことで、業法・法令と合わせた合格ライン確保を設計できます。
残り時間別の優先アクション
| 残り時間 | 税法 | 統計 | その他 |
|---|---|---|---|
| 2ヶ月以上 | 各税目の概要を理解する | 後回しでよい | 地価公示・景表法の典型を確認 |
| 1ヶ月 | 頻出数値を暗記し問題で確認 | 後回しでよい | 住宅金融支援機構の仕組みを整理 |
| 2週間 | 数値を再確認・紛らわしい特例を整理 | 後回しでよい | 過去の典型問題を1周 |
| 直前3日 | 固定資産税の課税基準日と軽減割合を最終確認 | 最新統計の増減方向を確認 | 景表法の徒歩換算を再確認 |
よくある失敗パターンと回避策
失敗1:税法の数値を混同する 不動産取得税の床面積要件(50〜240㎡)と固定資産税の住宅用地軽減(200㎡以下)は混乱しやすいです。「不動産取得税は取得した建物、固定資産税は土地の広さ」と対象を意識して整理します。
失敗2:統計を通年で学習しようとする 試験前に出版される速報資料などを4月から追いかけても、数値が変わり続けて無駄になります。直前1〜2週間で最新値を一気に確認するほうが効率的です。
失敗3:その他ジャンルを深追いして時間を使いすぎる 景表法や地価公示は細かい条文まで掘り下げると時間がかかります。典型問題のパターンを押さえる程度で十分で、難問は業法や法令で補います。
まとめ
税・その他8問は「範囲が広い」という印象とは異なり、ジャンルが固定されてパターンが繰り返されます。税法(不動産取得税・固定資産税・印紙税・登録免許税)の数値暗記で2問、統計は直前に1問、景表法・地価公示・住宅金融支援機構の典型パターンで2問——合計5問を設計の目標として、業法・法令と合わせて合格ラインを確保してください。
次のアクション: 固定資産税の「課税基準日」「住宅用地の軽減割合」「新築住宅の減額期間」の3点をA4一枚にまとめ、翌日に問題を解いて確認しましょう。
出典:
- 一般財団法人 不動産適正取引推進機構 — 宅地建物取引士資格試験 案内
- 地方税法・所得税法 — 税・その他の出題範囲











