QC検定2級の信頼性工学は、範囲の広さのわりに計算は3つしかありません。直列系、並列系、アベイラビリティです。ここを確実にしてから用語に進むと、短時間で得点源になります。
信頼性工学は2級から新しく加わる6分野の一つで、3級には出てきません。しかも検定と推定や実験計画法と違って積み上げの前提がない独立した分野なので、途中に挟んで学べます。
計算1:直列系は「積」
すべての要素が働かないと系が働かない構成です。1つでも壊れれば止まるので、信頼度は各要素の信頼度の積になります。
信頼度0.9の要素を3つ直列 → 0.9 × 0.9 × 0.9 = 0.729
要素それぞれは9割動くのに、系全体では約73%まで落ちます。 ここが直列系の怖いところで、要素数が増えるほど急速に下がります。
部品点数を減らすことが信頼性向上になる、という実務的な結論はここから出ます。
計算2:並列系は「余事象」
どれか1つでも働けば系が働く構成です。系が働かないのは全要素が同時に故障したときだけなので、不信頼度の積を1から引きます。
信頼度0.8の要素を2つ並列 → 1 − (1−0.8) × (1−0.8) = 1 − 0.04 = 0.96
信頼度0.8の要素を2つ並べるだけで0.96まで上がります。直列と並列で計算の形が非対称なのは、「全部動く必要がある」か「全部壊れる必要がある」かの違いです。
ここを「並列だから足す」と覚えていると、信頼度が1を超えて破綻します。足すのではなく、余事象をとって掛けると押さえてください。
冗長系はこの応用
同じ機能をもつ要素を余分に備え、一部が故障しても機能を維持する設計を冗長系(リダンダンシー)といいます。常時働かせる並列冗長と、故障時に切り替える待機冗長があります。
出題では「冗長化すれば信頼性は上がるが代償がある」という点が問われます。コスト・重量・スペースに加えて、切替機構そのものが故障しうるという代償です。冗長化が万能という選択肢は誤りになります。
計算3:アベイラビリティ
アベイラビリティ(可用率)= MTBF ÷ (MTBF + MTTR)
MTBF 400時間、MTTR 100時間 → 400 ÷ 500 = 0.8
この式の重要な含意は、分母にMTTRがいることです。つまり可用率は、
- MTBFを長くする(壊れにくくする)
- MTTRを短くする(直しやすくする)
のどちらからでも改善できます。上の例で修理時間を50時間に短縮できれば、400 ÷ 450 ≒ 0.89 になります。設備を壊れにくくするのは難しくても、点検しやすい構造や診断機能で修理時間を縮めるのは現実的、という判断につながります。
保全性は設計段階で大きく決まるという論点も、ここと地続きです。分解できない一体構造にすると、MTTRは長くなります。
MTBFとMTTFの区別
| 用語 | 対象 | 意味 |
|---|---|---|
| MTBF | 修理して繰り返し使うアイテム | 故障と故障の間の平均動作時間 |
| MTTF | 修理せずに使い切るアイテム | 平均寿命 |
| MTTR | — | 故障から修復完了までの平均時間 |
偶発故障期のように故障率が一定であれば、故障までの時間は指数分布に従い、MTBF = 1 / λ になります。故障率が1000時間あたり2件ならMTBFは500時間です。
バスタブ曲線:3つの期で対策が違う
縦軸に故障率、横軸に時間をとると浴槽の形になります。
| 期 | 故障率 | 原因 | 有効な対策 |
|---|---|---|---|
| 初期故障期 | 高いが減っていく | 設計・製造上の弱点 | デバッグ、エージング(初期のならし運転) |
| 偶発故障期 | 低く一定 | 偶発的な要因 | 設計改善、冗長化(予防交換は効きにくい) |
| 摩耗故障期 | 増えていく | 劣化・摩耗 | 寿命に応じた予防保全(定期交換・オーバーホール) |
出題の中心は「期と対策の組合せ」です。
摩耗故障期に有効な予防交換は、偶発故障期にはほとんど効きません。 故障率が一定ということは、新しい部品に替えても壊れやすさが変わらないという意味だからです。逆に、初期故障期の製品に定期交換をしても、交換したそばから初期故障が出ます。
ワイブル分布が信頼性データの解析で広く使われる理由もここにあります。形状母数が1より小さければ減少する故障率、1なら一定、1より大きければ増加する故障率を表せるので、故障データからどの期にいるかを読み取れるからです。
予防保全と事後保全の使い分け
すべてを予防保全にすると費用が過大になります。判断軸は2つです。
- 故障の影響が大きいか
- 劣化の進行が予測できるか
両方に当てはまる部位は予防保全、影響が小さい部位は事後保全とします。状態を監視して兆候が出たときに手を打つ予知保全という考え方もあります。
フェールセーフとフールプルーフ
混同しやすい2つですが、備える相手が違います。
| 備える相手 | 例 | |
|---|---|---|
| フェールセーフ | 故障 | 信号機が故障時に赤を示す |
| フールプルーフ | 人の誤操作 | 逆向きには差し込めないコネクタ |
どちらも共通しているのは、人の注意力に頼らないことです。安全設計の優先順位は、
- 本質安全設計(危険源そのものを取り除く)
- 防護(隔離・保護装置)
- 警告・教育(表示、注意喚起)
の順で、下に行くほど弱くなります。注意に頼る対策は、疲労や慣れによって破られるからです。この考え方はプロセス保証や製品安全の論点とも重なります。
再発防止と未然防止:信頼性工学の入口
2級のレベル表では、信頼性工学の項目に「品質保証の観点からの再発防止、未然防止」が入っています。
- 再発防止:起きた問題の原因を除く(経験から学ぶ)
- 未然防止:まだ起きていない問題を予測して手を打つ(他製品・他社の経験も使う)
未然防止の代表的な手段がFMEAとFTAです。この2つは向きが逆になります。
| 向き | やること | |
|---|---|---|
| FMEA | ボトムアップ | 部品や工程ごとに故障モードを洗い出し、影響を評価する |
| FTA | トップダウン | 望ましくない事象を頂上に置き、原因を論理記号(AND/OR)で下位に展開する |
補い合う関係なので、どちらかがあれば十分ということはありません。そしてどちらも、設計段階で行うから意味がある(下流に行くほど設計変更の費用は跳ね上がる)というのが実務的な要点です。
この分野の学習コスト
信頼性工学は、2級の新規6分野の中では最も短時間で仕上がります。
- 計算は3つ(直列の積、並列の余事象、アベイラビリティ)
- 用語は対で覚えられる(MTBF/MTTF、フェールセーフ/フールプルーフ、FMEA/FTA、予防保全/事後保全)
- 統計の積み上げが要らない
手法分野の足切り50%が不安なとき、最初に確保しにいく分野としてはここが効率的です。
演習はQC検定2級の練習問題の信頼性工学の分野に25問用意しています。計算問題と、期と対策の組合せを問う設問の両方を含めているので、どちらで落としているかを分けて確認できます。











