QC検定2級の実践分野で、3級から明確に増えるものの一つが課題達成型QCストーリーです。手順を暗記する人が多いのですが、なぜ問題解決型と手順が違うのかを理解すると、覚える必要がほぼなくなります。
答えは一つです。課題には原因が無いからです。
問題と課題は何が違うのか
| 問題 | 課題 | |
|---|---|---|
| 定義 | あるべき姿と現状のギャップ | ありたい姿を新たに設定して生まれるギャップ |
| 元に戻すべき状態 | ある(前は正常だった) | 無い(一度も実現していない) |
| 中心になる作業 | 原因追究 | 方策の立案と選択 |
| 典型例 | 不適合品率が急に悪化した | 新製品の立ち上げ、新市場向けの水準を実現する |
「不適合品率が2%から5%に上がった」なら、2%だった状態が実在します。何かが変わってそうなったので、その何かを突き止めれば戻せます。これが問題です。
「不適合品率を0.5%にしたい」で、これまで一度も0.5%を実現したことがないなら、戻すべき状態がありません。悪くした犯人はいないので、いくら原因を探しても見つかりません。これが課題です。
手順の違いは、この一点から出る
問題解決型QCストーリー
テーマ選定 → 現状把握 → 要因解析 → 対策立案・実施 → 効果確認 → 標準化と管理の定着
課題達成型QCストーリー
テーマ選定 → 攻め所と目標の設定 → 方策の立案 → 成功シナリオの追究 → 実施 → 効果確認 → 標準化
違うのは真ん中の3ステップだけで、前後(テーマ選定・効果確認・標準化)は共通です。
問題解決型の「現状把握 → 要因解析」が、課題達成型では「攻め所と目標の設定 → 方策の立案 → 成功シナリオの追究」に置き換わっています。
要因解析が「原因を絞り込んで焦点を作る」役割を果たしているのに対し、課題達成型では「攻め所」がその役割を担います。 どちらも、闇雲に手を打たないための焦点づくりです。
成功シナリオの追究とは
方策を並べただけでは実行できません。誰が、何を、どの順で、どこまでやるのかを具体化したものが成功シナリオです。
方策の候補が複数出たとき、効果・実現性・費用・副作用で比較して選びます。系統図法で方策を展開し、マトリックス図法で評価する、という手法の使い方はここで効きます。
使い分けを間違えるとどうなるか
出題の中心はここです。テーマ選定の直後に、どちらの型かを決めます。
- 課題なのに問題解決型を選ぶ → 存在しない原因を探し続けて止まる
- 問題なのに課題達成型を選ぶ → 原因を見ないまま方策を並べ、効かない対策に工数を使う
後者は「改善のスピードを上げるために現状把握を省く」形でも起こります。問題の所在が分からないまま打つ対策は、当たれば早いが外れれば全部が無駄になるので、層別による現状把握は結果的に最短経路になることが多い、というのが2級で問われる姿勢です。
共通する前後:ここも2級で問われる
テーマ選定
観点は3つです。
- 上位方針との関連(方針とつながらないテーマは資源を得にくい)
- 効果の大きさ
- 自分たちで取り組める範囲であること(手の届かないテーマは実施段階で止まる)
「過去に取り組んだことがない」「短期間で終わる」は選定基準ではありません。
効果確認
対策前と対策後を同じ尺度で比べるのが原則です。比較条件をそろえないと、対策の効果か別要因の影響か区別できません。
金額で表せる有形の効果に加えて、無形の効果(メンバーの問題解決能力の向上、職場の連携の改善)を記録することにも意味があります。金額換算できる効果だけで評価すると、成果の出にくいテーマが避けられ、人材が育つ機会も失われます。
標準化と管理の定着
QCストーリーの最後にこれを置く理由は歯止めです。
原因を除いても標準が変わらなければ、担当者が替わったり時間がたつと元に戻ります。 作業標準の改訂・教育・管理項目への組み込みまで行って、初めてSDCAで維持する段階に引き渡せます。
改善で到達した水準を標準に落とし込む、というのがPDCAとSDCAが交互に回るという構造そのものです。
- 改善のときはPDCA
- 維持のときはSDCA(S = Standardize)
管理項目と点検項目:定着の実装
標準化を「文書を作ること」で終わらせないための仕組みが管理項目です。
| 何を見るか | |
|---|---|
| 管理項目(管理点) | 結果系の指標 |
| 点検項目(点検点) | 結果を左右する要因系の指標 |
結果だけを見ていては手遅れになります。 結果を決める条件を点検項目として日常的に見て、守られていれば結果が安定する、という構造を作ります。
管理項目を設定するときは、管理水準・測定方法・確認の頻度・責任者・異常時にとる処置まで決めます。異常が出たときに誰が何をするかを決めていなければ、記録するだけの活動になります。
水平展開:課題達成型でも効く
ある職場で有効だった対策を、同様の条件をもつ他の職場や製品にも適用するのが水平展開です。同じ原因を抱える箇所に先回りするので、未然防止としての意味をもちます。
ただし展開先の条件が同じかを確かめずに広げると、効かない対策が増えるだけになります。
実践分野は「深さ」で差がつく
課題達成型QCストーリーに限らず、2級の実践分野は3級と項目名が大きく変わりません。変わるのは求められる深さです。
公式のレベル表は項目ごとに【言葉として】(用語を知っていれば足りる)、【定義と基本的な考え方】(定義と基礎理解まで)、注記なし(理解・適用まで)を書き分けています。3級で【言葉として】だった項目が、2級では説明を求められる水準に上がっているものが少なくありません。
だから実践分野の対策は、「知らない用語を覚える」より「知っている用語を説明できるか」を確かめるほうが効きます。なんとなく分かる状態では、選択肢を2つまで絞ってから外します。
QC検定2級の練習問題では実践分野を6分野に分けています。管理の方法と課題達成型QCストーリーの分野に25問あり、手順の順序を問う設問と、なぜその順序なのかを問う設問の両方を含めています。
なお実践分野にも概ね50%以上の足切りがあります。手法分野で稼いでも救済にならないのは、逆向きの構造と同じです。











