p-h 線図 (モリエル線図) は、第三種冷凍機械責任者の保安管理技術で最大の山場です。グラフがごちゃごちゃして見えて敬遠する人が多いのですが、実は「縦軸と横軸が何か」「冷凍サイクルの 4 つの過程がどの線か」さえ言葉で押さえれば、丸暗記なしで読めるようになります。
この記事では、図を貼らずとも頭の中に p-h 線図を描けるよう、軸の意味と 4 過程の動きを言葉で図解していきます。
この記事で分かること
- p-h 線図の横軸 (比エンタルピー) と縦軸 (圧力) が何を表すか
- 冷凍サイクルの 4 過程 (圧縮・凝縮・膨張・蒸発) が線図のどこに対応するか
- 飽和液線・飽和蒸気線と、湿り・過熱の領域の見分け方
- 冷凍効果・圧縮仕事・凝縮熱量という 3 つのエンタルピー差の読み取り方
- 暗記でなく「冷凍サイクルの流れ」で線図を再現するコツ
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まず軸を読む:横軸=比エンタルピー、縦軸=圧力
p-h 線図でつまずく原因のほとんどは、軸の意味を飛ばすことです。最初にここだけ固めます。
- 横軸 (h) = 比エンタルピー。冷媒 1 kg が持つ熱エネルギーの量で、右に行くほど熱を多く持っている状態です。冷凍効果や圧縮仕事といった「熱量・仕事」は、すべてこの横軸方向の差 (左右の幅) として読みます。
- 縦軸 (p) = 圧力。上に行くほど高圧です。圧縮機で圧力が上がる動きは「上向き」、膨張弁で圧力が下がる動きは「下向き」になります。
さらに線図の真ん中には、釣鐘 (ベル) を逆さにしたような曲線があります。左側のカーブが飽和液線、右側のカーブが飽和蒸気線で、
- 釣鐘の内側 = 液と蒸気が混ざった「湿り蒸気」の領域
- 釣鐘の右外側 = すべて蒸気になった「過熱蒸気」の領域
- 釣鐘の左外側 = すべて液の「過冷却液」の領域
この「軸 2 本 + 釣鐘の内外」というレイアウトが頭に入れば、あとは点を置くだけです。
4 状態点を線図の上に置く
冷凍サイクルは 4 つの状態点を順にたどります。それぞれが線図のどのあたりに来るかを、軸とセットで覚えます。
| 状態点 | 位置 | 冷媒の状態 | 線図上のおおよその場所 |
|---|---|---|---|
| 点 1 | 圧縮機入口 | 低温低圧の蒸気 | 低圧側・飽和蒸気線の右寄り |
| 点 2 | 圧縮機出口 | 高温高圧の蒸気 | 高圧側・過熱蒸気の領域 |
| 点 3 | 凝縮器出口 | 高温高圧の液 | 高圧側・飽和液線の左寄り |
| 点 4 | 蒸発器入口 | 低温低圧の湿り蒸気 | 低圧側・釣鐘の内側 |
ざっくり言えば、点1と点4は低圧 (下)、点2と点3は高圧 (上)。液になる点3は左、蒸気の点1・点2は右、という位置関係です。
4 過程が線図のどこに対応するか
ここが本題です。4 状態点を順に結ぶと冷凍サイクルになり、各辺が 4 つの過程に対応します。
- 圧縮 (点1 → 点2): 圧縮機で圧力を上げる過程。縦軸 (圧力) を下から上へ駆け上がる線です。理論上は等エントロピー変化なので、右上がりに伸びます。横軸の右への移動分 (h2 − h1) が圧縮機の仕事になります。
- 凝縮 (点2 → 点3): 凝縮器で熱を放出して蒸気が液になる過程。高圧側を保ったまま、横軸を右から左へ戻る水平に近い線です。左へ移動した幅 (h2 − h3) が放熱量 (凝縮熱量) です。
- 膨張 (点3 → 点4): 膨張弁で一気に減圧する過程。圧力が高圧から低圧へ落ちるので、縦軸を上から下へ下がる垂直に近い線です。膨張弁では熱の出入りがない (等エンタルピー変化) ため、横軸の値はほぼ変わらず h3 = h4 とみなせます。
- 蒸発 (点4 → 点1): 蒸発器で熱を吸って液が蒸気になる過程。低圧側を保ったまま、横軸を左から右へ進む水平に近い線です。右へ移動した幅 (h1 − h4) が、まさに庫内から奪う熱=冷凍効果になります。
