結論:5系統あるが、軸は「何を邪魔するか」の3つだけ
殺虫成分は成分名が多く、しかもカタカナが長いので敬遠されます。しかし手引きの分類は、作用機序で3つに割れるだけです。
| 何を邪魔するか | 系統 | 代表成分 |
|---|---|---|
| アセチルコリンエステラーゼを阻害 | 有機リン系 | ジクロルボス、ダイアジノン、フェニトロチオン、フェンチオン、トリクロルホン、クロルピリホスメチル、プロペタンホス |
| カーバメイト系 | プロポクスル | |
| オキサジアゾール系 | メトキサジアゾン | |
| 神経細胞に直接作用 | ピレスロイド系 | ペルメトリン、フェノトリン、フタルスリン |
| 有機塩素系 | DDT、オルトジクロロベンゼン | |
| 殺虫ではなく成長を止める | 昆虫成長阻害成分 | メトプレン、ピリプロキシフェン、ジフルベンズロン |
▶️ 成分名から系統を当てる必要はありません。 出題は「この系統は何を阻害するか」を聞く形が中心なので、3つの機序と、それぞれに属する系統を持てば足ります。
最大のひっかけは「不可逆か可逆か」
有機リン系とカーバメイト系は同じアセチルコリンエステラーゼ阻害です。ここで止めると、両者を区別する問題に対応できません。手引きは1語で書き分けています。
殺虫作用は、アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)と不可逆的に結合してその働きを阻害することによる。(有機リン系)
いずれも有機リン系殺虫成分と同様にアセチルコリンエステラーゼの阻害によって殺虫作用を示すが、有機リン系殺虫成分と異なり、アセチルコリンエステラーゼとの結合は可逆的である。(カーバメイト系・オキサジアゾール系)
▶️ 有機リン系=不可逆。カーバメイト系・オキサジアゾール系=可逆。
🔴 この1語の差が、そのまま毒性の差につながります。
| 有機リン系 | カーバメイト系・オキサジアゾール系 | |
|---|---|---|
| 結合 | 不可逆的 | 可逆的 |
| 毒性 | ほ乳類や鳥類では速やかに分解されて排泄されるため比較的低い | 一般に有機リン系に比べて毒性は低い |
| 高濃度・多量曝露時の症状 | 縮瞳、呼吸困難、筋肉麻痺等 | 呼吸困難等 |
▶️ 縮瞳が出るのは有機リン系です。副交感神経が優位になったときの症状なので、抗コリン成分とちょうど逆向きです。
⚠️ カーバメイト系・オキサジアゾール系には用途の指定もあります。ピレスロイド系殺虫成分に抵抗性を示す害虫の駆除に用いられる、と手引きは書いています。
人体に直接使える殺虫成分は1つだけ
この範囲でいちばん出しやすい一点が、ピレスロイド系の中にあります。
このうちフェノトリンは、殺虫成分で唯一人体に直接適用されるものである(シラミの駆除を目的とする製品の場合)。
▶️ 「唯一」と手引きが書いています。 唯一と書かれている記述は、そのまま正誤問題になります。
⚠️ そのうえで、手引きは脚注でフェノトリンには、シラミの刺咬による痒みや腫れ等の症状を和らげる作用はないとしています。駆除はできるが、痒みは取れない。
ピレスロイド系の残りの特徴も1行で持てます。
除虫菊の成分から開発された成分で、比較的速やかに自然分解して残効性が低いため、家庭用殺虫剤に広く用いられている。
▶️ 残効性が低いから家庭用、という因果です。逆に、残しておきたい場面には向きません。
昆虫成長阻害成分は「効かない相手」が指定されている
昆虫成長阻害成分は、そもそも殺虫作用ではありません。
直接の殺虫作用ではなく、昆虫の脱皮や変態を阻害する作用を有する成分で、有機リン系殺虫成分やピレスロイド系殺虫成分に対して抵抗性を示す場合にも効果がある。
そして中で2つに割れます。
| 成分 | 作用 | 効かない相手 |
|---|---|---|
| メトプレン、ピリプロキシフェン | 幼虫が蛹になるのを抑えているホルモン(幼若ホルモン)に類似した作用を持ち、幼虫が蛹になるのを妨げる | 蛹にならずに成虫になる不完全変態の昆虫やダニには無効 |
| ジフルベンズロン | 脱皮時の新しい外殻の形成を阻害して、幼虫の正常な脱皮をできなくする | (記載なし) |
