結論:避ける患部は同じ。理由が違うから、両方を覚える必要がない
外皮用薬の抗炎症成分は2系統あります。ステロイド性と非ステロイド性(NSAIDs)です。そして手引きは、どちらについてもほぼ同じ患部を避けろと書いています。
水痘(水疱瘡)、みずむし、たむし等又は化膿している患部については症状を悪化させるおそれがあり、使用を避ける必要がある。(ステロイド性抗炎症成分)
みずむし、たむし等又は化膿している患部への使用は避ける必要がある。(非ステロイド性抗炎症成分)
▶️ ここで「両方とも同じだから1つ覚えれば済む」と流すと、理由を問う問題で落とします。避ける患部は同じですが、手引きが書いている理由はまったく別です。
| 避ける理由(手引きの記述) | |
|---|---|
| ステロイド性 | 末梢組織の免疫機能を低下させる作用も示し、細菌、真菌、ウイルス等による皮膚感染(白癬症、にきび、化膿症状)や持続的な刺激感の副作用が現れることがある |
| 非ステロイド性 | 殺菌作用はないため、皮膚感染症に対しては効果がなく、痛みや腫れを鎮めることでかえって皮膚感染が自覚されにくくなる(不顕性化する) |
▶️ ステロイドは「感染を悪化させる」。NSAIDs は「感染を見えなくする」。 前者は免疫を落とすから、後者は殺菌しないのに症状だけ消すから。結論が同じで理由が違う、というのがこの範囲の骨格です。
🔴 ステロイドだけ「水痘(水疱瘡)」が入っているのも、この理由から出てきます。ウイルス感染を免疫低下で悪化させる側だからです。NSAIDs 側の記述に水痘は入っていません。
ステロイドは「範囲」で3回制限されている
ステロイド性抗炎症成分の制限は、どれも「範囲」の話です。
① 対象は一部分・一時的なものだけ
体の一部分に生じた湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも、虫さされ等の一時的な皮膚症状(ほてり・腫れ・痒み等)の緩和を目的とするものであり、広範囲に生じた皮膚症状や、慢性の湿疹・皮膚炎を対象とするものではない。
② 濃度が一定を超えると長期連用を避ける
ステロイド性抗炎症成分をコルチゾンに換算して1g又は1mL 中 0.025mg を超えて含有する製品では、特に長期連用を避ける必要がある。
③ 短期でも、広範囲なら量が増える
短期間の使用であっても、患部が広範囲にわたっている人では、……ステロイド性抗炎症成分の吸収量が相対的に多くなるため、適用部位を限る等、過度の使用を避けるべきである。
▶️ ③が効きます。「短期間なら広範囲でもよい」と読みたくなりますが、手引きは短期間でも広範囲はだめと書いています。理由は吸収量です。
🔴 数字は「コルチゾンに換算して1g又は1mL中0.025mg」です。換算の基準がコルチゾンであることまで含めて問われます。
⚠️ 主なステロイド性抗炎症成分は、デキサメタゾン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル。長い名前が並びますが、「〜ゾン」「〜ゾロン」で当たりがつきます。
NSAIDs は数字が4つある
非ステロイド性のほうは、具体的な数量と期間が並びます。ここは丸暗記が要る数少ない箇所です。
| 何 | 数字 |
|---|---|
| 塗り薬・エアゾール剤の使用量 | 1週間あたり50g(又は50mL)を超えての使用を避ける |
| 貼付剤の使用期間 | 連続して2週間以上の使用を避ける |
| インドメタシンの年齢制限 | 11歳未満の小児(含量1%の貼付剤では15歳未満) |
| その他の成分の年齢制限 | 15歳未満向けの製品はない |
▶️ インドメタシンだけが2段になっているのがひっかけどころです。原則11歳未満、ただし含量1%の貼付剤では15歳未満。
そして前提として、手引きはこう書いています。
これらは過度に使用しても鎮痛効果が増すことはなく、また、その場合の安全性は確認されていない
▶️ 上の数量制限は「効かなくなるから」ではなく、増やしても効果は増えず安全性が確認されていないからです。
全身への影響が2つ書かれている
外用薬なのに、全身の話が出てきます。
- 喘息:内服の解熱鎮痛成分と同様、喘息の副作用を引き起こす可能性があるため、喘息を起こしたことがある人では使用を避ける
- 妊婦:吸収された成分の一部が循環血液中に入る可能性があり、妊婦又は妊娠していると思われる女性では、胎児への影響を考慮して使用を避けるべき
▶️ 「外用だから全身には関係ない」は誤りという形で問われます。
⚠️ 手引きは脚注で、妊娠末期のラットに経口投与した実験で胎児に動脈管の収縮が見られたとの報告があることに触れています。
個別に名指しされている成分は4つだけ
NSAIDs の中で、成分名を挙げて注意が置かれているのは限られています。
ケトプロフェン — 光線過敏症と交叉アレルギー
いちばん記述が長い成分です。2つの話が入っています。
(1) 交叉アレルギー
