結論:計算問題は全部捨てず、「取れる型」だけ先に拾う
第二種電気工事士の学科試験(CBT方式)は50問・合格ライン30問(60%)。問1〜30が一般問題(30問)、問31〜50が配線図問題(20問・全体の40%)という構成です。一般問題の中に計算問題が10〜12問程度含まれており、全部捨てると残り38〜40問で79%以上の正答率が必要になります。
計算が苦手な人に伝えたいのは、計算問題を完璧にする必要はないけれど、全捨ては60点ラインを不安定にするということです。
公式を大量に暗記するより、頻出の型を絞り、単位から公式を選び、同じ手順で3回解く方が点になります。特にオームの法則、電力、合成抵抗、電圧降下の4系統は、苦手な人でも優先して拾いたい範囲です。
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学科試験の構成と計算問題の位置づけ
| 区分 | 問番号 | 問数 | 計算問題の比率 |
|---|---|---|---|
| 一般問題 | 問1〜30 | 30問(60%) | 約10〜12問(一般問題の約35〜40%) |
| 配線図問題 | 問31〜50 | 20問(40%) | 計算要素は少ない |
| 合計 | — | 50問 | 合格ライン30問(60%) |
計算問題を全捨てした場合:残り38〜40問から30問正解が必要になり、正答率79〜79.5%を維持し続けないと合格できません。オームの法則など基本型を4〜5問拾えれば、それだけで正答率のハードルが大幅に下がります。
まず捨てない4つの型
| 型 | 覚えること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| オームの法則 | V = IR | V、A、Ωの単位を見落とす |
| 電力 | P = VI、P = I^2R | W、kW、Whを混同する |
| 合成抵抗 | 直列は足す、並列は逆数 | 並列を直列のように足してしまう |
| 電圧降下 | 電流、抵抗、長さの関係 | 問題文の条件を拾いきれない |
まずはこの4系統だけで構いません。電気に強い人のように全範囲をきれいに理解しようとするより、試験で点にしやすい型を先に固める方が、短期間では効きます。
4系統の先も「合成 → 電流 → 電力」の3手で終わる
4系統を固めた次に出てくるのが、三相交流、コンデンサ、RL・RLC回路です。名前が並ぶと別物に見えますが、手順は4系統とまったく同じで、変わるのは最初の「合成のしかた」だけです。
| 手順 | やること | 式 |
|---|---|---|
| ① 合成する | バラバラの素子を1つの値にまとめる | 型は4通りだけ(下表) |
| ② 電流を出す | まとめた値で電圧を割る | I = V ÷ Z |
| ③ 電力を出す | 電流の2乗に抵抗を掛ける | P = I²R |
増えているのは①だけです。②と③はオームの法則と電力そのもので、4系統でやったことと変わりません。①の型を4つ押さえれば、基礎理論の計算はほぼ全部この3手に乗ります。
①の合成は4通りしかない
| 合成するもの | 直列のとき | 並列のとき |
|---|---|---|
| 抵抗 | 足す | 積÷和(3個以上は逆数の和) |
| 静電容量(コンデンサ) | 積÷和 | 足す |
| 抵抗とリアクタンス | 足さずに Z = √(R² + X²) | — |
| 三相の負荷 | √3 が付く場所で決まる(後述) | — |
コンデンサは抵抗と直列・並列が逆です。ここは理屈より先に入れ替えて覚えてしまって構いません。4μFと6μFの合成静電容量は、並列なら 4+6 = 10μF、直列なら (4×6)÷(4+6) = 2.4μF。同じ容量をn個直列にすると合成静電容量は 1/n 倍になります(6μFを3個直列 → 2μF)。
直列部分と並列部分が混ざる問題も、内側から順に潰すだけです。4μFを2個直列にして、その両端に3μFを並列なら、まず直列部分が (4×4)÷(4+4) = 2μF、これに3μFを足して5μFになります。
交流は「足さずに三平方」
抵抗8Ωと誘導性リアクタンス6ΩをつないだRL直列回路に100Vを加えたときの電流は、8+6=14で割るのではありません。
- Z = √(8² + 6²) = √100 = 10Ω
- I = 100 ÷ 10 = 10A
RLC直列回路になっても、増える手順は1つだけです。誘導性と容量性を先に引き算してから三平方に入れます。R=8Ω、XL=10Ω、XC=4Ω なら X = 10 − 4 = 6Ω で、Z = √(8² + 6²) = 10Ω。
| 聞かれ方 | 出し方 | 間違えやすい形 |
|---|---|---|
| インピーダンス | Z = √(R² + X²) | R と X を足す/XL と XC を足す |
| 力率 | cosφ = R ÷ Z | R÷X で計算する、X÷Z(無効率)を答える |
| 有効電力 | P = I²R(抵抗分だけ) | V×I の皮相電力を答える |
| 直列共振 | XL = XC が打ち消し合って Z = R | 電流が0になると考える |
