結論:効能を横に読むと割れない。手引きの偏りに乗る
ビタミンの節でいちばんやってはいけないのが、8種を同じ密度で覚えることです。理由ははっきりしています。効能の文言が重なりすぎていて、そこでは区別が付かないからです。
実際に、ビタミンB2とビタミンB6の効能を並べてみます。
| B2主薬製剤 | B6主薬製剤 | |
|---|---|---|
| 共通 | 口角炎(唇の両端の腫れ・ひび割れ)、口唇炎(唇の腫れ・ひび割れ)、口内炎、舌の炎症、湿疹、皮膚炎、かぶれ、ただれ、にきび・吹き出物、肌あれ | 同じ10語 |
| 差 | 赤ら顔に伴う顔のほてり、目の充血、目の痒み | 手足のしびれ |
▶️ 10語まるごと一致します。 効能で覚えようとすると、この2つは永久に割れません。
そして「皮膚や粘膜」という語は A・B2・B6・C とその他に散り、「手足のしびれ」も E・B1・B6 に出てきます。共通語は先に捨てるのが正解です。
▶️ 代わりに使うのが、手引き自身の書き方の偏りです。次の3つは、この節で1か所ずつしか出てきません。
- 数字が付くのは A だけ
- 「◯◯の過剰症としては」と名指しされるのは D とカルシウムだけ
- B1・B2・B6 は三大栄養素の割り算になっている
① 三大栄養素の割り算(B1・B2・B6)
この3つは、手引きがほぼ同じ構文で書いていて、担当する栄養素だけが入れ替わります。
ビタミンB1は、炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、神経の正常な働きを維持する作用がある。また、腸管運動を促進する働きもある。
ビタミンB2は、脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素である。
ビタミンB6は、タンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の健康維持、神経機能の維持に重要な栄養素である。
▶️ B1=炭水化物、B2=脂質、B6=タンパク質。 三大栄養素が番号順に並びます。
🔴 構文が同型だから、入れ替え肢がいちばん作りやすい場所でもあります。「ビタミンB2はタンパク質の代謝に関与し」——こう来ます。
⚠️ B1だけ情報が多い(神経の正常な働き+腸管運動を促進)ので、そこも押さえておきます。B1主薬製剤の効能には脚気が入ります。
残る3つは部位で決まります。
| 何を担当するか | |
|---|---|
| A | 夜間視力を維持したり、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ |
| D | 腸管でのカルシウム吸収及び尿細管でのカルシウム再吸収を促して、骨の形成を助ける |
| B12 | 赤血球の形成を助け、また、神経機能を正常に保つ |
▶️ A=目、D=骨、B12=血。 3語で足ります。
② 数字が付くのはAだけ。しかも2つある
この節で国際単位という単位が出てくるのはビタミンAだけです。しかも数字が2つあり、意味が違います。
一般用医薬品におけるビタミンAの1日分量は4000国際単位が上限となっているが、妊娠3ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間にビタミンAを1日10000国際単位以上摂取した妊婦から生まれた新生児において先天異常の割合が上昇したとの報告がある。
| 数字 | 何の数字か |
|---|---|
| 4000国際単位 | 一般用医薬品におけるビタミンAの1日分量の上限 |
| 10000国際単位 | 妊娠3ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間に1日この量以上摂取した妊婦から生まれた新生児で、先天異常の割合が上昇したとの報告 |
🔴 取り違え肢が作れる唯一の場所です。 「一般用医薬品の1日分量の上限は10000国際単位」という形になります。
▶️ 対象になる人も3つ書かれています。「妊娠3ヶ月以内の妊婦、妊娠していると思われる女性及び妊娠を希望する女性」。まだ妊娠していない人(希望する女性)まで入るのが特徴です。
▶️ そして注意の範囲は薬だけではありません。「医薬品以外からのビタミンAの摂取を含め、過剰摂取に留意する必要がある」。
⚠️ 打ち消しも用意されています。 手引きは脚注で、「人参などの野菜類に含まれるβ-カロテンは、体内に入ると、必要な分だけがビタミンAに転換されるため、ビタミンAの過剰摂取につながる心配はないとされる」としています。「野菜からでも過剰になる」は誤りです。
③「過剰症」と名指しされるのはDとカルシウム
総論では「脂溶性ビタミンでは、過剰摂取により過剰症を生じるおそれがある」と一般論が書かれています。しかし、「◯◯の過剰症としては〜が知られている」と個別に名指しされるのは2つだけです。
ビタミンDの過剰症としては、高カルシウム血症、異常石灰化が知られている。
カルシウムの過剰症としては、高カルシウム血症が知られている。
