QC検定3級の手法分野で「計算が不安」と感じる人は多いのですが、実際に手を動かす計算は5種類しかありません。しかも、それぞれ落とし方が決まっています。
範囲の外側を先に切っておきます。検定・推定、抜取検査、実験計画法、回帰分析はいずれも2級以上で、公式のレベル表マトリックスでは3級の欄が空欄です。3級で出るのは次の5つだけです。
① 基本統計量 — 中心の尺度とばらつきの尺度を混ぜない
データ 12、15、11、18、14 で通します。
| 求めるもの | 式 | 計算 | 答え |
|---|---|---|---|
| 平均 | 合計 ÷ 個数 | 70 ÷ 5 | 14.0 |
| メディアン | 小さい順の中央 | 11、12、14、15、18 | 14 |
| 範囲 R | 最大 − 最小 | 18 − 11 | 7 |
🔴 落とし方は「役割の取り違え」です。平均とメディアンは中心的傾向、範囲・平方和・分散・標準偏差はばらつきの尺度です。「ばらつきの尺度として適切でないものはどれか」と問われてメディアンを選べないと落とします。
平方和と不偏分散は、データ 2、4、6 で見ると分かりやすくなります。
- 平均 =(2+4+6)÷ 3 = 4
- 平方和 S =(2−4)² +(4−4)² +(6−4)² = 4 + 0 + 4 = 8
- 不偏分散 V = S ÷(n − 1)= 8 ÷ 2 = 4
- 標準偏差 s = √V = 2
⚠️ n − 1 を n にすると 8 ÷ 3 ≒ 2.67 になります。選択肢に必ず並んでいるので、割る数を間違えるとそのまま選べてしまいます。
② データの変換 — 引き算は効かない、割り算だけが効く
y =(x − a)÷ h と変換したときの関係です。
| 変換後 | |
|---|---|
| 平均 | ȳ =(x̄ − a)÷ h |
| 標準偏差 | sy = sx ÷ h(a は効かない) |
| 分散 | Vy = Vx ÷ h² |
🔴 ここが最大の引っかけです。平均は引き算も割り算も効きますが、ばらつきは原点をずらしても変わりません。全部のデータを同じだけ平行移動しても、散らばり具合は変わらないからです。効くのは目盛りを縮める h だけです。
▶️ さらに分散は h ではなく h² で割ります。分散は偏差を二乗した量なので、目盛りを 1/h にすると 1/h² になります。標準偏差が 1/h なのと対応しています。
③ 正規分布の標準化 — 表を引く前の前処理
z =(x − 平均)÷ 標準偏差 です。x = 74、平均 62、標準偏差 8 なら z =(74 − 62)÷ 8 = 1.5。
覚えるべき割合は3つだけです。
| 範囲 | おおよその割合 |
|---|---|
| 平均 ± 1σ | 約 68% |
| 平均 ± 2σ | 約 95% |
| 平均 ± 3σ | 約 99.7% |
🟢 この3つは管理図とつながっています。管理限界を ± 3σ に取るのは、その外に出る確率が約0.3%しかないからです。だから打点が管理限界を越えたら「めったに起きないことが起きた=異常」と判断します。手法分野の中で数字が再利用される数少ない場所なので、まとめて覚えると効率がよくなります。
⚠️ 標準正規分布は平均 0・標準偏差 1 です。正規分布表はこれについて作られているので、標準化を飛ばして生の測定値で表を引くと値が合いません。
④ 工程能力指数 — 分母の 6 を落とすと評価が逆になる
Cp =(上限規格 − 下限規格)÷(6 × 標準偏差)
| 上限 | 下限 | 標準偏差 | 計算 | Cp | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 62 | 38 | 4 | 24 ÷ 24 | 1.00 | 余裕なし |
| 70 | 30 | 5 | 40 ÷ 30 | 1.33 | 十分 |
🔴 分母を 3σ にすると 1.00 が 2.00 になります。「十分」どころか過剰という真逆の評価が出て、しかも選択肢に並んでいるので気づけません。6σ は正規分布で平均 ± 3σ にほぼ全体が入る、つまり工程のばらつきの幅が 6σ ぶんある、という意味です。
評価の目安はこうです。
| Cp | 評価 |
|---|---|
