QC検定2級で確率分布を取り違える人は、たいてい公式から入っています。np、np(1−p)、λ…と覚えたものの、問題文を読んだときにどれを使うか決まりません。
決め方は逆で、データの種類を見れば分布は一意に決まります。公式はそのあとです。
確率分布は2級で拡張される分野の一つで、3級の正規分布・二項分布にポアソン分布・統計量の分布・期待値と分散・大数の法則と中心極限定理が加わります。
質問1:計量値か、計数値か
- 計量値 — 長さ、重さ、温度、時間のように測って得る連続量 → 正規分布
- 計数値 — 数えて得る個数 → 二項分布かポアソン分布
ここで半分に絞れます。
質問2(計数値の場合):何を数えたか
| 数えたもの | 分布 | 平均 | 分散 | |
|---|---|---|---|---|
| 一定個数のうち何個が不適合品か | 不適合品数 | 二項分布 | np | np(1−p) |
| 一定の単位の中でいくつ欠点が出るか | 不適合数 | ポアソン分布 | λ | λ |
見分け方は「1個の製品に複数ありうるか」です。 100個検査して不良が3個なら二項分布。製品1台に傷が3つ見つかったなら、その3はポアソン分布の世界です。
ポアソン分布は平均と分散が等しい
これが最大の特徴です。平均も分散もλ。この性質があるので、単位あたりの不適合数のデータが本当にポアソン分布に従っているかを、平均と分散を比べるだけで大まかに確かめられます。
二項分布をポアソン分布で近似できる条件
nが大きく、pが小さく、np が一定程度にとどまる場合です。不適合品率が低い工程の不適合品数を扱うとき、λ=np のポアソン分布として計算できます。
「nもpも大きい場合」「pがちょうど0.5」は誤りです。まれにしか起こらないことを多数回試行するという状況で成り立つ近似だからです。
質問3:何を推定・検定したいか
計量値の世界では、調べたい対象で分布が決まります。
| 調べる対象 | 使う分布 |
|---|---|
| 母平均(母分散が既知) | 標準正規分布 |
| 母平均(母分散が未知) | t分布 |
| 1つの母分散 | χ²分布 |
| 2つの母分散の比 | F分布 |
この表を先に入れておくと、検定と推定の公式の暗記量が大きく減ります。 統計量の形は「推定値と基準値の差を、ばらつきの推定値で割る」でほぼ共通で、違うのは読む分布表だけだからです。
χ²分布とF分布は左右非対称で0以上の値をとる点も押さえてください。両側検定のときに上側と下側の限界値を別々に読む必要があるのは、この非対称性が理由です。
正規分布:3つの割合と標準化
- 平均±1σ → 約68.3%
- 平均±2σ → 約95.4%
- 平均±3σ → 約99.7%
管理図の3σ限界は3つ目の性質に基づいています。±3σの外側は約0.27%なので、管理状態でもごくまれに限界を外れる点が出る、という理解につながります。
標準化は u=(x−μ)/σ。平均50・標準偏差5でx=60なら (60−50)÷5=2.0 です。平均も標準偏差も違う分布を、同じ標準正規分布表で読めるようにする操作です。
正規分布の再生性
独立な正規分布に従う変数の和も正規分布に従い、分散は各分散の和になります。
ここで頻出の引っかけが差です。X−Y でも分散は足します。ばらつきの原因が2つあるという事実は、引き算をしても変わらないからです。組立部品の寸法差のばらつきを見積もるときに効く性質です。
期待値と分散の性質
Y = aX + b としたとき、
- E(Y) = aE(X) + b — 期待値は線形。定数倍も定数の加算もそのまま効く
- V(Y) = a²V(X) — 分散は定数倍が2乗で効き、定数の加算は効かない
分散が平均からのずれの2乗の期待値だからです。分布全体を平行移動しても、ばらつきの大きさは変わりません。ここは選択肢に「a²V(X)+b²」が並ぶ形で出ます。
標準誤差:4倍にして半分
母標準偏差がσのとき、標本平均の標準偏差(標準誤差)は σ/√n です。
σ=2.0、n=16 → 2.0÷√16 = 2.0÷4 = 0.5
含意が重要です。ばらつきを半分にするにはサンプル数を4倍必要です。推定精度を上げるコストが急に重くなるという関係で、サンプル数の検討がなぜ計画段階で必要かの根拠にもなります。
大数の法則と中心極限定理:別のことを言っている
混同されやすい2つですが、主張の対象が違います。
| 何についての主張か | |
|---|---|
| 大数の法則 | 値 — サンプル数を増やすと標本平均が母平均に近づく |
| 中心極限定理 | 分布の形 — 母集団の分布形によらず、標本平均の分布が正規分布に近づく |
出題では、大数の法則の説明として「標本平均の分布が正規分布に近づく」という選択肢が混ぜられます。それは中心極限定理です。
中心極限定理が効いている範囲も押さえてください。 変わるのは標本平均の分布であって、母集団そのものの分布ではありません。「サンプル数を増やすと母集団の分布が正規分布に近づく」は誤りです。
この定理があるおかげで、母集団の形が分からなくても管理図やさまざまな検定が使えます。2級で学ぶ手法の多くが立っている土台です。
サンプリングの4つの型
2級では「サンプリングの種類と性質」が加わります。
| 型 | やり方 | 性質 |
|---|---|---|
| 層別 | 性質の似たものどうしの層に分け、各層から取る | 層内のばらつきが小さくなり、同じサンプル数でも精度が上がる |
| 集落 | 集落を抽出し、選ばれた集落は全数調べる | 手間は小さいが、集落間のばらつきが大きいと精度が落ちる |
| 系統 | 最初の1個をランダムに決め、あとは一定間隔 | 🔴 抽出間隔と同じ周期のくせが工程にあると、そのくせを拾い続ける |
| 2段 | 一次単位を抽出し、その中から二次単位を抽出 | 一次・二次の両方のばらつきが精度に効く |
系統サンプリングの注意点はよく出ます。手間が少なく実務で使いやすい反面、周期性との相性が悪いという構造を理解しておいてください。
学習の順序
- 計量値/計数値の区別 → 分布の系統が決まる
- 二項分布とポアソン分布の見分け(1個に複数ありうるか)
- 正規分布の3つの割合と標準化、再生性(差でも分散は足す)
- 期待値と分散の線形性(分散は定数倍が2乗)
- 標準誤差 σ/√n と、4倍で半分の関係
- 大数の法則と中心極限定理の区別
- t・χ²・F の使い分け → 検定と推定へ接続
QC検定2級の練習問題の統計的方法の基礎に25問あります。この分野は手法分野で、検定と推定・管理図・抜取検査の土台になるので、ここが空いていると後ろが全部積み上がりません。分野別50%の足切りを考えても、最初に固める価値があります。











