結論:「1つだけ」の位置を4つ覚えると、残りは消去法で解ける
鎮咳去痰薬は、1つの製品に咳を止める・気管支を拡げる・痰を出す・炎症を鎮めるという複数の役が同居します。そのぶん成分名が増えるので、丸暗記だと崩れます。
しかし手引きを読むと、その中に「これだけ」という位置がいくつもあることが分かります。そこを押さえると、残りは消去法で処理できます。
| 「1つだけ」の位置 | 中身 |
|---|---|
| てんかん | 手引き全体でジプロフィリンにしか出てこない |
| 去痰の3作用すべて | ブロムヘキシン塩酸塩だけ |
| 去痰で2か所に登場 | カルボシステインだけ |
| 依存性(気管支拡張の枠で) | メチルエフェドリン塩酸塩・同サッカリン塩・マオウの3つ |
① 同じ「気管支を拡げる」でも、相談する相手が入れ替わる
気管支拡張成分は2系統あります。やることは同じなのに、注意すべき病気が違います。
アドレナリン作動成分とマオウ
心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能亢進症の診断を受けた人では、症状を悪化させるおそれがあり……相談がなされるべきである。
キサンチン系成分(ジプロフィリン等)
キサンチン系成分も中枢神経系を興奮させる作用を示し、甲状腺機能障害又はてんかんの診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり……相談がなされるべきである。
▶️ 重なるのは甲状腺だけ。心臓病・高血圧・糖尿病はアドレナリン側、てんかんはキサンチン側です。
🔴 「てんかん」は、手引き全体で2か所しか出てきません。 どちらもジプロフィリンについての記述です(第3章の本文と、第5章の別表)。
▶️ 問題文に「てんかん」を見たら、答えはジプロフィリン(キサンチン系)。これで1問取れます。
⚠️ 手引きは、キサンチン系について「自律神経系を介さずに気管支の平滑筋に直接作用して弛緩させ」と書いています。アドレナリン作動成分が交感神経を介するのと対照的です。「自律神経系を介さず」が判別語になります。
⚠️ キサンチン系には心臓刺激作用があり、副作用として動悸が現れることがあります。
依存性が付くのは3つだけ(気管支拡張の枠の中では)
これらのうちメチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、マオウについては、中枢神経系に対する作用が他の成分に比べ強いとされ、依存性がある成分であることに留意する必要がある。
▶️ 「これらのうち」の範囲はアドレナリン作動成分とマオウの中です。トリメトキノールやメトキシフェナミンには付きません。
🔴 「アドレナリン作動成分には依存性がある」と一括りにすると落とします。 3つに限定されています。
⚠️ ただし鎮咳去痰薬全体で見れば、依存性がある成分は他にもあります(後述の麻薬性鎮咳成分)。「この3つだけ」と書くときは、気管支拡張の枠の中でという限定を落とさないでください。
▶️ メチルエフェドリン塩酸塩・同サッカリン塩は「定められた用法用量の範囲内で乳児への影響は不明であるが、吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが知られている」とされています。
② 麻薬性かどうかは「モルヒネと同じ基本構造」で決まる
咳を抑える成分は延髄の咳嗽中枢に作用します。ここまでは共通です。分かれるのは2つだけです。
これらのうちコデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩については、その作用本体であるコデイン、ジヒドロコデインがモルヒネと同じ基本構造を持ち、依存性がある成分であり、麻薬性鎮咳成分とも呼ばれる。
▶️ 麻薬性は2つだけ。 ノスカピン、デキストロメトルファン、チペピジン、ジメモルファン、クロペラスチンは非麻薬性です。
▶️ 長期連用や大量摂取で「倦怠感や虚脱感、多幸感」が現れ、薬物依存につながるおそれがあるとされています。
⚠️ 手引きは内服液剤について、「その製剤的な特徴から、本来の目的以外の意図で服用する不適正な使用がなされることがある」とも書いています。
コデイン類の12歳未満は、理由の経緯まで書かれている
コデイン類の年齢制限は、そこに至る経緯が本文に書かれているという珍しい形をしています。
- 米国等において12歳未満の小児等への使用を禁忌とする措置がとられた
- それを踏まえ、平成29年度第3回の薬事・食品衛生審議会の調査会で検討された
