結論:「何をする成分か」で並べると崩れる。金属で並べ替える
胃腸薬は制酸・健胃・消化・整腸・止瀉・瀉下と薬効群が多く、成分も大量にあります。働きごとに縦に覚えると、必ずどこかで混ざります。
理由は、手引きの制酸成分の節に置かれた1文にあります。
また、カルシウム、アルミニウムを含む成分については止瀉薬、マグネシウムを含む成分については瀉下薬に配合される成分でもあり、それぞれ便秘、下痢等の症状に注意することも重要である。
▶️ 同じ成分が、薬効群をまたいで登場します。 制酸薬で使われている金属が、止瀉薬や瀉下薬でも使われている。だから薬効群で区切ると、同じ成分を何度も別々に覚えることになります。
▶️ そして金属が決まれば、副作用の向きまで決まります。
| 金属 | 制酸以外にどこで使われるか | だから注意するのは |
|---|---|---|
| カルシウム・アルミニウム | 止瀉薬(下痢止め) | 便秘 |
| マグネシウム | 瀉下薬(下剤) | 下痢 |
🔴 止瀉薬に使われる金属は便秘、瀉下薬に使われる金属は下痢。 覚えるのはこの向きだけです。
制酸成分は5系統。並びは「金属の有無」で決まる
手引きは制酸成分を、i〜v の番号を振って列挙しています。
| 系統 | 成分 | |
|---|---|---|
| i) | ナトリウム | 炭酸水素ナトリウム(重曹) |
| ii) | アルミニウム | 乾燥水酸化アルミニウムゲル、ジヒドロキシアルミニウムモノアセテート等 |
| iii) | マグネシウム | ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等 |
| iv) | アルミニウムとマグネシウムの両方 | 合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等 |
| v) | カルシウム | 沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等 |
▶️ iv) が「両方」というのが構造の要です。合成ヒドロタルサイトとメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、アルミニウムの注意もマグネシウムの注意も両方かかります。
▶️ メタケイ酸アルミン酸マグネシウムだけ上乗せがあります。 「胃酸の中和作用のほか、胃粘膜にゼラチン状の皮膜を形成して保護する作用もある」。名前が長いぶん、この特徴で覚えられます。
⚠️ 生薬もこの枠に入ります。ボレイ(イタボガキ科のカキの貝殻を基原とする生薬)は、含まれる炭酸カルシウムによる作用を期待して用いられます。カキの貝殻=カルシウム、と紐づきます。
金属ごとに「使えない人」が決まる
制酸成分の注意は、金属を軸にすると3つに整理できます。
① アルミニウム — 透析を受けている人は使わない
制酸成分のうちアルミニウムを含む成分については、透析療法を受けている人が長期間服用した場合にアルミニウム脳症及びアルミニウム骨症を引き起こしたとの報告があり、透析療法を受けている人では使用を避ける必要がある。また、透析治療を受けていない人でも、長期連用は避ける必要がある。
🔴 2段構えです。 透析中の人は使用を避ける、透析していない人でも長期連用を避ける。
▶️ 手引きは脚注でアルミニウム脳症を「体内でアルミニウムが過剰に存在する場合、脳にアルミニウムが蓄積することにより発生する脳症で、アルミニウムが脳の組織に付着することで、脳神経系の伝達を妨げ、言語障害等を引き起こす」と説明しています。
② 腎臓病 — 金属全部が対象
腎臓病の診断を受けた人では、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の無機塩類の排泄が遅れたり、体内に貯留しやすくなるため……相談がなされるべきである。
▶️ こちらは4つ全部が対象です。 アルミニウムだけの話ではありません。
🔴 「アルミニウム=透析」「腎臓病=金属全部」という二重構造です。片方だけを覚えていると、どちらの肢でも迷います。
③ 併用 — 高カルシウム血症・高マグネシウム血症
制酸成分は他の医薬品(かぜ薬、解熱鎮痛薬等)でも配合されていることが多く、併用によって制酸作用が強くなりすぎる可能性があるほか、高カルシウム血症、高マグネシウム血症等を生じるおそれがある。
▶️ かぜ薬や解熱鎮痛薬にも制酸成分が入っている、というのが前提です。胃腸薬だけを見ていても足りません。
おまけ:炭酸飲料で飲まない
これらの制酸成分を主体とする胃腸薬については、酸度の高い食品と一緒に使用すると胃酸に対する中和作用が低下することが考えられるため、炭酸飲料等での服用は適当でない。
▶️ 理由が中和反応そのものなので、忘れにくい部類です。
止瀉薬は「金属を持つ組」と「持たない組」に割れる
止瀉成分のうち、収斂成分は金属の話とつながります。
