結論:覚える軸は「歯状線」と「外用なのに全身」の2つだけ
痔の薬は配合成分が多く、局所麻酔・鎮痒・抗炎症・組織修復・止血・殺菌消毒・生薬・ビタミンと8系統も並びます。しかし問われる論点は、ほぼ2つに集約されます。
- 内痔核と外痔核の違い(=解剖の1本の線から全部導ける)
- 坐剤・注入軟膏は外用なのに全身に影響する(=成分ごとの注意の理由になる)
この2つを先に置くと、8系統の成分は「どちらの話をしているか」で整理できます。
① 歯状線の上か下か、それだけ
痔核(いぼ痔)は、できる場所で名前が変わります。手引きの記述はこうです。
直腸粘膜と皮膚の境目となる歯状線より上部の、直腸粘膜にできた痔核を内痔核と呼ぶ。直腸粘膜には知覚神経が通っていないため、自覚症状が少ないことが特徴である。排便時に、肛門から成長した痔核がはみ出る脱肛、出血等の症状が現れる。
一方、歯状線より下部の、肛門の出口側にできた痔核を外痔核と呼ぶ。内痔核と異なり、排便と関係なく、出血や患部の痛みを生じる。
▶️ 暗記するのは「歯状線より上か下か」の1点だけです。 残りはそこから出てきます。
| 内痔核 | 外痔核 | |
|---|---|---|
| 場所 | 歯状線より上部(直腸粘膜) | 歯状線より下部(肛門の出口側) |
| 知覚神経 | 通っていない | (通っている) |
| 痛み | 自覚症状が少ない | 患部の痛みを生じる |
| 症状の出方 | 排便時に脱肛、出血 | 排便と関係なく出血や痛み |
🔴 「痛くないほうが内側」です。直腸粘膜に知覚神経が通っていないから、というのが理由です。理由を持てば、入れ替えた肢はその場で切れます。
⚠️ 痔核の主な要因は「便秘や長時間同じ姿勢でいる等、肛門部に過度の圧迫をかけること」とされています。
残り2つの病態は、原因が書き分けられている
痔の主な病態は3つです。痔核以外の2つも、原因の書き方が違います。
裂肛(切れ痔・裂け痔)— 硬い便でも、下痢でも起きる
便秘等により硬くなった糞便を排泄する際や、下痢の便に含まれる多量の水分が肛門の粘膜に浸透して炎症を起こしやすくなった状態で、勢いよく便が通過する際に粘膜が傷つけられることで生じる。
▶️ 便秘だけでなく下痢でも起きる、という両方向が書かれています。「裂肛は便秘によって生じる」だけを覚えていると、下痢を挙げた肢で迷います。
痔瘻 — 溜まって、化膿する
肛門内部に存在する肛門腺窩と呼ばれる小さなくぼみに糞便の滓が溜まって炎症・化膿を生じた状態で、体力低下等により抵抗力が弱まっているときに起こりやすい。炎症・化膿が進行すると、肛門周囲の皮膚部分から膿が溢れ、その膿により周辺部の皮膚がかぶれ、赤く腫れて激痛を生じる。
▶️ 「肛門腺窩」という固有の語が出てくるのは痔瘻だけです。この語が見えたら痔瘻だと判断できます。
🔴 外用痔疾用薬の効能に痔瘻は入っていません。 手引きは外用痔疾用薬を「痔核(いぼ痔)又は裂肛(切れ痔)による痛み、痒み、腫れ、出血等の緩和、患部の消毒を目的とする」と書いています。3つのうち2つだけです。
② 外用なのに全身に効く、が成分注意の根拠
外用痔疾用薬の節は、次の一文から始まります。
外用痔疾用薬は局所に適用されるものであるが、坐剤及び注入軟膏では、成分の一部が直腸粘膜から吸収されて循環血流中に入りやすく、全身的な影響を生じることがあるため、配合成分によっては注意を要する場合がある。
▶️ これが以降の成分注意すべての前提です。 「外用だから安心」ではありません。
▶️ しかも剤形で差があります。全身への影響が問題になるのは坐剤と注入軟膏で、単なる軟膏剤や外用液剤ではありません。手引きは剤形を名指ししています。
実際に全身への注意が付いているのはメチルエフェドリン
止血成分のうち、アドレナリン作動成分に長い注意が置かれています。
メチルエフェドリン塩酸塩が配合された坐剤及び注入軟膏については、交感神経系に対する刺激作用によって心臓血管系や肝臓でのエネルギー代謝等にも影響を生じることが考えられ、心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能障害の診断を受けた人では、症状を悪化させるおそれがあり、……相談がなされるべきである。
▶️ 4つの病気(心臓病・高血圧・糖尿病・甲状腺機能障害)は、アドレナリン作動成分が出てくるたびに繰り返し登場する定番の組み合わせです。痔の薬でも同じ4つです。