- 結果、本剤による死亡例の国内報告はなく、日本での呼吸抑制のリスクは欧米と比較して遺伝学的に低いと推定されること等から、国内で直ちに使用を制限する必要性は考えにくい
- 一方でリスクを可能な限り低減する観点から、予防的な措置として2つが行われた
- ① 速やかに添付文書を改訂し、原則、12歳未満の小児等に使用しないよう注意喚起
- ② 1年6ヶ月程度の経過措置期間を設け、代替製品や12歳未満を適応外とする製品への切換え
🔴 「国内で直ちに使用を制限する必要性は考えにくい」としつつ「予防的な措置」として行った、という組み立てです。理由を問う肢が作れます。
⚠️ 数字は「12歳未満」と「1年6ヶ月程度」の2つです。
妊娠・授乳でも記述がある
コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩は、妊娠中に摂取された場合、吸収された成分の一部が血液-胎盤関門を通過して胎児へ移行することが知られている。また、分娩時服用により新生児に呼吸抑制が現れたとの報告がある。また、母乳移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告があり、授乳中の人は服用しないか、授乳を避ける必要がある。
▶️ 胃腸の運動を低下させる作用もあり、副作用として便秘が現れることがあります。
③ 去痰成分は「作用の数」で4段に割れる
去痰成分は名前が長く、機序も似ているので混ざりやすい場所です。しかし原文は作用の内容ごとに区切って書いています。
| 何をするか | 成分 |
|---|---|
| 気道粘膜からの粘液の分泌を促進 | グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム等 |
| 痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少 | エチルシステイン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、カルボシステイン等 |
| 粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くする | カルボシステイン |
| 分泌促進作用・溶解低分子化作用・線毛運動促進作用を示す | ブロムヘキシン塩酸塩 |
▶️ カルボシステインは2か所に出てきます。 溶解・低分子化と、含量比の調整の両方です。
▶️ ブロムヘキシン塩酸塩は3つの作用を持ちます。 しかも線毛運動促進作用は、この成分にしか出てきません。
🔴 「1つだけ持っている作用」がある成分を2つ覚えるのが最短です。カルボシステイン=2か所、ブロムヘキシン=3作用(線毛運動促進を含む)。
⚠️ 原文は前の2つに「等」を付け、後ろの2つには付けていません。閉じた列挙と開いた列挙が混ざっているので、「これで全部」と読まないでください。
④ 生薬で数字が出るのはセネガとオンジだけ、しかも値が違う
生薬成分は基原を問われますが、数字が付くのは2つだけです。
これらの生薬成分の摂取により糖尿病の検査値に影響を生じることがあり、糖尿病が改善したと誤認されるおそれがあるため、1日最大配合量がセネガ原生薬として1.2g以上、又はオンジとして1g以上を含有する製品では、使用上の注意において成分及び分量に関連する注意として記載されている。
| 生薬 | 基原 | 数字 |
|---|---|---|
| セネガ | ヒメハギ科のセネガ又はヒロハセネガの根 | 1.2g以上 |
| オンジ | ヒメハギ科のイトヒメハギの根及び根皮 | 1g以上 |
🔴 値が違います(1.2g と 1g)。 どちらも同じヒメハギ科なので、数字だけが差になります。
🔴 影響するのは「糖尿病の検査値」です。しかも「糖尿病が改善したと誤認されるおそれ」という向きまで書かれています。検査値が悪くなるのではなく、良く見えるという点が要注意です。
▶️ オンジだけ「根及び根皮」で、セネガは「根」だけです。部位の差も出題材料になります。
その他の生薬も基原が問われます。
- キキョウ:キキョウ科のキキョウの根(痰又は痰を伴う咳)
- セキサン:ヒガンバナ科のヒガンバナの鱗茎(去痰)。エキスは別名白色濃厚セキサノール
- バクモンドウ:ユリ科のジャノヒゲの根の膨大部(鎮咳、去痰、滋養強壮)
▶️ セキサンの「鱗茎」とバクモンドウの「根の膨大部」は、他ではあまり見ない部位の表現です。そこが問われます。
覚えなくてよいもの
- 抗炎症成分:トラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム等。カンゾウ由来の注意はかぜ薬・漢方の章に本体があります
