第三種冷凍機械責任者は、数値代入そのものを解かせる計算問題はほぼ出ません。実際の試験は 5 肢択一で「どの公式の関係か」「COP が大きいのはどれか」を概念で問う形が中心です。それでも「計算が苦手」という不安を持ったまま試験に臨むと、p-h 線図の読み取り問題で手が止まります。この記事では計算を捨てるのではなく、3 公式の意味を例題で一度体験しておくことで概念問題を確実に取りにいく方法を解説します。
「計算」と聞くと複雑な数式を解かされると身構える人が多いはずです。しかし保安管理技術で問われる計算は、ほぼ 3 つの公式に集約され、しかもすべて p-h 線図 (モリエル線図) の状態点から値を拾うだけで組み立てられます。この 3 公式と p-h 線図のつながりさえ手を動かして掴めば、計算系の不安はほぼ消えます。
この記事では、公式の暗記ではなく「数値をどう当てはめるか」を、例題の数字で 1 ステップずつ追いかけます。
この記事で分かること
- 冷凍能力・成績係数 COP・圧縮機動力の 3 公式が、p-h 線図のどの差で決まるか
- 例題の数値を使った、各公式の手順 (numbered steps) での解き方
- 冷凍効果 (h1-h4) と圧縮仕事 (h2-h1) を取り違えないコツ
- 計算問題が「ほぼ出ない」のに公式理解が必要な理由
- 残り時間別に、計算分野へどこまで時間を割くかの優先順位
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まず押さえる:3 公式と p-h 線図の対応
冷凍サイクルの計算は、次の 3 公式だけ理解すれば足ります。どれも p-h 線図の状態点 (点1〜点4) から読み取ったエンタルピー差を使う点が共通です。
| 公式 | 計算式 | p-h 線図での差 |
|---|---|---|
| 冷凍能力 | 冷媒循環量 × 冷凍効果 | 冷凍効果 = h1 − h4 (蒸発器) |
| 成績係数 COP | 冷凍効果 ÷ 圧縮仕事 | (h1 − h4) ÷ (h2 − h1) |
| 圧縮機動力 | 冷媒循環量 × 圧縮仕事 | 圧縮仕事 = h2 − h1 (圧縮機) |
状態点は、点1=圧縮機入口 (蒸発器出口)、点2=圧縮機出口、点3=凝縮器出口、点4=蒸発器入口 (膨張弁出口) の 4 つ。冷凍効果は蒸発器でのエンタルピー差 (h1 − h4)、圧縮仕事は圧縮機でのエンタルピー差 (h2 − h1) です。この 2 つの差さえ取り違えなければ、3 公式は同じ材料の組み合わせで解けます。
冷凍能力を例題で解く
公式: 冷凍能力 = 冷媒循環量 × 冷凍効果
冷凍効果とは、蒸発器で冷媒 1 kg が吸収する熱量 (h1 − h4) のことです。これに 1 秒あたりの冷媒循環量を掛けると、単位時間あたりに奪える熱量 = 冷凍能力になります。
例題 (数値はすべて公式の理解を目的とした説明用の例):
注: 以下の例題の数値 (h1=400、h2=430、h4=250 kJ/kg など) は計算手順の理解を目的とした説明用の値であり、実際の冷媒 (R22、R410A 等) の典型的なエンタルピー値とは異なります。試験本番では p-h 線図から読み取った値を使います。
- p-h 線図から点1のエンタルピー h1 = 400、点4のエンタルピー h4 = 250 と読み取る (単位は kJ/kg のイメージ)。
- 冷凍効果 = h1 − h4 = 400 − 250 = 150 (kJ/kg)。
- 冷媒循環量を 0.2 (kg/s) とする。
- 冷凍能力 = 冷媒循環量 × 冷凍効果 = 0.2 × 150 = 30 (kW)。
ポイントは、冷凍効果が「点1と点4の差」である点です。点3 (凝縮器出口) のエンタルピーは、膨張弁が等エンタルピー変化なので h4 と等しく、ここから h4 を求める問題もよく見かけます。
なお 1 日あたりの冷凍能力からトン数を算定し、その規模が冷凍保安責任者の選任要件に関わってくる、という流れも保安管理技術では押さえどころです。
成績係数 COP を例題で解く
公式: COP = 冷凍効果 ÷ 圧縮仕事
COP は「得たもの (冷凍効果) ÷ 払ったもの (圧縮仕事)」で、値が大きいほど少ない仕事で多くの熱を奪える=効率が良い、を意味します。単位のない比である点もヒントになります。