▶️ どちらも高カルシウム血症。ビタミンDにだけ「異常石灰化」が追加されます。
そして高カルシウム血症の説明に、見落としやすい一文があります。
高カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が非常に高くなった状態で、自覚症状がないこともあるが、初期症状としては、便秘、吐きけ、嘔吐、腹痛、食欲減退、多尿等が現れる。
🔴 「自覚症状がないこともある」が効きます。症状で気づけるとは限りません。
⚠️ カルシウムについては、もう1つ実務的な注意があります。「カルシウムを含む成分は、胃腸薬等、カルシウムの補給を目的としない医薬品においても配合されており、併用によりカルシウムの過剰摂取を生じることのないよう留意される必要がある」。制酸成分として入っているぶんが乗ります。
EとCは「体内の脂質を酸化から守る」を共有する
この2つだけ、同じ句を持っています。
ビタミンEは、体内の脂質を酸化から守り、細胞の活動を助ける栄養素であり、血流を改善させる作用もある。
ビタミンCは、体内の脂質を酸化から守る作用(抗酸化作用)を示し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素である。メラニンの産生を抑える働きもあるとされる。
▶️ 共通は「体内の脂質を酸化から守る」。分けるのは E の「血流を改善」と C の「メラニンの産生を抑える」です。
⚠️ ただし C の「皮膚や粘膜の機能を正常に保つ」は A・B2 とも重なるので、そこでは分けられません。
ビタミンEには、副作用に見えるが違う現象がある
ビタミンEは下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌の調節に関与するとされており、ときに生理が早く来たり、経血量が多くなったりすることがある。この現象は内分泌のバランス調整による一時的なものであるが、出血が長く続く場合には他の原因による不正出血も考えられるため、医療機関を受診して専門医の診療を受けるなどの対応が必要である。
▶️ 「一時的なもの」だが「長く続く場合は受診」という二段構えです。片方だけを切り取った肢が作れます。
B2の尿が黄色くなる件は、章をまたいで完成する
滋養強壮保健薬の節に書かれているのは、事実だけです。
ビタミンB2の摂取により、尿が黄色くなることがある。
▶️ 「では、それは副作用なのか」には答えていません。 答えは別の章にあります。高コレステロール改善薬のリボフラビンの項です。
リボフラビンの摂取によって尿が黄色くなることがあるが、これは使用の中止を要する副作用等の異常ではない。
🔴 同じ現象が2か所に出て、片方にだけ「異常ではない」という打ち消しが付いています。 滋養強壮の節だけを読んでいると、この結論に届きません。
医薬部外品との線引きが、この節の入口にある
節の冒頭に、医薬品と医薬部外品を分ける規定が置かれています。成分の話に入る前に、ここが問われます。
医薬部外品の保健薬……の効能・効果の範囲は、滋養強壮、虚弱体質の改善、病中・病後の栄養補給等に限定されている。神経痛、筋肉痛、関節痛、しみ・そばかす等のような特定部位の症状に対する効能・効果については、医薬品においてのみ認められている。
▶️ 「特定部位の症状」かどうかが分かれ目です。全身の話は医薬部外品でも書けますが、部位を名指しした効能は医薬品だけ。
▶️ ここで挙がっている4語(神経痛、筋肉痛、関節痛、しみ・そばかす)は、後ろの個別のビタミンの効能に再登場します。B1主薬製剤に「神経痛、筋肉痛・関節痛」、C主薬製剤に「しみ、そばかす」があります。
⚠️ これは2か所を突き合わせて分かることで、手引きが「B1とCが医薬品限定の例だ」と書いているわけではありません。ただ、冒頭の規定が抽象論ではないことの確認にはなります。
線引きはあと2つあります。
- 生薬成分:カシュウ、ゴオウ、ゴミシ、ジオウ、ロクジョウ等は医薬品においてのみ認められている
- ビタミン成分:1日最大量が既定値を超えるものは医薬品としてのみ認められている
定義まわりで1つだけ覚えるなら「ビタミン様物質」
ビタミンの定義は長いのですが、対になる用語のほうが問われます。
不足した場合に欠乏症を生じるかどうか明らかにされていないが、微量でビタミンと同様に働く又はビタミンの働きを助ける化合物については「ビタミン様物質」と呼ばれる。
▶️ 分かれ目は「欠乏症を生じるかどうかが明らかにされているか」です。働きが似ているかどうかではありません。
⚠️ ビタミンの定義側にも打ち消しがあります。「微量(それ自体エネルギー源や生体構成成分とならない)で体内の代謝に重要な働きを担う」。エネルギー源ではない、が入っています。
「脂溶性はA・D・E・K」の暗記表について
市販の教材でおなじみの覚え方ですが、手引きのこの章にその列挙はありません。この節に出てくるのは「脂溶性ビタミンでは、過剰摂取により過剰症を生じるおそれがある」という一般論だけです。