有効電力で外す人が多いのは、リアクタンスは電力を消費しないという一点を飛ばすからです。6Ωと8Ωを直列にして200Vなら、Z=10Ω、I=20A、P = 20²×6 = 2400W。ここに 20²×8 を足してはいけません。
直列共振も同じ考え方の延長です。XL と XC が等しくなって打ち消し合うので、Zは残った R だけの最小値になり、電流は最大、力率は1になります。20Ωに100Vなら 100÷20 = 5A です。「共振だから電流0」は並列共振との混同です。
三相は √3 が付く場所が Δ と Y で入れ替わる
三相が苦手な最大の理由は、√3 を掛けるのか割るのかが毎回わからなくなることです。覚えるのは「Δは電流側、Yは電圧側」の1行だけで足ります。
| 線間電圧と相電圧 | 線電流と相電流 | |
|---|---|---|
| デルタ結線(Δ) | 等しい | 線電流 = √3 × 相電流 |
| スター結線(Y) | 相電圧 = 線間電圧 ÷ √3 | 等しい |
どちらも「√3 が付くのは片方だけで、もう片方は等しい」という同じ形です。付く先がデルタ結線は電流、スター結線は電圧、それだけの違いです。
- デルタ結線・線間200V・各相10Ω → 各相に200Vがそのままかかるので1相 200²÷10 = 4000W、3相で12000W
- スター結線・線間200V・各相20Ω → 相電圧 200÷1.73 ≈ 115.6V、線電流=相電流 ≈ 115.6÷20 ≈ 5.77A
- デルタ結線で相電流10A → 線電流 = 1.73×10 = 17.3A
ここから頻出の結論が2つ出ます。同じ電源・同じ抵抗でデルタ結線からスター結線に変えると全消費電力は 1/3 倍になります。相電圧が 1/√3 になり、電力は電圧の2乗に比例するためです。そしてデルタ結線をスター結線に等価変換すると1相の抵抗は 1/3(30Ω → 10Ω)。どちらも「1/√3倍」と答えるのが典型的な外し方で、2乗で効くことを見落とした形です。
電圧降下と電力損失は「電線が何本効くか」で係数が決まる
電圧降下は4系統で挙げた型ですが、単相と三相で係数が変わるところまで押さえてください。
| 配電方式 | 電圧降下 | 電力損失 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | e = 2rI(往復2本分) | P = 2rI² |
| 三相3線式 | e = √3 rI | — |
- 単相2線式・r=0.1Ω・20A → e = 2×0.1×20 = 4V(片道だけの2Vが誤答)
- 三相3線式・r=0.2Ω・25A → e = 1.73×0.2×25 = 8.65V(√3を掛け忘れた5Vが誤答)
- 単相2線式・r=0.2Ω・10A → 損失 P = 2×0.2×10² = 40W
電力損失は電圧降下から検算できます。e = 2rI = 4V なので P = e×I = 4×10 = 40W で一致します。2通りの経路で同じ答えが出る型は、本番の見直しで使えます。
電線の抵抗は R = ρL/A —「直径2倍」は断面積4倍
抵抗率(固有抵抗)を使う問題は、数値を代入させるより「何倍になるか」を聞いてきます。押さえるのは2行です。
- 抵抗は長さに比例し、断面積に反比例する
- 断面積は直径の2乗に比例する(A = πd² ÷ 4)
| 条件 | 抵抗 |
|---|---|
| 長さ2倍・断面積2倍 | 2 × 1/2 = 1倍(変わらない) |
| 長さ2倍・直径2倍 | 2 × 1/4 = 1/2倍 |
「断面積2倍」と「直径2倍」は別物です。直径が2倍なら断面積は4倍なので抵抗は 1/4 になります。ここを取り違えると答えが4倍ずれます。あわせて、金属導体の抵抗は温度が上がると増加する(「変化しない」は誤り)点も出ます。
内部抵抗とブリッジは、知っていれば数秒で終わる
出題数は多くありませんが、知識の有無がそのまま得点差になる型です。
電池の内部抵抗は、外部抵抗と直列につながっているだけです。I = E ÷ (r + R)。起電力12V・内部抵抗2Ω・外部抵抗4Ωなら 12÷6 = 2A。電池を同じ向きに直列にすると、起電力も内部抵抗も足し算になります(2V・0.5Ωを3個で 6V・1.5Ω)。
ホイートストンブリッジの平衡条件は「対辺の抵抗の積が等しい」で、電源電圧には関係しません。実戦で効くのは、平衡しているとき検流計の電流が0なので中央の枝を取り除いて考えてよいという点です。2Ωと4Ωの辺、3Ωと6Ωの辺なら 2/4 = 3/6 で平衡しているので、6Ωと9Ωの並列とみて (6×9)÷(6+9) = 3.6Ω と出せます。
電力量と熱量は「秒に直す」だけ
電熱器の問題は、電力の式を覚えていても単位で外します。押さえるのは1行です。
W × 秒 = J(ジュール)。1Wh = 3600J = 3.6kJ。
- 1kWの電熱器を5時間 → 1000W ×(5×3600)秒 = 18,000,000J = 18,000kJ(1kW×5h = 5kWh = 5×3600kJ でも同じ)
