QC検定2級の抜取検査は、覚えることが多そうに見えて、実際にはOC曲線という1枚の図の読み方に集約されます。用語も方式の種類も、この図のどこの話なのかが分かれば整理できます。
抜取検査は2級から新しく加わる6分野の一つで、3級には出てきません。
OC曲線の軸を先に固定する
OC曲線(検査特性曲線)は次の2軸です。
- 横軸:ロットの不適合品率
- 縦軸:そのロットが合格する確率
不適合品率が0に近ければ合格確率はほぼ1、不適合品率が高くなるほど合格確率は下がっていきます。理想は階段状、つまり「良いロットは確実に合格し、悪いロットは確実に不合格になる」形ですが、サンプルで判断する以上そうはなりません。なだらかになる部分が、2つの危険の正体です。
2つの危険は、曲線上の縦の長さ
| 用語 | 記号 | 意味 | 誰の損失か |
|---|---|---|---|
| 生産者危険 | α | 合格させたい品質のよいロットが不合格になる確率 | 供給側 |
| 消費者危険 | β | 不合格にしたい品質の悪いロットが合格する確率 | 受入側 |
良いロット側では、合格確率が1に届かない分がαです。悪いロット側では、合格確率が0に落ちきらない分がβです。
抜取検査方式の設計とは、この2つをどの水準に抑えるかを決めることにほかなりません。計数規準型抜取検査は、供給側と受入側の双方が「守りたい品質水準」と「許容する危険率」を約束したうえで、それを満たすnとcを定める型です。1回限りの取引でも公平に適用できる、というのがこの型の性質です。
n・c・Nが曲線をどう動かすか
出題の中心はここです。
| 変えるもの | 曲線の変化 | 意味 |
|---|---|---|
| サンプル数 n を増やす | 急になる | 良いロットと悪いロットを見分ける力が上がる |
| 合格判定個数 c を減らす | 全体が下がる(厳しくなる) | c=0は最も厳しく、生産者危険が大きくなりやすい |
| ロットの大きさ N を増やす | ほとんど変わらない | 合格確率はn と c でほぼ決まる |
3番目が、直感に反するので狙われます。「ロットが大きいほど多く抜くべきだ」という感覚は、この点では成り立ちません。 ロットの大きさに比べてサンプル数が十分小さい範囲では、合格確率はサンプル中に何個の不適合品が現れるかで決まり、それはnとpでほぼ決まるからです。
c=0の方式も出題されます。少しでも不適合品が見つかれば不合格になるので厳しい方式ですが、そのぶん品質のよいロットでも1個の不適合品で落ちるため、生産者危険が大きくなります。厳格さと引き換えに供給側が受ける不合格の危険が上がる、という関係です。
計数規準型と計量規準型
| 計数規準型 | 計量規準型 | |
|---|---|---|
| 使うデータ | 適合・不適合の判定 | 寸法などの測定値 |
| サンプル数 | 多く必要 | 同じ判別力なら少なくて済む |
| 前提 | 特になし | 母集団が正規分布に従うこと |
| 手間 | 判定のみで軽い | 測定が必要で重い |
計量値は情報量が多いので、同じ判別力をより少ないサンプル数で得られます。ただし正規分布の前提が要る点が重要で、この前提が崩れると判定そのものが信用できなくなります。「サンプル数が少なくて済むから常に有利」という選択肢は誤りです。
計量値のほうが情報量が多いという話は、抜取検査に限りません。適合・不適合の判定は、連続量を2つに丸めた情報なので、工程管理でも計量値のまま扱えるなら扱ったほうが、少ないサンプル数で変化をつかめます。
方式の型:選別型・調整型・2回抜取
- 選別型:不合格ロットを全数選別して不適合品を取り除く。合格ロットと選別済みロットを合わせた長期的な平均出検品質を一定水準以下に抑える考え方。同じ供給者から継続的に受け入れる場面で機能します。
- 調整型:供給者の品質実績に応じて、検査のきびしさを段階的に切り替える。継続的な取引が前提で、供給者に品質を良くする動機を与える点が特徴です。
- 2回抜取:1回目で判定できない中間的な結果のときだけ2回目を行う。平均的な検査個数は減りますが、手順は複雑になり、最悪の場合の検査個数は1回方式より多くなりえます。「必ず少なくて済む」は誤りです。
前提が壊れると全部が壊れる
抜取検査の理屈はランダムサンプリングを前提にしています。
- 箱の上部にある取り出しやすい製品からまとめて抜く → 不可
- 製造条件の異なるものを1つのロットに混ぜる → 不可
ロットの形成の段階で、製造条件が同じものでロットを作り、条件が変わったら別ロットとするのが原則です。条件の違うものが混ざると、サンプルがロットを代表しなくなり、合格確率の計算そのものが意味を失います。
ここは「計算問題は解けるのに、実務的な設問を落とす」典型の論点です。
検査と工程管理の関係
2級では、抜取検査を単独で問うのではなく品質保証の考え方と接続した形でも出題されます。
- 抜取検査はロットの合否を決めるだけなので、品質向上には工程管理が欠かせない
- 検査は品質を作り出さず、選別するだけ
- 全数検査でも見逃しや誤判定があるので、流出を完全には防げない
- 破壊検査では全数検査が成り立たないので、工程で作り込むしかない
無試験検査(検査の省略)が認められるのも、供給者の工程が管理状態にあり、品質データによって裏づけられている場合に限られます。「過去に不適合品が出ていないから」だけを理由に省くと、変化点で一気に流出します。
一方で、検査データを捨てないことも論点になります。合否の判定に使って終わりにせず、時系列で見れば工程平均の変化や特定の不適合の増加が読み取れます。 検査から改善への橋渡しは、このフィードバックで作られます。
OC曲線に戻る
最後に、覚えるべきことを1枚にまとめ直します。
- 横軸はロットの不適合品率、縦軸は合格する確率
- 良いロット側の縦の余りが生産者危険α、悪いロット側の縦の残りが消費者危険β
- nを増やすと急になる(判別力が上がる)
- cを減らすと厳しくなる(αが上がる)
- Nを変えてもほとんど動かない
この5つで、抜取検査の設問のかなりの部分に答えが出ます。
演習はQC検定2級の練習問題の抜取検査の分野に25問用意しています。計算問題(n=50、c=1でp=0.02なら期待値は1個、など)と、ランダムサンプリングやロット形成といった前提を問う設問の両方を含めているので、どちらで落としているかを分けて確認できます。
抜取検査は手法分野に入ります。分野別に概ね50%以上という足切りがあるので、検定と推定や実験計画法と合わせて、手法分野を丸ごと空けないことが先決になります。