▶️ 手引き全体で脂溶性・水溶性を成分名で挙げているのは第2章の肝臓の説明で、そこでは「脂溶性ビタミンであるビタミンA、D等のほか、ビタミンB6やB12等の水溶性ビタミン」という書き方です。
⚠️ 暗記表そのものは覚えやすさのための補助であって、手引きの記述ではありません。表を使うのは構いませんが、「手引きにそう書いてある」とは考えないでください。
▶️ ちなみにビタミンKは、滋養強壮保健薬の項目に登場しません。手引き全体でも第2章の大腸の説明に1度出るだけで、「血液凝固や骨へのカルシウム定着に必要」な物質として、大腸の腸内細菌が産生するという文脈です。
アミノ酸成分は「何をするか」が具体的
ビタミン以外の成分も、働きがはっきり書かれています。
- システイン:皮膚におけるメラニンの生成を抑えるとともに、皮膚の新陳代謝を活発にしてメラニンの排出を促す。また、肝臓においてアルコールを分解する酵素の働きを助け、アセトアルデヒドの代謝を促す
- その他:ナイアシン(ニコチン酸アミド、ニコチン酸)、パントテン酸カルシウム、ビオチン等が、皮膚や粘膜などの機能を維持することを助ける栄養素として配合される
▶️ システインは「メラニン」と「二日酔い」の両方に出てきます。 効能にも「しみ・そばかす・日焼けなどの色素沈着症、全身倦怠、二日酔い」と並びます。メラニンを抑えるのはCとシステインの2つなので、対で覚えておくと迷いません。
偏りに乗れているかは、解けば分かる
この節の問題は、同型の3文(B1・B2・B6)の栄養素を入れ替えるか、Aの2つの数字を取り違えさせるか、過剰症をDでない成分に付けるか——ほぼこの3通りです。
ぴよパスでは登録販売者のオリジナル予想問題を章ごとに無料公開しています。
⚠️ ぴよパスの問題は本試験の再現ではなく、厚生労働省の手引きにもとづいて独自に作成した予想問題です。
まとめ
- 効能では割れない。B2とB6は10語が一致し、「皮膚や粘膜」「手足のしびれ」も複数に散る
- B1=炭水化物、B2=脂質、B6=タンパク質(三大栄養素の割り算・番号順)
- A=目(夜間視力)、D=骨、B12=赤血球
- 数字が付くのはAだけ。4000国際単位=1日分量の上限、10000国際単位=先天異常の報告
- 対象は妊娠3ヶ月以内の妊婦・妊娠していると思われる女性・妊娠を希望する女性。医薬品以外からの摂取も含む
- β-カロテンは過剰摂取につながる心配はないとされる
- 「過剰症」と名指しされるのはDとカルシウム。どちらも高カルシウム血症、Dは異常石灰化が追加
- 高カルシウム血症は自覚症状がないこともある
- EとCは「体内の脂質を酸化から守る」を共有。分けるのは血流改善(E)とメラニン(C)
- B2の尿の黄色は、「異常ではない」が別の章に書かれている
- 医薬部外品との線引きは「特定部位の症状かどうか」
出典
- 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)」第3章 主な医薬品とその作用 ⅩⅢ 滋養強壮保健薬「1)医薬品として扱われる保健薬」 — 滋養強壮保健薬の定義、医薬部外品の保健薬の効能・効果の範囲と特定部位の症状に関する限定、生薬成分(カシュウ・ゴオウ・ゴミシ・ジオウ・ロクジョウ等)およびビタミン成分の1日最大量に関する限定
- 同「2)ビタミン、カルシウム、アミノ酸等の働き、主な副作用」 — (a)ビタミン成分(ビタミン主薬製剤の定義、ビタミンおよびビタミン様物質の定義、脂溶性ビタミンの過剰症、①ビタミンA(4000国際単位・10000国際単位・対象となる女性・脚注154のβ-カロテン)②ビタミンD(高カルシウム血症・異常石灰化・初期症状・脚注155のくる病)③ビタミンE(ホルモン分泌の調節と一時的な現象)④ビタミンB1(脚気を含む効能)⑤ビタミンB2(効能と尿が黄色くなること)⑥ビタミンB6 ⑦ビタミンB12 ⑧ビタミンC ⑨その他)、(b)カルシウム成分、(c)アミノ酸成分等(①システイン)
- 同 第3章 Ⅳ-2 高コレステロール改善薬 — リボフラビンの摂取による尿の黄色が「使用の中止を要する副作用等の異常ではない」旨
- 同 第2章 — 肝臓が脂溶性ビタミン(A・D等)および水溶性ビタミン(B6・B12等)の貯蔵臓器である旨、大腸の腸内細菌がビタミンK等を産生する旨
編集部の見方:この範囲は「ビタミンごとに働きと欠乏症を覚える」という形で教えられるのが普通ですが、実際に原文を横に読むと、効能の文言が想像以上に重なっています。B2とB6が10語一致するのは象徴的で、効能表を作れば作るほど区別が付かなくなります。一方で手引きは、Aにだけ数字を置き、DとカルシウムにだけXの過剰症という言い回しを使い、B1・B2・B6を同じ構文で並べています。この偏りは出題者から見た「作りやすい場所」とほぼ一致します。 平等に覚えるのをやめて、偏っている側から取りにいくほうが、同じ時間で得点が伸びます。市販教材の「脂溶性はA・D・E・K」表がこの章に存在しないことも、原文に当たって初めて分かる部類の事実です。