- 100V・500Wの電熱器を100V電源に2時間 → 500W × 2h = 1000Wh(定格電圧と電源電圧が同じなので定格どおり消費します)
- 200V・3kWの電熱器を30分 → 3000W × 1800秒 = 5400kJ
「kJで答えよ」なら秒に直す、「Whで答えよ」なら時間のまま。問われている単位を先に見るのが、この型のすべてです。30分を0.5時間のまま秒の式に入れる、が最頻出の外し方です。
水を温める問題が混ざることもありますが、こちらは電気の式ではなく Q = m × c × ΔT です。水2kgを15℃から35℃なら ΔT = 20K で、2 × 4.2 × 20 = 168kJ。
なお電熱器は純抵抗なので、消費電力は P = I²R とも P = V²÷R とも書けます。電圧の2乗に比例する(反比例ではない)点と、純抵抗なので周波数には無関係な点が問われます。
基礎理論68問で「合成 → 電流 → 電力」の3手を通しで確かめる →
計算問題は「単位 → 公式 → 代入」の順で解く
計算が止まる人は、問題文を読んだ瞬間に公式を探そうとします。先に見るべきなのは単位です。
| 問題文に出る単位 | 疑う公式・考え方 |
|---|---|
| V、A、Ω | オームの法則 |
| W、kW、Wh | 電力・電力量 |
| Ωが複数 | 直列・並列の合成抵抗 |
| 電線の長さ、電流、抵抗 | 電圧降下 |
単位を丸で囲む、使う公式を1つ決める、代入する数字だけをメモに出す。この順番にすると、長い問題文でも迷いにくくなります。
本番での解く順番
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 一目で公式が決まる | 先に解く | 短時間で点にしやすい |
| 数値は多いが型は分かる | 印をつけて後で解く | 最初の1周で時間を溶かさない |
| 配線図と絡む | 設問を先に読み、必要部分だけ見る | 図全体を追うと時間がかかる |
| 公式が浮かばない | いったん飛ばす | 他の暗記問題・配線図問題を先に取る |
1問に長く止まるより、50問全体を一度通す方が大切です。計算問題は「解けるものから拾う」「迷うものは戻る」と決めておくと、メンタルも崩れにくくなります。
練習は答え暗記ではなく、数値違いで反復する
計算問題は、答えを覚えてしまうと本番で数値が変わった瞬間に止まります。反復するときは、次の5点を毎回同じ順番で確認してください。
- 問題文の単位を拾う
- 使う公式を1つ決める
- 数値を代入する
- 桁と単位を確認する
- 選択肢の近い数字を比べる
同じ型を3回解くときも、2回目以降は数値を変える、選択肢を隠す、途中式だけ見て解くなど、答えそのものを覚えない工夫を入れます。
残り時間別の計算対策
| 残り時間 | やること | 狙い |
|---|---|---|
| 1か月以上 | 4系統を順に練習 | 苦手意識を薄める |
| 2週間 | オームの法則・電力を毎日反復 | 基礎点を落とさない |
| 1週間 | 合成抵抗と電圧降下を頻出型に絞る | 捨て問を減らす |
| 3日前 | 解ける型だけ確認 | 新しい公式を増やさない |
直前期に新しい公式を増やしすぎると、覚えたはずの基礎まで崩れます。3日前からは「解ける型を本番で落とさない」ことを優先しましょう。
CBTで計算するときのコツ
CBT方式では、画面の問題文を見ながら手元で途中式を整理する必要があります。紙の問題集に直接書き込む練習だけでなく、画面を見てメモへ転記する練習も入れてください。
| CBTで起きやすいこと | 対策 |
|---|---|
| 条件を読み飛ばす | 単位と求める値だけ先にメモする |
| 途中式が散らかる | 1問1ブロックで書く |
| 見直しで何をしたか分からない | 使った公式を短く残す |
| 配線図と計算で時間が溶ける | 2分で判断し、戻る問題にする |
よくある失敗と修正
失敗1: 計算を全部捨てる
暗記問題と配線図だけで十分と思っていても、本番で数問落とすと余裕がなくなります。4系統だけでも拾うと、合格基準60点ラインへの安定感が変わります。
失敗2: 公式を増やしすぎる
公式集を眺めるより、1つの公式を3問解ける方が点になります。まずはV=IRとP=VIを、単位から選べる状態にしましょう。
失敗3: 答えを覚えて満足する
同じ問題を繰り返すだけだと、答えだけが残ります。数値を変える、途中式を隠す、選択肢を見ずに計算するなど、手順を再現する練習に変えてください。
合格基準60点ラインに近づくチェックリスト
- 計算問題を全部捨てないと決めた
- オームの法則、電力、合成抵抗、電圧降下の4系統を優先した
- 問題文では公式より先に単位を見る癖をつけた
- 同じ型を数値違いで3回解いた
- 本番で2分以上止まる問題は後回しにすると決めた
第二種電気工事士オリジナル予想問題 257問で合格ラインとの距離を測る →
編集部メモ
計算が苦手な人ほど、「全部理解してから解く」と考えがちです。でも試験対策では、先に点になる型を作ってから理解が追いつくこともあります。公式を絞り、単位を見て、同じ手順で解く。この地味な反復がいちばん強いです。
出典:











