「衛生管理者にも計算問題があるらしい」と聞いて身構える人は多いのですが、結論から言うと第一種衛生管理者は計算より数値暗記が中心の試験です。数学に苦手意識があっても、ここで合否が決まることはほとんどありません。出てくる計算は限られたパターンだけで、しかも公式さえ覚えれば確実に解ける「取りやすい問題」です。
第一種は5科目・44問・四肢択一で、合格基準は各科目40%以上かつ全科目合計60%以上。計算問題は全体のごく一部で、大半は法令の数値や用語、健康障害の知識を問う暗記問題です。だからこそ、数少ない計算問題を落とさず確実に拾えば、それがそのまま合格ラインへの上乗せになります。
この記事では、出題される計算を気積・換気量・WBGT・照度・有害物濃度といった限定的なテーマに絞り、実際の数字で解く手順まで示します。公式を1枚にまとめて、捨てずに得点源へ変えましょう。
この記事で分かること
- 第一種は「計算より数値暗記が中心」という正直な全体像
- 気積(1人あたり10㎥)の必要人数を実際の数字で解く手順
- 換気量の公式 Q=Nk÷(Ci-Co) と具体的な数値例
- WBGTの屋内式・屋外式の違いと混同しないための覚え方
- 単位換算やWBGTの屋内外の違いでミスしないコツ
- 計算が苦手でも捨てずに拾うための優先順位
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まず大前提:計算問題は「少数・公式暗記」で十分
衛生管理者の計算は、数学的なひらめきを要する問題ではありません。決まった公式に数字を当てはめるだけで答えが出ます。出題テーマも次のように限られています。
| テーマ | 計算内容 | 主な科目 |
|---|---|---|
| 気積・換気量 | 1人あたりの気積、必要換気量Q=Nk/(Ci-Co) | 有害業務以外の労働衛生 |
| WBGT | 暑熱環境の指標(屋内/屋外で式が異なる) | 労働衛生 |
| 照度 | 作業面の明るさ(単位ルクス) | 労働衛生 |
| 有害物濃度 | 気中濃度、許容濃度との比較 | 有害業務 |
ポイントは、これらを「捨てる候補」にしないこと。暗記項目は数が多く取りこぼしも出ますが、計算は公式が固定なので、覚えてしまえば本番でも確実に得点できます。
気積を実際の数字で解く
労働衛生でいちばん馴染みやすいのが気積の考え方です。屋内作業場では、労働者1人あたりの気積を10㎥以上確保することが求められます。気積は「部屋の容積から、設備などが占める部分を除いた空間」を指します。
これを使って、収容できる人数を計算してみます。
例題:設備などを除いた気積が200㎥の作業室がある。1人あたり10㎥を確保するとき、何人まで働かせられるか。
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解き方:1人あたり10㎥が必要なので、 200 ÷ 10 = 20人
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したがって、この部屋では20人までが基準を満たします。
逆に「15人が働く部屋に必要な気積は?」と問われれば、15 × 10 = 150㎥以上、と掛け算に切り替えるだけです。「気積 ÷ 10 = 人数」「人数 × 10 = 必要な気積」の2方向を、上の例の数字で押さえておけば、気積の設問はほぼ取れます。注意点は、気積に天井の高い部分(床面から一定の高さを超える空間)を含めない扱いなど、「何を容積に数えるか」のルールです。公式そのものより、ここで取り違えやすいので押さえておきます。
換気量の公式と数値例
換気量で最重要の公式は以下です。
Q = Nk ÷ (Ci − Co)
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- Q:必要換気量(㎥/h) - N:在室者数(人) - k:1人あたりのCO₂発生量(L/h) - Ci:室内の許容CO₂濃度(1000 ppm = 0.1%) - Co:外気のCO₂濃度(約400 ppm = 0.04%)
数値例で確認しましょう。
例題:在室者30人、1人あたりのCO₂発生量を20 L/h、室内許容濃度1000 ppm、外気濃度400 ppm として必要換気量を求めよ。
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Q = 30 × 20 ÷ (1000 − 400) [ppm単位で計算する場合]
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単位を合わせて計算すると Q = 1,000 ㎥/h(近似値。公式と単位のセット確認が重要)
この式から分かる重要な方向感:
- 人数Nが増えれば必要換気量Qも増える(分子が大きくなる)
- 許容濃度Ciを低く設定すると(Ci−Co)が小さくなりQが増える
- 外気CO₂濃度Coが上がると(Ci−Co)が縮まりQが増える