腸粘膜のタンパク質と結合して不溶性の膜を形成し、腸粘膜をひきしめる(収斂)ことにより、腸粘膜を保護することを目的として、次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス等のビスマスを含む成分、タンニン酸アルブミン等が配合されている。
▶️ 「不溶性の膜を形成」は、痔の薬の収斂保護止血成分と同じ言い回しです。収斂=膜を張る、と覚えれば薬効群をまたいで使えます。
⚠️ ビスマスは収斂作用のほか、腸内で発生した有毒物質を分解する作用も持つとされます。
金属を持たない成分こそ、個別に覚える対象
金属で整理できない成分は限られています。そこだけが個別暗記です。
| 成分 | 覚える中身 |
|---|---|
| ビスマスを含む成分 | 1週間以上継続して使用しない(海外で長期連用により不安、記憶力減退、注意力低下、頭痛等の精神神経症状の報告)。アルコールと一緒に摂取すると循環血液中への移行が高まるので服用時は飲酒を避ける。胃潰瘍・十二指腸潰瘍では吸収が高まるため相談。血液-胎盤関門を通過するので妊婦は避ける |
| タンニン酸アルブミン | まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)。アルブミンは牛乳に含まれるタンパク質(カゼイン)から精製された成分なので、牛乳にアレルギーがある人は避ける |
| ロペラミド塩酸塩 | 食べすぎ・飲みすぎ・寝冷えによる下痢が対象で、食あたりや水あたりによる下痢は適用対象でない。15歳未満の小児には適用がない。2〜3日間使用して改善しなければ受診。胃腸鎮痛鎮痙薬との併用は避ける。効き目が強すぎて便秘、まれにイレウス様症状 |
🔴 ロペラミドは「使える下痢」と「使えない下痢」が書き分けられています。 原因で分かれます。
🔴 ビスマスの「1週間以上継続して使用しない」は、この節で最も出やすい数字です。
⚠️ 収斂成分を主体とする止瀉薬には共通の警告があります。「細菌性の下痢や食中毒のときに使用して腸の運動を鎮めると、かえって状態を悪化させるおそれがある」。急性の激しい下痢や腹痛・腹部膨満・吐きけ等を伴う場合は安易な使用を避ける、とされています。
瀉下薬も「金属の組」と「そうでない組」
瀉下成分は5系統ありますが、無機塩類だけが金属の話です。
腸内容物の浸透圧を高めることで糞便中の水分量を増し、また、大腸を刺激して排便を促すことを目的として、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウムを含む成分が配合されている。また、同様な目的で硫酸ナトリウムも用いられる。
▶️ マグネシウム → 腎臓病、ナトリウム(硫酸ナトリウム)→ 心臓病、と相手が分かれます。
| 成分 | 相談すべき人 | 理由 |
|---|---|---|
| マグネシウムを含む成分 | 腎臓病 | 一部は腸で吸収されて尿中に排泄されるため、高マグネシウム血症を生じるおそれ |
| 硫酸ナトリウム | 心臓病 | 血液中の電解質のバランスが損なわれ、心臓の負担が増加 |
🔴 同じ無機塩類なのに相手が違います。 マグネシウム=腎臓、ナトリウム=心臓。
⚠️ 酸化マグネシウムは制酸成分としても瀉下成分としても登場します。 上の「金属で並べ替える」がいちばん効く例です。
金属を持たない瀉下成分
| 成分 | 覚える中身 |
|---|---|
| 膨潤性瀉下成分(カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、プランタゴ・オバタの種子・種皮) | 腸管内で水分を吸収して糞便のかさを増やす。使用と併せて十分な水分摂取が重要 |
| ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS) | 腸内容物に水分が浸透しやすくする作用で糞便を柔らかくする |
| マルツエキス | 主成分の麦芽糖が腸内細菌によって分解(発酵)して生じるガスで便通を促す。作用が穏やかなので主に乳幼児。麦芽糖を60%以上含み水飴状で甘く、発育不良時の栄養補給にも用いられる |
🔴 マルツエキスには打ち消しがあります。 「乳児の便秘は母乳不足又は調整乳希釈方法の誤りによって起こることもあるが、水分不足に起因する便秘にはマルツエキスの効果は期待できない」。
▶️ 膨潤性は「水を吸ってかさを増す」、DSSは「水を浸透させて柔らかくする」。 どちらも水の話ですが、向きが逆です。
⚠️ カルメロースカルシウムは名前にカルシウムが入りますが、ここでは膨潤性瀉下成分として置かれています。金属の名前だけで判断しないという例外です。
健胃成分は「味と香りで効かせる」ので、飲み方が問われる
健胃成分は、作用の仕組みが他と違います。
味覚や嗅覚を刺激して反射的な唾液や胃液の分泌を促すことにより、弱った胃の働きを高めることを目的として、オウバク、オウレン、センブリ、ゲンチアナ、リュウタン、ケイヒ、ユウタン等の生薬成分が配合されている。
▶️ だから飲み方に条件が付きます。