⚠️ 高齢者についても記述があります。「心臓病や高血圧、糖尿病の基礎疾患がある場合が多く、また、一般的に心悸亢進や血圧上昇、血糖値上昇を招きやすい」ため、慎重な使用が求められます。
ステロイドのルールが、皮膚の薬と違う
ここが痔の薬でいちばん見落とされる差です。
なお、ステロイド性抗炎症成分が配合された坐剤及び注入軟膏では、その含有量によらず長期連用を避ける必要がある。
▶️ 「その含有量によらず」という書き方です。
外皮用薬のほうは、濃度に条件が付いていました。
| 長期連用を避ける条件 | |
|---|---|
| 外皮用薬のステロイド | コルチゾンに換算して1g又は1mL中0.025mgを超えて含有する製品で、特に長期連用を避ける |
| 痔の坐剤・注入軟膏のステロイド | その含有量によらず長期連用を避ける |
🔴 痔のほうが厳しい、と押さえてください。理由は上の「直腸粘膜から吸収されて循環血流中に入りやすい」です。濃度が低くても入るから、濃度で線を引かない。
⚠️ ただし「その含有量によらず」は痔だけの規定ではありません。 手引きは同じ表現を歯痛・歯槽膿漏薬と口内炎用薬にも使っており、そちらの理由は「口腔内に適用されるため」です。
▶️ つまり分かれ目は薬効群ではなく、適用する場所が粘膜かどうかです。直腸粘膜と口腔粘膜は同じ扱いで、皮膚だけが濃度で線を引かれます。この読み方なら、3か所を別々に覚える必要がありません。
外皮用薬側のルールは別記事にまとめています。
止血成分は「血管を締める」か「膜を張る」かで割れる
止血成分が2種類あり、やり方がまったく違います。
| 成分 | どうやって止血するか | |
|---|---|---|
| アドレナリン作動成分 | テトラヒドロゾリン塩酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩、エフェドリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩 | 血管収縮作用による |
| 収斂保護止血成分 | タンニン酸、酸化亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、卵黄油 | 粘膜表面に不溶性の膜を形成することによる粘膜の保護・止血 |
▶️ 「不溶性の膜を形成」が収斂保護止血成分の決め文句です。血管には手を出しません。
⚠️ タンニン酸は、鎮痛鎮痙作用を示すロートエキスと組み合わせて用いられることがあります(ロートエキス・タンニン坐剤、複方ロートエキス・タンニン軟膏)。
生薬は「同じ植物の違う部位」が出る
内用痔疾用薬の生薬で、いちばん問われやすいのが基原です。
| 生薬 | 基原 | 期待される作用 |
|---|---|---|
| カイカ | マメ科のエンジュの蕾 | 止血 |
| カイカク | マメ科のエンジュの成熟果実 | 止血 |
| オウゴン | シソ科のコガネバナの周皮を除いた根 | 抗炎症 |
| セイヨウトチノミ | トチノキ科のセイヨウトチノキ(マロニエ)の種子 | 抗炎症(外用では血行促進・抗炎症) |
| シコン(外用) | ムラサキ科のムラサキの根 | 新陳代謝促進、殺菌、抗炎症 |
🔴 カイカとカイカクは、同じエンジュの「蕾」と「成熟果実」です。どちらも止血なので、作用では区別できません。部位で区別します。
▶️ オウゴンの「周皮を除いた根」という限定も、そのまま出題されます。
⚠️ 内用痔疾用薬にはセンナ(又はセンノシド)、ダイオウ、カンゾウも配合されます。これらは他の節で扱われる共通の注意(授乳婦、偽アルドステロン症など)がそのまま乗ります。
覚えなくてよいもの、1行で済むもの
残りは負荷が軽い順に片づきます。
- 組織修復成分:アラントイン、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイネート(別名アルクロキサ)。創傷の治癒を促す
- グリチルレチン酸:グリチルリチン酸が分解されてできる成分で、グリチルリチン酸と同様に作用する
- 止血成分(内用):カルバゾクロムは毛細血管を補強、強化して出血を抑える
- ビタミン成分:ビタミンE(トコフェロール)=血行改善、ビタミンA油=傷の治りを促す
- 局所刺激成分:クロタミトン=熱感刺激、カンフル・ハッカ油・メントール=冷感刺激
- 漢方処方製剤:乙字湯、芎帰膠艾湯。いずれもカンゾウを含む
▶️ グリチルレチン酸とグリチルリチン酸の関係(前者は後者が分解されてできる)は、名前が似ているぶん問われやすい形です。