例題 (数値は上の冷凍能力の続きの例):
- 冷凍効果 = h1 − h4 = 400 − 250 = 150。
- 点2のエンタルピー h2 = 430 と読み取る。
- 圧縮仕事 = h2 − h1 = 430 − 400 = 30。
- COP = 冷凍効果 ÷ 圧縮仕事 = 150 ÷ 30 = 5.0。
この「5.0」がそのまま問われることは少ないですが、「2 つのサイクルでどちらの COP が大きいか」を分子・分母の大小から判断させる出題は頻出です。冷凍効果 (分子) が大きいほど、圧縮仕事 (分母) が小さいほど COP は大きくなる、と方向で覚えておくと選択肢を切れます。
圧縮機動力を例題で解く
公式: 圧縮機動力 = 冷媒循環量 × 圧縮仕事
圧縮仕事は圧縮機が冷媒 1 kg に加える仕事 (h2 − h1)。これに冷媒循環量を掛けると、圧縮機が必要とする理論上の動力になります。
例題 (数値は上の続きの例):
- 圧縮仕事 = h2 − h1 = 430 − 400 = 30 (kJ/kg)。
- 冷媒循環量 = 0.2 (kg/s)。
- 理論圧縮機動力 = 0.2 × 30 = 6.0 (kW)。
- 実際の動力は効率で割る。例えば効率を 0.8 とすると、実動力 = 6.0 ÷ 0.8 = 7.5 (kW)。
「理論動力 ÷ 効率 = 実際の動力」となり、効率で割るぶん実動力は理論値より大きくなる点が引っかけどころです。掛けるのか割るのかで迷ったら、「効率が悪い (1 未満) ほど余計に電力が要る=値は大きくなる」と考えれば割り算だと判断できます。
ここまでの 3 例題で、冷凍能力 30 kW・COP 5.0・圧縮機動力 6.0 kW がすべて同じ h1=400・h2=430・h4=250 から導けたことを確認してください。1 枚の p-h 線図から 3 公式が芋づる式に出てくる感覚が掴めれば十分です。
計算問題は「概念理解」で取りにいく
冷凍3種は数値代入そのものを解かせる問題はほぼ出ず、5 肢択一で概念を問う形が中心です。だからこそ、上の例題で「どの差が何を意味するか」を体で覚えておくと、計算せずに正誤判断ができます。
| 出題パターン | 必要な理解 |
|---|---|
| 「COP が大きいのはどれか」 | 分子(冷凍効果)・分母(圧縮仕事)の大小 |
| 「冷凍効果はどのエンタルピー差か」 | 冷凍効果 = h1 − h4 (蒸発器) |
| 「圧縮仕事はどの差か」 | 圧縮仕事 = h2 − h1 (圧縮機) |
つまり、計算を恐れて捨てるのではなく、例題で一度手を動かしておけば、本番では「式の意味」だけで得点できる、という割の良い分野です。
残り時間別 3 公式の優先順位
| 残り時間 | やること |
|---|---|
| 残り 3 ヶ月以上 | 3 公式の意味を、上の例題で一度ずつ手計算する |
| 残り 1 ヶ月 | 冷凍効果=h1−h4、圧縮仕事=h2−h1 の対応を即答できるか確認 |
| 残り 2 週間 | COP の分子・分母の大小判断を練習問題で反復 |
| 残り 1 週間 | 「得÷払う=効率」の語感で最終チェック |
まとめ:1 枚の p-h 線図で 3 公式を回す
第三種冷凍機械責任者の計算は、冷凍能力・COP・圧縮機動力の 3 公式に尽き、いずれも冷凍効果 (h1 − h4) と圧縮仕事 (h2 − h1) という 2 つの差から組み立てられます。本記事の例題 (h1=400・h2=430・h4=250) のように、同じ数値で 3 公式を一気通貫で解く練習を 1 セットやれば、計算への苦手意識はほぼ消えます。
次の一歩: いま手元の紙に p-h 線図を 1 つ描き、本記事の例題の数値を入れて冷凍能力・COP・圧縮機動力を自力で再現してください。そのうえで 冷凍3種オリジナル予想問題 160 問 で、p-h 線図の読み取り問題を解いて定着を確認しましょう。
出典:
- 高圧ガス保安協会 第三種冷凍機械責任者試験 — 試験概要・受験案内
- 高圧ガス保安法 (昭和 26 年法律第 204 号)
- 冷凍保安規則 (昭和 41 年通商産業省令第 51 号)

































