🔴 「不完全変態の昆虫やダニには無効」がメトプレン・ピリプロキシフェン側にだけ付いているのが決め手です。蛹の段階を作らない虫には、蛹になるのを妨げても意味がないからです。理由が分かれば暗記は要りません。
補助成分と忌避成分は、それぞれ2つずつ
殺虫補助成分
それ自体の殺虫作用は弱いか、又はほとんどないが、殺虫成分とともに配合されることにより殺虫効果を高める成分として、ピペニルブトキシド(PBO)やチオシアノ酢酸イソボルニル(IBTA)などがある。
忌避成分
ディートは、医薬品又は医薬部外品の忌避剤の有効成分として用いられ、最も効果的で、効果の持続性も高いとされている。また、イカリジンは、年齢による使用制限がない忌避成分で、蚊やマダニなどに対して効果を発揮する。
▶️ 2つの非対称がここに詰まっています。
| ディート | イカリジン | |
|---|---|---|
| 効果 | 最も効果的で持続性も高い | 蚊やマダニなどに効果 |
| 年齢制限 | (手引きに「年齢による使用制限がない」とは書かれていない) | 年齢による使用制限がない |
🔴 「年齢による使用制限がない」はイカリジン側の特徴です。ディートに付けると誤りになります。
⚠️ 忌避剤は殺虫剤ではありません。手引きはツツガムシについて「目視での確認が困難であるため、生息する可能性がある場所に立ち入る際には、専ら忌避剤による対応が図られる」と書いています。殺せない相手には忌避で対応する、という使い分けです。
抵抗性への対処は、成分を回すこと
冒頭に置かれている一文が、上の分類全体の理由になっています。
殺虫剤使用に当たっては、殺虫作用に対する抵抗性が生じるのを避けるため、同じ殺虫成分を長期間連用せず、いくつかの殺虫成分を順番に使用していくことが望ましい。
▶️ 系統が5つある理由がここにあります。 カーバメイト系が「ピレスロイド系に抵抗性を示す害虫に用いられる」のも、昆虫成長阻害成分が「有機リン系やピレスロイド系に抵抗性を示す場合にも効果がある」のも、同じ話です。
衛生害虫ごとの防除で、数字が2つ出る
害虫別の記述は分量がありますが、数字が出るのは限られます。
ゴキブリ — 3週間後にもう一度
燻蒸処理を行う場合、ゴキブリの卵は医薬品の成分が浸透しない殻で覆われているため、殺虫効果を示さない。そのため3週間位後に、もう一度燻蒸処理を行い、孵化した幼虫を駆除する必要がある。
▶️ 理由(卵の殻に浸透しない)と対処(3週間後にもう一度)がセットで出ます。
トコジラミ — 約8mm、掃除機で吸える
トコジラミは、シラミの一種でなくカメムシ目に属する昆虫で、ナンキンムシとも呼ばれる。……体長が比較的大きい(成虫で約8mm)ので、電気掃除機で隅々まで丁寧に吸引することによる駆除も可能である。
🔴 「シラミの一種ではない」が定番のひっかけです。名前にシラミと入っているのに違う、という形で問われます。
覚え方が要るのは「宿主を選ぶかどうか」
シラミとノミの対比が、この節でいちばんきれいに割れます。
| シラミ | ノミ | |
|---|---|---|
| 宿主 | 種類ごとに寄生対象となる動物が決まっている。ヒト以外の動物に寄生するシラミがヒトに寄生して直接的な害を及ぼすことはない | 宿主を厳密に選択しないため、ペット等に寄生しているノミによる被害が発生する |
| 生活場所 | 終生を宿主に寄生して生息 | ペットの寝床やよくいる場所、部屋の隅の埃の中などで幼虫が育つ |
| 対処 | 散髪・洗髪・入浴による除去、衣服の熱湯処理、フェノトリン配合のシャンプーやてんか粉 | ノミ取りシャンプーや忌避剤、電気掃除機による吸引や殺虫剤の散布 |
▶️ 「宿主を選ぶ/選ばない」の1点から、対処法の違いが全部出てきます。 シラミは宿主にいるので宿主を処理する、ノミは環境にいるので環境を処理する。
⚠️ シラミが媒介するのはリケッチア(日本紅斑熱や発疹チフス等の病原細菌)で、手引きはリケッチアは人獣共通して感染すると注記しています。
屋内塵性ダニは「殺虫剤が最後の手段」
ダニの節は、他と方針が逆です。
殺虫剤の使用についてはダニが大量発生した場合のみとし、まずは畳、カーペット等を直射日光下に干すなど、生活環境の掃除を十分行うことが基本とされている。
殺虫剤を散布する場合には、湿度がダニの増殖の要因になるため、水で希釈する薬剤の使用は避け、エアゾール、粉剤が用いられることが望ましい。
