個人情報保護士認定試験でいちばん誤解されやすいのは、合格点が「100 点満点の 70 点」ではないことです。
公式ページの記載はこうです。
合格基準:課題Ⅰ・課題Ⅱ各課題正答率70%以上
課題Ⅰ「個人情報保護法とマイナンバー法の理解」が 50 問、課題Ⅱ「個人情報保護の対策と情報セキュリティ」が 50 問。この 50 問ずつのそれぞれで 70% を超える必要があります。
84 点で落ちる例
具体的な数字で見ると、この基準の性格がはっきりします。
| 課題Ⅰ (50問) | 課題Ⅱ (50問) | 総合点 | 判定 | |
|---|---|---|---|---|
| 例 1 | 50 (100%) | 34 (68%) | 84 点 | ✗ 不合格 |
| 例 2 | 35 (70%) | 35 (70%) | 70 点 | ○ 合格 |
| 例 3 | 44 (88%) | 33 (66%) | 77 点 | ✗ 不合格 |
| 例 4 | 36 (72%) | 36 (72%) | 72 点 | ○ 合格 |
例 1 は課題Ⅰ を全問正解しています。それでも課題Ⅱ が 1 問足りずに落ちます。一方の例 2 は 70 点ちょうどですが合格です。
総合点で並べ替えると 84 → 77 → 72 → 70 の順ですが、合否はこの順番とまったく関係していません。総合点はこの試験では意味のある指標ではありません。
「15 問」は 2 つある
落とせる問題数で考えると、さらに分かりやすくなります。
- 課題Ⅰ で落とせるのは 15 問
- 課題Ⅱ で落とせるのは 15 問
合計 30 問まで落とせる、と読みたくなりますがこれが誤りのもとです。この 15 問は課題をまたいで持ち越せません。課題Ⅰ で 3 問しか落とさなかったからといって、課題Ⅱ で 27 問落とせるわけではない。課題Ⅱ の枠はあくまで 15 問のままです。
独立した 2 つの財布だと考えてください。片方が余っても、もう片方の赤字は埋められません。
「難易度により調整」の但し書き
公式には、合格基準に次の但し書きが併記されています。
※ただし、問題の難易度により調整し、正答率70%以下でも合格とする場合があります。
⚠️ 「以下」なので、70%ちょうども含みます。「下回っても」と読むと、ちょうど70%の扱いが変わってしまいます。
読み方として大事なのは 2 点です。
① 70% は絶対の固定ラインではない。回によっては下がることがあります。ボーダー付近だった人が救われる仕組みです。
② 「上がらない」とは書かれていない。下がる可能性が明示されている一方で、上がらない保証はどこにもありません。
だから対策上の目標は 70% ではなく、両課題とも 80% 前後に置くのが妥当です。1 割の余裕は、初見の問題と、その回の難易度の振れ幅を吸収するための幅です。70% ちょうどを狙う学習計画は、当日 2 問ぶん運が悪いだけで崩れます。
学習時間は「苦手な課題」だけに効く
この基準がもたらす、いちばん実践的な帰結がこれです。
課題Ⅰ は法令(個人情報保護法とマイナンバー法)、課題Ⅱ は情報セキュリティの実務知識で、受験者のバックグラウンドによってどちらが得意かがはっきり分かれます。
- 法務・総務の担当者 → 課題Ⅰ が先に仕上がる
- 情報システム・SE → 課題Ⅱ が先に仕上がる
そして得意なほうは、放っておいても勉強していて気持ちがいいので時間を吸い込みます。しかしそこに使った時間は合否を 1 ミリも動かしません。課題Ⅰ を 88% から 94% にしても、課題Ⅱ が 66% なら結果は同じです。
学習計画は、最初に両課題の現在地を測ってから組みます。順番が逆だと、得意なほうを磨いて時間を使い切ることになります。
合格率 41.5% の意味
公式ページには「過去の平均合格率:41.5%」「過去の受験者平均年齢:34.1 歳」と記載されています。2023 年 9 月時点で約 6 万人の合格者を輩出したとされています。
4 割という数字だけ見ると穏当ですが、受験者の多くが実務で個人情報を扱っている社会人であることを踏まえると、半数以上が届いていない試験でもあります。合格率がこの水準で安定する要因のひとつが、ここまで見てきた「片方だけでは受からない」基準の設計だと考えられます。
逆に言えば、課題別に測って苦手なほうを埋めるという当たり前の手順を踏むだけで、落ちている 6 割の主要な理由をひとつ外せます。
測るための道具
課題別の正答率を出すには、課題ごとにまとまった問題数が要ります。公式が無料公開している参考問題は課題Ⅰ 15 問・課題Ⅱ 9 問の計 24 問なので、これでは課題別の実力を測るには足りません。
個人情報保護士の練習問題は 476 問を 7 カテゴリに分けて公開しています。課題Ⅰ に 5 カテゴリ 325 問、課題Ⅱ に 2 カテゴリ 151 問という配分です。本番と同じ 100 問 150 分の通し模試も用意していて、採点は総合点ではなく課題Ⅰ・課題Ⅱ それぞれ 70% で判定します。上の例 1 のような結果になる人には、その場で「課題Ⅱ が足りない」と出ます。
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