- 漢方処方製剤:甘草湯のほか、半夏厚朴湯、柴朴湯、麦門冬湯、五虎湯、麻杏甘石湯、神秘湯など。甘草湯を含めて7処方で、甘草湯を除くいずれも比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがあります
⚠️ 母集合を「6処方」と数えないでください。 甘草湯を含めた7つが母集合で、そこから甘草湯だけが長期服用の記述から外れます。
▶️ カンゾウの1日摂取量の数字は、この節ではなくかぜ薬の章に本体があります。漢方まわりは別記事に整理しています。
同じ薬の中で、目的が逆を向く組み合わせがある
最後に、この薬効群でいちばん面白い箇所です。
▶️ 抗ヒスタミン成分は、咳や気管支の症状を助ける目的で配合されるのに、粘液の分泌を抑えて痰を出しにくくする方向にも働きます。同じ製品の中で、去痰成分と逆を向きます。
▶️ 殺菌消毒成分は局所に作用するので、噛み砕いてしまうと効果が落ちます。含嗽薬・トローチの類で問われる形です。
▶️ そして受診勧奨に、強い否定文があります。鎮咳去痰薬に解熱成分は配合されておらず、発熱を鎮める効果は期待できません。
🔴 「咳止めを飲めば熱も下がる」は誤り、という形で出ます。
消去法が使えるかは、解けば分かる
この節の問題は、成分と注意すべき病気の組み合わせを入れ替える形が中心です。「アドレナリン作動成分はてんかんの診断を受けた人では症状の悪化を招く」——系統名は合っているので、相手の側まで見ないと切れません。
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⚠️ ぴよパスの問題は本試験の再現ではなく、厚生労働省の手引きにもとづいて独自に作成した予想問題です。
まとめ
- 🔴 「てんかん」が出たらジプロフィリン(キサンチン系)。手引き全体で2か所しかない
- アドレナリン作動成分・マオウは心臓病・高血圧・糖尿病・甲状腺機能亢進症
- キサンチン系は自律神経系を介さず気管支平滑筋に直接作用。心臓刺激作用で動悸
- 依存性が付くのはメチルエフェドリン2種とマオウ(気管支拡張の枠の中で)
- 麻薬性鎮咳成分はコデイン類の2つだけ。モルヒネと同じ基本構造
- コデイン類は12歳未満に原則使用しない(1年6ヶ月程度の経過措置。国内の死亡報告はなく予防的な措置)
- 去痰はカルボシステインが2か所、ブロムヘキシンが3作用(線毛運動促進を含む)
- セネガ1.2g/オンジ1g。糖尿病の検査値に影響し、改善したと誤認されるおそれ
- セネガ=根、オンジ=根及び根皮。セキサン=鱗茎、バクモンドウ=根の膨大部
- 漢方は甘草湯+6=7処方。甘草湯を除くいずれも長期間服用されることがある
- 鎮咳去痰薬に解熱成分は配合されていない
出典
- 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)」第3章 主な医薬品とその作用 Ⅱ 呼吸器官に作用する薬 1 咳止め・痰を出しやすくする薬(鎮咳去痰薬)— (a)咳を抑える成分(延髄の咳嗽中枢に作用する成分、コデインリン酸塩水和物・ジヒドロコデインリン酸塩の麻薬性鎮咳成分としての位置づけと依存性、内服液剤に関する記述、血液-胎盤関門の通過と分娩時の呼吸抑制・母乳移行によるモルヒネ中毒、胃腸の運動低下と便秘、コデイン類の12歳未満に関する検討経緯と予防的措置①②)、(b)気管支を拡げる成分(アドレナリン作動成分およびマオウの基原と注意すべき基礎疾患・高齢者への留意、メチルエフェドリン塩酸塩等の依存性と乳汁移行、キサンチン系成分の作用機序・甲状腺機能障害またはてんかん・心臓刺激作用)、(c)痰の切れを良くする成分(4区分と該当成分)、(d)炎症を和らげる成分、生薬成分(キキョウ、セネガ・オンジの基原と1.2g/1gおよび糖尿病の検査値への影響、セキサン、バクモンドウ)、⚫漢方処方製剤(甘草湯ほか6処方、甘草湯を除くいずれも比較的長期間服用されることがある旨)
- 同 第5章 別表 — てんかんに関する相談事項(ジプロフィリン)
編集部の見方:この薬効群は、1つの製品に何役も入っているために成分表が縦に長くなり、教材でも一覧で提示されがちです。ところが実際に問われるのは、役ごとに「相談すべき相手」が入れ替わる箇所に集中しています。とくにキサンチン系の「てんかん」は、手引き全体で2か所しか出てこないうえ、どちらも同じ成分を指しています。これほど一意に決まる語は、この試験全体でもそう多くありません。 去痰成分のほうも、作用の数で並べ直すとカルボシステインとブロムヘキシンの位置がはっきりします。名前の長さに気を取られず、「1つだけ」の位置から埋めるのが速い進め方です。