チアプロフェン酸、スプロフェン、フェノフィブラート(いずれも医療用医薬品の有効成分)又はオキシベンゾン、オクトクリレン(化粧品や医薬部外品に紫外線吸収剤として配合される化合物)のような物質でアレルギー感作された人は、それらと分子の化学構造が類似しているケトプロフェンでもアレルギーを起こすおそれが大きい
▶️ 医療用医薬品が3つ、紫外線吸収剤が2つ。5つの並びを「薬3・化粧品2」で分けると思い出しやすくなります。
(2) 光線過敏症
紫外線により、使用中又は使用後しばらくしてから重篤な光線過敏症が現れることがあるため、……使用している間及び使用後も当分の間は、天候にかかわらず、戸外活動を避けるとともに、日常の外出時も塗布部を衣服、サポーター等で覆い、紫外線に当たるのを避ける必要がある。ただし、ラップフィルム等の通気性の悪いもので覆うことは適当でない。
🔴 ここは3つの「意外な条件」が全部出題材料になります。
- 使用後も当分の間(使っている間だけではない)
- 天候にかかわらず(曇りでも)
- ラップフィルム等の通気性の悪いもので覆うのは不適当(覆えばよいわけではない)
▶️ とくに3つ目が引っかけとして作りやすい形です。「覆う」と書いてあるので、覆えるものなら何でもよいと読ませてから否定させます。
⚠️ まれな重篤副作用としてアナフィラキシー、接触皮膚炎、光線過敏症。その他に腫れ、刺激感、水疱・ただれ、色素沈着、皮膚乾燥。
ピロキシカム — 光線過敏症だが「重篤なものは知られていない」
今のところ重篤なものは知られていないが、光線過敏症の副作用を生じることがあり、野外活動が多い人では、他の抗炎症成分が配合された製品を選択することが望ましい
▶️ 光線過敏症が2成分に出るので、ケトプロフェンとの差を持っておきます。ケトプロフェンは「重篤な」光線過敏症、ピロキシカムは「重篤なものは知られていない」。
インドメタシン — 貼る前に半日試す
皮膚が弱い人がインドメタシン含有の貼付剤を使用する際には、あらかじめ1〜2cm角の小片を腕の内側等の皮膚の薄い部位に半日以上貼ってみて、皮膚に異常を生じないことを確認することが推奨されている
▶️ 数字が3つ(1〜2cm角・腕の内側・半日以上)。そのまま出ます。
ウフェナマート — 機序がはっきりしていない
末梢組織(患部局所)におけるプロスタグランジンの産生を抑える作用については必ずしも明らかにされておらず、炎症を生じた組織に働いて、細胞膜の安定化、活性酸素の生成抑制などの作用により、抗炎症作用を示すと考えられている
▶️ NSAIDs の定義は「プロスタグランジンの産生を抑える作用を示す成分」ですが、ウフェナマートだけはその作用がはっきりしていないと書かれています。定義から外れて見えるほうが正しいという珍しい成分です。
⚠️ 用途も違います。ウフェナマートは皮膚の炎症によるほてりや痒み等の緩和、インドメタシン等は筋肉痛、関節痛、打撲、捻挫等による鎮痛。手引きは①と②で節を分けています。
覚えなくてよいもの、1行で済むもの
同じ節に並ぶ残りは、負荷が軽い順に片づきます。
- サリチル酸メチル・サリチル酸グリコール:サリチル酸に分解されてプロスタグランジン産生抑制も期待されるが、主として局所刺激により患部の血行を促し、末梢の知覚神経に軽い麻痺を起こすことで鎮痛
- イブプロフェンピコノール:イブプロフェンの誘導体だが、外用での鎮痛作用はほとんど期待されない。専らにきび治療薬として用いられる
- その他の抗炎症成分:グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム(比較的穏やかな抗炎症作用)
- 局所麻酔成分:ジブカイン塩酸塩、リドカイン、アミノ安息香酸エチル、テシットデシチン。加えてアンモニアが主に虫さされに用いられ、皮膚刺激性が強いため粘膜や目の周りは避ける
- 抗ヒスタミン成分:ジフェンヒドラミン等。いずれも副作用として患部の腫れが現れることがある
▶️ イブプロフェンピコノールは名前が痛み止めなのに鎮痛作用がほとんど期待されない、という形でよく問われます。
冷感と温感の使い分けには条件が付いている
局所刺激成分は、冷感と温感が対になっています。ここには使う場面の指定があります。
打撲や捻挫などの急性の腫れや熱感を伴う症状に対しては、冷感刺激成分が配合された外用鎮痛薬が適すとされる。
| 成分 | 働き | |
|---|---|---|
| 冷感刺激 | メントール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油 | 冷感刺激を与え、軽い炎症を起こして反射的な血管拡張で血行を促す。知覚神経を麻痺させて鎮痛・鎮痒 |
| 温感刺激 | カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル | 温感刺激を与え、末梢血管を拡張させて血行を促す |
⚠️ いずれも目や目の周り、粘膜面には刺激が強すぎるため使用を避けることとされています。