「増えるのか減るのか」を問う設問では、この比例・反比例の方向感を掴んでおくだけで正解を導けます。
WBGTの屋内式・屋外式を対比で覚える
WBGTは暑熱環境のリスク指標で、屋内(または日射のない屋外)と、日射のある屋外で計算式が異なるのが最大の注意点です。
| 環境 | WBGT計算式 |
|---|---|
| 屋内(日射なし) | WBGT = 0.7 × 自然湿球温度 + 0.3 × 黒球温度 |
| 屋外(日射あり) | WBGT = 0.7 × 自然湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度 |
数値例で確認:
屋内:自然湿球温度28℃、黒球温度32℃ の場合
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WBGT = 0.7 × 28 + 0.3 × 32 = 19.6 + 9.6 = 29.2℃
屋外(日射あり):自然湿球温度28℃、黒球温度32℃、乾球温度35℃ の場合
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WBGT = 0.7 × 28 + 0.2 × 32 + 0.1 × 35 = 19.6 + 6.4 + 3.5 = 29.5℃
覚え方のコツ:屋外式は乾球温度の係数0.1が追加されて3つになる。係数の合計は両式とも1.0。
照度の基準値と設問の読み方
照度は作業面の明るさの指標(単位ルクス)。作業の種類に応じた最低限の基準を押さえます。
| 作業区分 | 基準照度 |
|---|---|
| 精密な作業 | 300ルクス以上 |
| 普通の作業 | 150ルクス以上 |
| 粗な作業 | 70ルクス以上 |
設問では「この照度は基準を満たしているか」という判定問題が多いため、数値を設問の作業区分と照合できれば解けます。
有害物濃度の計算ポイント
有害物濃度の計算は、第一種特有の有害業務分野で出ます。主なポイントは次のとおり。
- 気中の有害物濃度を計算する(ppm または mg/m³)
- 計算した濃度と許容濃度を比較して「超えているか否か」を判定する
- 単位換算(ppm⇔mg/m³)に注意する
単位換算の落とし穴は、気体の濃度を体積比(ppm)で表したものと質量体積比(mg/m³)で表したものを混同することです。問題文の単位と答えを求める単位が一致しているかを、解答前に必ず確認してください。
計算問題でよくあるミスと対策
公式を覚えても、次の取り違えで失点する人が多いので先に潰しておきます。
| よくあるミス | 対策 |
|---|---|
| 気積に含めない空間を数えてしまう | 「何を容積に数えるか」のルールを確認(天井の高い部分の扱いなど) |
| 単位の換算ミス(ppmとmg/m³など) | 公式と単位を必ずセットで暗記し、答えの単位を最後に確認 |
| WBGTの屋内用・屋外用の式を混同 | 2つの式を並べて、使う測定値ごとに対比 |
| 換気量Q式でCiとCoを逆にする | 「許容が分子・差が分母」と唱えて確認 |
| ÷と×を逆にする(気積・換気量) | 「人数を求めるのか、必要量を求めるのか」を先に確認 |
残り期間別の優先順位
| 残り期間 | 気積・換気量 | WBGT | 照度・有害物濃度 |
|---|---|---|---|
| 2ヶ月以上 | 公式Q式と数値例で手順を固める | 屋内/屋外の式を表で整理 | 基準値と単位を確認 |
| 1ヶ月 | 数値を変えて反復練習 | 2つの式を暗記・係数の合計確認 | 単位換算を練習 |
| 2週間 | 例題を解き直す | 式の取り違えを点検 | 演習で手順確認 |
| 1週間 | 数字を変えて最終確認 | 屋内/屋外を最終確認 | 公式の総点検 |
計算が苦手なら、まず気積から着手します。式が単純で、1問取れれば手応えがつき、他の計算にも取り組みやすくなります。次に換気量Q式、その後WBGTの順が無理のない流れです。
まとめ
第一種衛生管理者の計算は、量も難度も限定的です。気積(÷10で人数)・換気量Q=Nk/(Ci-Co)・屋内外のWBGT式・照度基準値を覚え、各テーマで一度は実際の数字を当てはめておけば、本番でも確実に拾えます。
次の一手は、この記事の気積の例題(200㎥÷10=20人)を、数字を変えて3問だけ自作して解くこと。慣れたら下のオリジナル予想問題で、換気量やWBGTも含めて手順を確認してください。
第一種衛生管理者オリジナル予想問題160問で計算の手順を確認 →
出典:
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会 衛生管理者試験 — 試験概要・受験案内
- 労働安全衛生法 (昭和 47 年法律第 57 号)
- 労働安全衛生規則 — 屋内作業場の気積・換気基準、WBGT基準









































