▶️ 痔の漢方は2つとも カンゾウ を含みます。 例外がないので、そのまま覚えられます。
生活習慣の側も出題される
薬の話とは別に、予防の記述があります。
長時間座るのを避け、軽い運動によって血行を良くすることが痔の予防につながる。また、食物繊維の摂取を心がける等、便秘を避けることや香辛料などの刺激性のある食べ物を避けることなども痔の予防に効果的である。
▶️ 手引きは、痔疾用薬について「いずれもその使用と併せて、痔を生じた要因となっている生活習慣の改善等が図られることが重要である」とも書いています。薬だけで終わらせないという姿勢が問われます。
8系統を丸暗記しないで済むか、解けば分かる
この節は成分名の量に対して、実際に問われる論点が少ない場所です。歯状線と坐剤・注入軟膏の全身影響の2つを持っていれば、成分がどこに属するかは後から付いてきます。
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⚠️ ぴよパスの問題は本試験の再現ではなく、厚生労働省の手引きにもとづいて独自に作成した予想問題です。
まとめ
- 痔の主な病態は痔核・裂肛・痔瘻の3つ
- 歯状線より上=内痔核。直腸粘膜に知覚神経が通っていないから自覚症状が少ない
- 歯状線より下=外痔核。排便と関係なく出血や痛みを生じる
- 裂肛は便秘でも下痢でも起きる。痔瘻は肛門腺窩に糞便の滓が溜まって化膿
- 外用痔疾用薬の対象は痔核と裂肛。痔瘻は入っていない
- 坐剤及び注入軟膏は直腸粘膜から吸収されて循環血流中に入りやすい=外用でも全身に影響
- だからステロイドは「その含有量によらず」長期連用を避ける(外皮用薬は濃度で線を引く)
- ⚠️ 同じ表現は歯槽膿漏薬・口内炎用薬にもある(理由は「口腔内に適用されるため」)。粘膜かどうかで分かれる
- メチルエフェドリンは心臓病・高血圧・糖尿病・甲状腺機能障害で相談
- 止血は血管収縮(アドレナリン作動)と不溶性の膜を形成(収斂保護)の2系統
- カイカ=エンジュの蕾、カイカク=エンジュの成熟果実。どちらも止血
- 痔の漢方(乙字湯・芎帰膠艾湯)はどちらもカンゾウを含む
出典
- 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)」第3章 主な医薬品とその作用 Ⅴ 排泄に関わる部位に作用する薬 1 痔の薬「1)痔の発症と対処、痔疾用薬の働き」 — 痔の3病態(痔核・裂肛・痔瘻)の定義、歯状線を境とする内痔核・外痔核の区別と知覚神経・症状の差、裂肛および痔瘻の成因、予防のための生活習慣、外用痔疾用薬と内用痔疾用薬の区分と目的
- 同「2)代表的な配合成分等、主な副作用」 — 坐剤及び注入軟膏における直腸粘膜からの吸収と全身的影響、(a)局所麻酔成分とショック(アナフィラキシー)、(b)鎮痒成分(①抗ヒスタミン成分②局所刺激成分)、(c)抗炎症成分(①ステロイド性抗炎症成分の含有量によらない長期連用回避 ②グリチルレチン酸)、(d)組織修復成分、(e)止血成分(①アドレナリン作動成分とメチルエフェドリン塩酸塩の注意・高齢者への留意 ②収斂保護止血成分とロートエキスとの組合せ)、(f)殺菌消毒成分、(g)生薬成分(①シコン②セイヨウトチノミ)、(h)ビタミン成分、⚫内用痔疾用薬(生薬成分、①オウゴン・セイヨウトチノミ ②カイカ・カイカク、止血成分カルバゾクロム、ビタミン成分)、⚫漢方処方製剤(乙字湯・芎帰膠艾湯とカンゾウ)
⚠️ なお、この節の成分の列挙は原文では「〜等の殺菌消毒成分」「〜等のアドレナリン作動成分」のように開いた書き方です。本記事で挙げた成分名は手引きが名前を挙げているもので、それで全部という意味ではありません。番号付きで閉じているのは外用の生薬(①シコン ②セイヨウトチノミ)だけです。
編集部の見方:この節は成分の系統が8つあるので、教材では「痔の薬は覚えることが多い」と説明されがちです。しかし原文を通して読むと、問われる論点は解剖の1本の線と剤形の1つの性質にほぼ集約されています。とくに歯状線の記述は、位置・知覚神経・症状の3つを1つの文で結んでいるので、位置さえ覚えれば残りは導けます。ステロイドの長期連用ルールが「含有量によらず」となっているのも、直腸粘膜からの吸収という前提から素直に出てきます。皮膚の薬では濃度の条件が付くので、両方を扱う教材ではこの差が埋もれます。並べて比べる機会をつくると、どちらも忘れにくくなります。