▶️ 冷感刺激成分が「軽い炎症を起こして」血行を促すというのは直感に反するので、覚えておく価値があります。
剤形の注意は3つだけ、しかも数字が1つ
外皮用薬に共通する剤形の注意は、覚える量が少ない割に問われます。
| 剤形 | 注意 |
|---|---|
| 塗り薬(軟膏剤、クリーム剤) | 容器から直接指に取って繰り返すと容器内に雑菌が混入するおそれ。いったん手の甲などに必要量を取ってから塗布するのが望ましい |
| 貼付剤(テープ剤、パップ剤) | 汗や汚れが付いた状態では浸透性が低下し剥がれやすい。同じ部位に連続して貼付するとかぶれやすい |
| スプレー剤、エアゾール剤 | 目の周囲や粘膜(口唇等)への使用は避ける。至近距離や同じ部位への連続噴霧で凍傷。連続して噴霧する時間は3秒以内が望ましい |
▶️ 数字は「3秒以内」の1つだけです。
そして使い方の前提が2つあります。
適用する皮膚表面に汚れや皮脂が多く付着していると有効成分の浸透性が低下するため、患部を清浄にしてから使用することが重要である
表皮の角質層が柔らかくなることで有効成分が浸透しやすくなることから、入浴後に用いるのが効果的とされる
解いて、機序と結論を取り違えていないか確かめる
この範囲は「避ける患部」が繰り返し出てくるので、結論だけは覚えられます。落とすのは理由を入れ替えた肢です。「ステロイド性抗炎症成分は殺菌作用がないため化膿した患部を避ける」——結論は合っていて理由が入れ替わっている形は、読むだけでは検出できません。
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⚠️ ぴよパスの問題は本試験の再現ではなく、厚生労働省の手引きにもとづいて独自に作成した予想問題です。
まとめ
- ステロイドと NSAIDs は同じ患部(みずむし・たむし・化膿)を避けるが理由が違う
- ステロイド=免疫機能を低下させるから悪化する。NSAIDs=殺菌作用がなく不顕性化するから
- 水痘(水疱瘡)はステロイド側にだけ入っている
- ステロイドは体の一部分・一時的が対象。広範囲・慢性は対象外。短期間でも広範囲はだめ
- 濃度の目安はコルチゾンに換算して1g又は1mL中0.025mg
- NSAIDs は1週間50g(50mL)、貼付剤は連続2週間以上を避ける
- 年齢はインドメタシン11歳未満(含量1%貼付剤は15歳未満)/その他は15歳未満向け製品なし
- 喘息の既往と妊婦は外用でも避ける
- ケトプロフェンは使用後も当分の間・天候にかかわらず・ラップフィルムで覆うのは不適当
- ウフェナマートはプロスタグランジン産生抑制がはっきりしていない
- イブプロフェンピコノールは外用での鎮痛作用がほとんど期待されない(にきび治療薬)
- スプレー剤の連続噴霧は3秒以内。使用は患部を清浄にしてから、入浴後が効果的
出典
- 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)」第3章 主な医薬品とその作用 Ⅹ 皮膚に用いる薬 — 外皮用薬の使用前提(患部の清浄、入浴後)、【剤形による取扱い上の注意】①塗り薬②貼付剤③スプレー剤・エアゾール剤、【外皮用薬に共通する主な副作用】
- 同「2)痒み、腫れ、痛み等を抑える配合成分」 — (a)ステロイド性抗炎症成分(主な成分名、免疫機能低下による皮膚感染の副作用、水痘・みずむし・たむし・化膿患部での使用回避、対象が体の一部分の一時的な皮膚症状であること、コルチゾン換算1g又は1mL中0.025mgを超える製品の長期連用回避、広範囲使用時の吸収量)、(b)非ステロイド性抗炎症成分(NSAIDs の定義、①ウフェナマート、②インドメタシン・ケトプロフェン・フェルビナク・ピロキシカム・ジクロフェナクナトリウムの用途と1週間50g/貼付剤2週間の目安、殺菌作用がないことと不顕性化、喘息・妊婦、インドメタシン11歳未満および含量1%貼付剤15歳未満・その他15歳未満向け製品なし、インドメタシンの貼付前確認、ケトプロフェンの交叉アレルギーと光線過敏症、ピロキシカムの光線過敏症、③サリチル酸メチル・サリチル酸グリコール、イブプロフェンピコノール)、(c)その他の抗炎症成分、(d)局所麻酔成分、(e)抗ヒスタミン成分、(f)局所刺激成分(①冷感刺激成分②温感刺激成分)
編集部の見方:この節は成分数が多いので、教材はどうしても「成分名 → 特徴」の縦の並びになります。ところが実際に問われるのは「使ってはいけない患部」と「その理由」で、そこはステロイドと NSAIDs の2系統しかありません。結論が同じで理由が違う組み合わせは、正誤問題を作るのにいちばん都合がよい形です。原文を読むと、ステロイド側には「免疫機能を低下させる」、NSAIDs 側には「殺菌作用はない」「不顕性化する」と、根拠がはっきり書き分けられています。結論を覚えるのではなく、書き分けのほうを覚えると、成分名が増えても崩れません。
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