| 1.33 以上 | 工程能力は十分 |
| 1.00 以上 1.33 未満 | まずまず・注意が必要 |
| 1.00 未満 | 不足 |
▶️ Cp と Cpk の違いも問われます。Cp は規格の幅とばらつきの幅を比べるだけなので、平均が規格の中心からずれていても値が下がりません。Cpk は平均から近いほうの規格までの距離で評価するため、かたよりがあると小さくなります。したがって平均がずれているとき Cpk < Cp になり、一致するのは平均が規格の中心にあるときだけです。
⚠️ 工程能力指数は、工程が安定していることが前提です。管理図で異常が出ている工程の Cp を計算しても、その値は工程の実力を表しません。
⑤ 二項分布 — 平均と分散を取り違えない
不適合品率 p の工程から n 個抜き取ったときの不適合品数について。
| 求めるもの | 式 | 例(n = 50、p = 0.1) |
|---|---|---|
| 平均 | np | 50 × 0.1 = 5 |
| 分散 | np(1 − p) | 50 × 0.1 × 0.9 = 4.5 |
| 標準偏差 | √(np(1 − p)) | √4.5 ≒ 2.12 |
🔴 平均と分散が近い値になるので取り違えます。上の例では 5 と 4.5 で、どちらも選択肢に並びます。分散には必ず (1 − p) が掛かる、と形で覚えるほうが安全です。
落とし方の一覧
計算そのものより、こちらを覚えるほうが失点が止まります。
| 計算 | 典型的な落とし方 |
|---|---|
| 不偏分散 | n − 1 で割るところを n で割る |
| データの変換(標準偏差) | 原点の移動 a まで効くと思って引いてしまう |
| データの変換(分散) | h² ではなく h で割る |
| 標準化 | 標準化せずに生の値で正規分布表を引く |
| 工程能力指数 | 分母の 6σ を 3σ にする |
| 二項分布 | 分散 np(1−p) と平均 np を取り違える |
| 基本統計量 | 中心の尺度とばらつきの尺度を混同する |
手を動かす回数を確保する
手法分野には各分野50%以上という足切りがあるため、計算が苦手なまま実践分野で取り返すことができません。詳しくはQC検定3級の合格基準は2つあるにまとめました。
ぴよパスでは、この5種類を数値を変えて繰り返せるよう問題を用意しています。統計的方法の基礎に標準化と二項分布、管理図・工程能力指数・相関分析に Cp・Cpk と相関係数、データの取り方とまとめ方に基本統計量とデータの変換があります。全体の構成はQC検定3級の練習問題から確認できます。
⚠️ 電卓は持ち込めません。3級のCBTでは試験画面上の電卓機能だけが使えます。式が合っていても桁を落とすと不正解なので、筆算でも通せる程度に手をならしておくほうが安全です。
出典
- 一般財団法人日本規格協会「QC検定レベル表マトリックス(手法編)」<https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/qc/md_4806.pdf>(3級で出る項目と、検定推定・抜取検査・実験計画法・回帰分析が3級の範囲外であること)
- 同「品質管理検定レベル表(3級)」<https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/qc/md_4609.pdf>
- 同「合格基準」<https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0500/index/qc/qc_level2/>(各分野概ね50%以上かつ総合概ね70%以上)
- 株式会社CBT-Solutions「品質管理検定(QC検定)」<https://cbt-s.com/examinee/examination/qckc.html>(3級は電卓の持ち込み不可、試験画面上の電卓機能のみ利用可能)
いずれも 2026 年 8 月 25 日に確認しました。ぴよパスの練習問題は本試験の問題ではなく、上記の公開情報をもとに独自に作成したオリジナル予想問題です。
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