「圧縮は上へ、膨張は下へ、凝縮と蒸発は横へ」と動きの向きで覚えると、線図を白紙から再現できます。
3 つのエンタルピー差を読み取る
4 過程の幅 (横軸方向の差) が、そのまま重要な 3 つの量になります。
| エンタルピー差 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 冷凍効果 | h1 − h4 | 蒸発器で奪う熱 (蒸発の線の長さ) |
| 圧縮仕事 | h2 − h1 | 圧縮機が加える仕事 (圧縮で右へ動いた分) |
| 凝縮熱量 | h2 − h3 | 凝縮器で捨てる熱 (凝縮の線の長さ) |
この 3 つから、成績係数 COP = 冷凍効果 ÷ 圧縮仕事 = (h1 − h4) ÷ (h2 − h1) も導けます。線図の上では「蒸発の幅 ÷ 圧縮の幅」を見ているだけ、と捉えると COP の大小判断も直感的になります。
試験でよく問われる「どの差が一番大きいか」も、線図の幅で考えれば判断できます。凝縮器では、蒸発器で吸った熱 (冷凍効果) に加えて圧縮機が与えた仕事の分まで一緒に捨てます。つまり凝縮熱量は、冷凍効果と圧縮仕事を足したものにほぼ等しく、3つの差の中で最も大きくなります。線図の上でも、凝縮の水平線が3本の中でいちばん長くなる、とイメージできるとこの関係を忘れません。
もう一つ押さえたいのが、点3 (凝縮器出口) と点4 (蒸発器入口) の横軸が等しいことです。膨張弁は熱の出入りがない等エンタルピー変化なので、線図では点3から点4へ真下に落ちるだけで、左右には動きません。だから「冷凍効果 = h1 − h4」は「h1 − h3」と書いても同じ値になります。凝縮器出口のエンタルピーから冷凍効果を求めさせる問題は、この点3=点4の関係を使わせる定番パターンです。
暗記でなく「流れ」で再現する
p-h 線図は、点や数値を丸暗記する対象ではありません。次の手順で一度自分の手で描けば、本番でも白紙から再現できます。
| 順序 | やること |
|---|---|
| 1 | 横軸=比エンタルピー、縦軸=圧力、中央に釣鐘 (飽和液線・飽和蒸気線) を描く |
| 2 | 点1〜点4 を低圧/高圧・液/蒸気の位置関係でプロットする |
| 3 | 圧縮(上へ)・凝縮(左へ)・膨張(下へ)・蒸発(右へ) の 4 過程を線で結ぶ |
| 4 | 蒸発の幅=冷凍効果、圧縮の幅=圧縮仕事 として 3 つの差を読む |
| 5 | 練習問題で「どの差を問われているか」を判定する |
残り時間別の取り組み方
| 残り時間 | やること |
|---|---|
| 残り 3 ヶ月以上 | 軸の意味と 4 過程の向きを、白紙から描けるまで反復 |
| 残り 1 ヶ月 | 各過程の幅と 3 エンタルピー差の対応を即答できるか確認 |
| 残り 2 週間 | 「この差はどの過程か」を練習問題で判定する訓練 |
| 残り 1 週間 | COP=蒸発の幅÷圧縮の幅、を図のイメージで最終チェック |
まとめ:軸 2 本と 4 過程の向きで線図は読める
p-h 線図は、横軸=比エンタルピー・縦軸=圧力という 2 本の軸と、圧縮(上)・凝縮(左)・膨張(下)・蒸発(右) という 4 過程の向きを押さえれば、暗記なしで読めます。冷凍効果も圧縮仕事も、結局は横軸方向の「幅」を見ているだけです。
次の一歩: いま白紙に、軸 2 本と釣鐘を描き、点1〜点4 と 4 過程を自力でプロットしてみてください。再現できたら 冷凍3種オリジナル予想問題 160 問 で p-h 線図の読み取り問題を解き、「どの差を問われているか」を見抜く練習に進みましょう。
出典:
- 高圧ガス保安協会 第三種冷凍機械責任者試験 — 試験概要・受験案内
- 高圧ガス保安法 (昭和 26 年法律第 204 号)

































