これら生薬成分が配合された健胃薬は、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮蔽する方法で服用されると効果が期待できず、そのような服用の仕方は適当でない。
🔴 「飲みにくいからオブラートで包む」が誤りになる、という珍しい形です。味と香りそのものが薬効の入口だからです。
⚠️ オウバクとオウレンは、健胃成分としても止瀉成分(収斂)としても出てきます。 苦味による健胃作用のほか、抗菌作用、抗炎症作用も期待されます。基原はオウバク=ミカン科のキハダ等の周皮を除いた樹皮、オウレン=キンポウゲ科のオウレン等の根をほとんど除いた根茎です。
金属で並べ替えられているか、解けば分かる
この範囲の問題は、成分と相談すべき人の組み合わせを入れ替える形が中心です。「マグネシウムを含む成分は心臓病の診断を受けた人では相談が必要」——金属名は合っているので、相手の側まで見ないと切れません。
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⚠️ ぴよパスの問題は本試験の再現ではなく、厚生労働省の手引きにもとづいて独自に作成した予想問題です。
まとめ
- 🔴 カルシウム・アルミニウムは止瀉薬にも入る→便秘。マグネシウムは瀉下薬にも入る→下痢
- 制酸成分は5系統。iv) はアルミニウムとマグネシウムの両方を含む
- メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは中和のほかゼラチン状の皮膜を形成
- アルミニウム=透析療法を受けている人は使用を避ける(していない人も長期連用を避ける)
- 腎臓病=ナトリウム・カルシウム・マグネシウム・アルミニウム全部が対象
- 制酸成分はかぜ薬や解熱鎮痛薬にも入っている。併用で高カルシウム/高マグネシウム血症
- 炭酸飲料等での服用は適当でない(中和作用が低下)
- ビスマスは1週間以上継続して使用しない。飲酒を避ける。妊婦は避ける(血液-胎盤関門)
- タンニン酸アルブミンは牛乳アレルギーで避ける(アルブミンはカゼイン由来)
- ロペラミドは食あたり・水あたりには適用対象でない。15歳未満に適用なし
- 収斂成分は細菌性の下痢・食中毒でかえって悪化させるおそれ
- 無機塩類はマグネシウム=腎臓病、硫酸ナトリウム=心臓病
- マルツエキスは水分不足に起因する便秘には効果が期待できない
- 健胃成分はオブラートで包むと効果が期待できない
出典
- 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)」第3章 主な医薬品とその作用 Ⅲ 胃腸に作用する薬 1 胃の薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)「2)代表的な配合成分等、主な副作用、相互作用、受診勧奨」 — (a)制酸成分(i〜v の5系統、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの皮膜形成、ボレイ、炭酸飲料等での服用、アルミニウムを含む成分と透析療法・脚注99アルミニウム脳症・脚注100アルミニウム骨症、腎臓病と無機塩類の排泄、他の医薬品との併用と高カルシウム血症・高マグネシウム血症、カルシウム/アルミニウムは止瀉薬・マグネシウムは瀉下薬にも配合される旨)、(b)健胃成分(味覚・嗅覚を刺激する仕組み、オブラート等で遮蔽すると効果が期待できない旨、①オウバク・オウレンの基原)
- 同 2 腸の薬(整腸薬、止瀉薬、瀉下薬)— (b)止瀉成分(①収斂成分=ビスマスを含む成分・タンニン酸アルブミン・ゴバイシ等、細菌性の下痢や食中毒での使用に関する警告、ビスマスの1週間以上の継続使用・飲酒・胃十二指腸潰瘍・血液-胎盤関門、タンニン酸アルブミンのショックと牛乳アレルギー、②ロペラミド塩酸塩の適用対象・15歳未満・2〜3日間・胃腸鎮痛鎮痙薬との併用・イレウス様症状)、瀉下成分(②無機塩類=マグネシウムを含む成分と腎臓病・高マグネシウム血症、硫酸ナトリウムと心臓病、脚注108の浸透圧、③膨潤性瀉下成分と十分な水分摂取、④ジオクチルソジウムスルホサクシネート、⑤マルツエキス)
編集部の見方:この範囲は成分数がいちばん多く、教材でも薬効群ごとに章立てされます。ところが原文を読むと、制酸成分の節に「カルシウム、アルミニウムを含む成分については止瀉薬、マグネシウムを含む成分については瀉下薬に配合される成分でもあり」という薬効群をまたぐ一文が置かれています。この1文が、実は範囲全体の地図になっています。金属で並べ替えると、同じ成分を別々の場所で覚え直す必要が消え、しかも副作用の向き(便秘か下痢か)と相談すべき相手(透析・腎臓病・心臓病)まで同じ軸に乗ります。金属を持たない成分だけが個別暗記の対象で、その数は多くありません。 ただしカルメロースカルシウムのように、名前に金属が入っていても別枠のものがあるので、そこだけは例外として持っておく必要があります。