▶️ 水で希釈する薬剤を避ける理由が「湿度」である点が出題ポイントです。
⚠️ ツメダニ類はヒトを刺すが、ヒョウヒダニ類やケナガコナダニはヒトを刺さない(糞や死骸がアレルゲンとなって気管支喘息やアトピー性皮膚炎を引き起こす)。刺す・刺さないで割れます。
剤形は「どこに使うか」で決まる
剤形も名前が多いのですが、用途で一意に決まります。
| 剤形 | 特徴・用途 |
|---|---|
| スプレー剤 | 直接噴射/残留噴射(潜んでいる場所や通り道に吹き付ける)/空間噴射 |
| 燻蒸剤 | 一度に全量放出。霧状は煙状より粒子が微小で短時間で行き渡る。処理中は締め切って退出、処理後は換気と掃除機 |
| 毒餌剤(誘因殺虫剤) | 誘引成分を配合。主にゴキブリ。乳幼児等の誤食に留意 |
| 蒸散剤 | 加熱時又は常温で徐々に揮散。医薬部外品を除き、一般家庭で使用されることは少ない |
| 粉剤・粒剤 | 粉剤=ダニ・シラミ・ノミの防除で散布/粒剤=ボウフラの生息する水系に投入 |
| 乳剤・水和剤 | 原液を水で希釈。地域ぐるみの害虫駆除 |
| 油剤 | 湿気を避ける必要がある場所でも使用できるが、噴射器具が必要 |
▶️ 粉剤と粒剤の使い分けが最も問われます。粉=ダニ・シラミ・ノミ、粒=ボウフラ(水系)。
解いて、可逆と不可逆を逆に覚えていないか確かめる
この範囲は用語が長いぶん、選択肢を最後まで読まずに系統名だけで判断する癖が付きやすい場所です。「カーバメイト系殺虫成分はアセチルコリンエステラーゼと不可逆的に結合する」——系統名は合っているので、機序の1語まで見ないと落とせません。
ぴよパスでは登録販売者のオリジナル予想問題を章ごとに無料公開しています。
⚠️ ぴよパスの問題は本試験の再現ではなく、厚生労働省の手引きにもとづいて独自に作成した予想問題です。
まとめ
- 軸は3つの機序。アセチルコリンエステラーゼ阻害/神経細胞に直接作用/成長阻害
- 有機リン系=不可逆的に結合、カーバメイト系・オキサジアゾール系=可逆的
- 有機リン系の曝露症状は縮瞳、呼吸困難、筋肉麻痺
- フェノトリンは殺虫成分で唯一人体に直接適用される(シラミ駆除)。ただし痒みを和らげる作用はない
- メトプレン・ピリプロキシフェンは不完全変態の昆虫やダニには無効
- イカリジンは年齢による使用制限がない。ディートは最も効果的で持続性も高い
- ゴキブリの卵には燻蒸が効かないので3週間位後にもう一度
- トコジラミはシラミの一種ではない(カメムシ目・ナンキンムシ・成虫で約8mm)
- シラミは宿主を選ぶ/ノミは選ばない。だから対処が宿主側と環境側に分かれる
- ダニは掃除が基本。散布するなら湿度を上げないエアゾール・粉剤
- 粉剤=ダニ・シラミ・ノミ、粒剤=ボウフラ
出典
- 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月一部改訂)」第3章 主な医薬品とその作用 ⅩⅤ 公衆衛生用薬 2 殺虫剤・忌避剤「1)衛生害虫の種類と防除」((b)蚊、(c)ゴキブリ、(d)シラミ、(e)トコジラミ、(f)ノミ、(g)イエダニ・ツツガムシ、(h)屋内塵性ダニ)および「2)代表的な配合成分・用法、誤用・事故等への対処」(抵抗性への対処、(a)有機リン系殺虫成分、(b)ピレスロイド系殺虫成分、(c)カーバメイト系殺虫成分・オキサジアゾール系殺虫成分、(d)有機塩素系殺虫成分、(e)昆虫成長阻害成分、(f)その他の成分=①殺虫補助成分②忌避成分)、⚫主な剤形、用法(スプレー剤・燻蒸剤・毒餌剤・蒸散剤・粉剤・粒剤・乳剤・水和剤・油剤)
編集部の見方:この範囲は成分名の量に対して、問われる論点が驚くほど少ない場所です。実際に手引きを読むと、系統ごとの説明はどれも「何を阻害するか」の1文が中心で、あとは毒性の高低と用途が付くだけです。にもかかわらず難所とされるのは、有機リン系とカーバメイト系が同じ酵素を阻害するため、機序を覚えても区別が付かないからでしょう。書き分けは「不可逆/可逆」の1語だけです。ここを持っていれば、系統名が合っている紛らわしい肢もその場で切れます。フェノトリンの「唯一」やイカリジンの「年齢制限がない」のように、手引きが限定詞を使っている箇所は、そのまま出題の種になります。











